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西田俊英展「不死鳥」を観てきました

茨城県天心記念五浦美術館で開催中の「西田俊英展 不死鳥」を観に行こうかなと考えていたら、Mさんから招待券を譲ってもらった。こんなことってあるんだ。ありがとうございます!

さっそく、日本画家の西田俊英さんのことも、作品のことも、なにも知らないまま、観に行く。

1.常設展

天心記念五浦美術館に行くのは初めてではないのに、はじめに常設展の部屋に入ってしまい、拍子抜け。気を取り直しつつ、岡倉天心について学ぶ。岡倉天心が英語で書いた「The Book of Tea(茶の本)」を読んでみたい。もちろん日本語訳版で。

2.西田俊英展 不死鳥

《不死鳥》は、現在(2024年)も制作が続いている。作者が2022年に屋久島へ1年間移住し、描き始めた作品。屋久島の豊かな原生林や、そこに生きる生命体に魅了されたことはもちろん、過去に屋久島の自然が破壊されていたことを知ったことで、「人間と自然の共生」「生命の循環」をテーマに制作されている。

《不死鳥》は、全6章で構成される。今回の展覧会では、「序章」の言葉からはじまり、「第一章 生命の根源」「第二章 太古からの森」「第三章 森の慟哭」まで、約50メートルに及ぶ《不死鳥》作品が展示されている。

昆虫や小動物、猿や鹿などの生き物たちも魅力的だけど、苔や、流れ滴り降り注ぐ水、湿った空気など、森の生命の根源であるすべての存在を描いている「第二章 太古からの森」に、作者の熱量を感じた。

樹齢を重ね、血管がうねり絡み合ったような屋久杉の描写は圧巻だ。

苔の生えた丸い岩の間を流れる水。その風景が担う範囲が多い気がした。もちろん魅力的な風景だけど、ここに、こんなに描く必要あるのかな。これだけ描くんだから、何か意味があるのかな。

そんなことを感じた。

でも、それは、ほんの一部でしかなかったのだ。

3.写生

《不死鳥》を描くにあたって、屋久島で描いた写生も展示されている。そこには、画用紙を継ぎ足しながら描かれた岩岩岩。岩たちの風景。

1週間以上かけて写生された風景。

こんなに描く必要あったのかな?という感想は、これが凝縮されたのだ!という真逆の感想に変わった。

作者の「描かずにはいられない」という想いが、伝わる写生だった。

岩の風景や、屋久杉の写生は、完成品ではないけれど、とても惹き込まれる。

《不死鳥》やその他の作品も素敵だけど、継ぎ足された画用紙に描かれた肉筆の写生こそ、見逃せない展示物だと私は思う。

4.ずっと見る

《不死鳥》には、屋久島の風景はもちろん、その日、その時に、偶然現れた生き物や、苔、水、光などが描写されている。そこに居なければ、描けなかった風景。そこに居続けて、ずっと見て、森の真実を求めようと問い続けたからこそ、見えたもの。小さな生命。大きな生命。そして、目には見えぬ大いなる生命。

作者と同じように対象物を見続けることは難しくても、時間の許す限り、展示会場にあるベンチに腰掛けて、作品を見る。見えなかったものが、見えてくる。描かれていない何かも感じられるかもしれない。

5.ユートピアはどんな世界か

「第三章 森の慟哭」からは、人間による森の破壊がはじまりそうだった。現在、制作中の「第四章 逃げる精霊(彷徨う精霊たち)」「第五章 森の再生・命のバトンタッチ」「最終章 森と人のユートピア」が、どのような作品になるのか。作者が導き出すユートピアは、どんな世界なのか。

人間と自然が共存するには。

私は、私のユートピアを連想してみよう。


「西田俊英展 不死鳥」
期間:2024.4.20(土)〜6.23(日)
会場:茨城県天心記念五浦美術館

おわり

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