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(著者:ひろ健作より~この小説は実際に起きたことをもとに創作した物語です。物語と連動する形で現実も変容していった不思議な体験を描写しています。はじめの所から読んでみてください。きっとあなたの心に何か変化が起き現実が変わりはじめるでしょう。もし心に響く何かがあったらぜひシェアをしてあげてください。多くの方が救われていくでしょう。)

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第4章 居場所
https://note.com/hiroreiko/n/n5c726a393f71

第5章 主役

あれから何度そのパン屋を訪れただろう……。「エレナさんに逢いたい――」その一心だった。だが二度と彼女を見かけることはなかった。

「せめて連絡先くらい聴いておけばよかった……」悔やんでも後の祭りだった。くる日もくる日も彼女のことを思い出す――その度にカフェに立ち寄った。

どうしてあのタイミングに出逢えたのだろう……? なぜ逢えたのか、その理由をあれこれ考えてみたのだが答えは出なかった。うまくは説明できないが、たぶんこういうことだろう。

何もかも諦めたときに、彼女は現れた。
これまで僕は職場を盛り上げることに一所懸命だった。それなりには評価され、役には立っていたわけだ。

だがあの上司がきてから、やることなすことけなされ、すべてが空回りした。

やっかい者扱いされ、「何の役にも立たない」とらく印を押された。このままじゃつぶれる……。もうダメだ」と思った瞬間、彼女と出逢えたのだ。

評価を手放したせいだろうか、職場に対して違和感が出はじめた。自分だけが浮いている、そんな気がしたのだ。

一時は錯覚か、とも思った。廊下ですれ違う女性とたわいのない話をできていたからだ。ただなにかが違う。これまでと景色が違う。別の居場所も観えるのだ。

それはまるで気球に乗せられた気分だ。これまで見慣れた場所が次第に遠のいていくような、そんな感覚だった。

どこからきているのだろう――この感覚は。答えはいくら考えても見つからなかった。エレナさんと出逢って半年が過ぎ、記憶も薄れかけた頃、ふと、あのときの話題にのぼった山沿いのカフェを思い出し、立ち寄ってみた。

扉を開けると聴き覚えのある声がした。そこにはワイン色のベレー帽を斜めにかぶった女性がいた。顔が隠れていたせいか、それが誰なのか、すぐにはわからなかった。

「まぁ、あなたじゃない」
「エレナさんじゃないですか! 逢いたかった」

僕は、その声の主がエレナさんとわかり、久しぶりに逢う恋人に話しかけるように、想いの丈をぶつけた。

「ふふ。ちょっと待って。みんな急ぎ過ぎよ」

「わ、わかっています。で、ですが……。今度、ご自宅に寄らせてくださいっ」
必死だった。このチャンスを逃すわけにはいかない。断られても押しかける勢いで僕は話した。

「わかったわ、そこまで想ってくれているのなら断れないわね。それじゃ一つ約束してくれないかしら。いまはゆっくりとくつろぐこと。いまこの瞬間を味わうこと。いい?」

「え、えぇ。わかりました」

想いは通じた。次の日曜日、エレナ邸にお邪魔することにした。

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第6章 邸宅 海のほとりにて
https://note.com/hiroreiko/n/n7214683038f6

最悪な人生から脱け出すには 実話×小説「エレナ婦人の教え」
https://note.com/hiroreiko/n/nc1658cc508ac

「エレナ婦人の教え」はじめに(目次)
https://note.com/hiroreiko/n/ndd0344d7de60


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