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「発達障害の人には世界がどう見えるのか」を読みました

「なぜ?」

何に困っているか。
それが分かれば、できることが見えてくる。

「なぜ?」が分からないと、人は不安になる。

「発達障害者の方々の知覚の『なぜ』を明らかにすることで世の中に貢献したい」と思った著者。

発達障害について、ひと言で説明することは難しい。それは、ひとりひとり特性や困りごと、体験している世界が異なるから。

そして、発達障害は、脳機能の特性によるもの。
本人の性格や人間性に問題があるわけではない。

本人だけの努力で何とかするものではない。
老眼になったら、眼鏡をかけるように。
困りごとを楽にするために、なにができるか。

それを、知って、本人とまわりの人達にできることを見つける。脳機能を変えることは難しくても、簡単にできるシンプルな解決策があるかもしれない。

解決策を見つける為に、まずは、知ること。
本人もまわりも気づいていない困りごとがあるかもしれない。

本人にとっては、それが日常だから、
それが困りごとだと気づいていない事もある。

著者によると、当事者の主な悩みは、3つ。
・自分自身の状態がよくわからない。
・自分自身の状態に自覚はあるが、どう対処すればいいかわからない。
・周囲の理解を得られない。

保護者の主な悩み2つは、こちら。
・自分の子どもがなぜそのような言動をとるのか理解できない。
・周囲の理解、協力を得るために戦っているが、その戦いに疲れている。

体のケガのように目に見えないからこそ、本人もまわりも気づきにくいし、どう対処すればいいのかわからない。そして、現時点で発達障害への対処法が確立されていないのが現状でもある。だからこそ、少しでも困りごとを楽にしていく解決策を、本人とまわりのひとたちで生み出していくことが、本人だけでなく、誰かの困りごとも楽にする事につながる。

なにか特別なことをしなくても、いい。

本人も、保護者も。こどもも、おとなも。

理解してもらえず、誤解されたり、嫌がられること。それって、本当に辛いこと。

「隣の人と私が感じていることは基本的に違う」

「何か、困っているのかも」

それに気づいてくれる人が増えたら、それだけで、辛い体験をする機会が減るかもしれない。だから、特別なことをしなくてもいいから、知ってくれたら、うれしい。

それが、できること。

発達障害とは。

「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害の他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」

発達障害者支援法(定義 第二条)
「子ども情報ステーションbyぷるすあるは」より

・自閉症
・アスペルガー症候群
・学習障害(LD)
・注意欠陥多動性障害(AD/HD)などなど…

すべて発達障害に含まれ、現在ではまとめて自閉スペクトラム症(ASD)と呼ばれている。

障害ごとの特徴が重なっていたり、個人差があることもあり、境界線がはっきりしない為に、スペクトラムという言葉が使われている。

それは、人には、いろいろな面があるし、苦手も得意もあって、それらが集まることによって、ひとりの人が作られているという事が表現されてもいる。

診断を受けた人も、受けていない人も、ASDの特徴があるかもしれない。

わたしも、ある。あなたにも、あるかも。

そう思うと、自閉スペクトラム症(ASD)は、まったくわからない未知の世界ではなく、自分の延長として想像しやすくなる。

そうは言っても、想像とは異なる世界を体験し、ずっとそれに耐え続けている人達がいることを知ると、本当に驚く。

私が発達障害を持つ方が体験している世界について知って驚いたこと。

それは、

雨が、痛い。


ということ。

もちろん、すべての発達障害の方が、雨が痛いわけではない。個人差があるし、それぞれ別の世界を体験している。それが、スペクトラムと表現される理由でもある。

ニキ・リンコさんと藤家寛子さんの体験談は、当時20代の私にとって、とても驚きの連続だった。自分の想像力の欠如と、不勉強さを実感した本だった。

想像もしなかったこと。それは、知らないと気づけない。

「自閉っ子、こういう風にできてます!」、おすすめです。

今回の本に話を戻すと。

感覚過敏と感覚鈍麻。

この感覚の問題について、書かれている。

本書でも紹介されているNPO法人ぷるすあるはの情報が分かりやすい。

感覚過敏と感覚鈍麻について知ると、まったく同じでなくても、似たような経験はあるかもしれない。

私は、こどもの頃、チクチクして嫌で着たくない服があったし、洋服のタグが嫌で取ったりした(触覚)。きのこのぐにゃっとした食感や、ねばねばする食べ物が気持ち悪くて、食べられなかった。とても偏食だった(味覚)。

おとなの今になっても、偏食はあるけれど…(小声)。

自分の偏食はわがままだと思っていたけれど、感覚の過敏さが影響しているのかもしれないと知った時の、どこかほっとして、救われた感覚は今も覚えている。

自閉スペクトラム症(ASD)の人たちは、これらの症状に人知れず耐え続けている。それは、とても疲れる。日常生活が、常にハードモードだ。その状態で、まわりの人と同じように行動するなんて、本当に大変だ。それなのに、上手くできないと責められたり、叱られたりしたら、すごく嫌だ。上手くできない自分を嫌いになって、自信も奪われていく。そして、さらに上手くできなくなるという悪循環に陥るかもしれない。

それを、想像できるようになるだけで、私とあなたの行動は変わる。

自閉スペクトラム症(ASD)のひとが、困っている事の解決策を提案できるかもしれない。自閉スペクトラム症のひとが、ほっと安心できるような行動(待つ、不快を減らす、見通しを持つことのできる情報を伝える、協力する等)ができるかもしれない。

なにもできなくてもいい。見守るだけでも、大きな変化だ。

知っている人が増えたら、それだけで、変わる。

本人と保護者は、まわりの無理解と戦わなくていい。それだけで、今より楽になる。

まだまだ伝えたいことはあるけれど。

ここまで読んでくれたあなた。読む前よりも自閉スペクトラム症のこと、知ってくれたはず。ありがとうございます!

「発達障害の人には世界がどう見えるのか(著者:井出正和/SB新書/2022年)」

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