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「違うこと」をしないこと

言葉にすると、その言葉だけが残り、
感覚が消えてしまう気がして、少し気が引ける。

私が身につけてきた役割や癖を手放して、
なにものでもない私だけが残ったら、
なにが残るだろう。

その問いを自分にしたときに、
嬉しい気持ちとさびしい気持ち。

なにもなくはない。

私がのこるだけ。

育てやすい子だった。
母親は、そう教えてくれた。

私が育てやすい子という役割を担ってきたからか。

私のすぐそばにいた妹や弟は、
嫌な思いをしたことがあるだろう。
私のまわりにいた友だちや同級生や先輩後輩、先生方も嫌な思いをしたことがあるだろう。

私の過去の悪いところ。
性格の悪さ、口の悪さ、狡さ、身勝手さ。
それらを矯正するつもりで、自力で身につけてきた癖を手放したら、また嫌なヤツに戻るのかな。

それが本来の私なら、それもいいのかな。

本来の私。

絵が好きで、小心者で、ひとりも好きだけど、誰かと遊ぶのも好き。動物も好き。山も海も街も好き。

人見知りをしないのは、
幼稚園の時に選んだ役割かもしれない。

長女の役割を背負ったつもりはないけれど、いい子どもの役割を選び、いい生徒の役割を選び、いい生徒にはなり切れなかったけれど、特に問題もない生徒として学生生活を送り、仕事では心理士や支援員としての役割をつとめ、今、その役割から解放されている。

女という性別役割を手放せば、妊娠、出産の役割を果たせていない自分自身への負い目からも解放される。

どの役割も、誰にも頼まれていない。
私が勝手に選んできただけ。

またここから、選べるよ。

生き延びる為に身につけた癖も
続けてもいいし、やめてもいいよ。

役割や癖が、私自身のようでもあり、
私だと思い込んできたものでもある。

本来の私は、いる。
確実に、私のなかに、いる。

私の声は、いつも、ある。
予感として。体感として。

大丈夫という、根拠のない自信だったり、
なんか違うという、気持ち悪さだったり。

その感覚から、行動する。

「違うことをしない」は、「したいことだけをする」という意味では、ない。

何か起きた時に、私に起こる体感や感覚や内側の声を受け取り、自分にふさわしい行動を選ぶこと。

自分の違和感を流さない。
安易にまわりに合わせない。
自分とズレない。

役割や癖から選択するのは、案外、楽だ。
だから、役割や癖を手に入れる。

本来の自分という役割なら、どうか。

選択は変わる?願いや望みは変わる?

どんな答えが聞こえてきても、いい。
その本来の自分の声を、受け取り、そこから自分にできる方法で、自分の道を進むだけ。

誰かに許可を得る必要はない。
誰かに認めてもらう必要もない。
自分だけは、自分の声を、聴く。

私のなかに浮かぶ声。

私は「それ」を望んでいる。

その声を消さないで。

その声が何か分からないときは。
きっと、それだけ、声を抑えて、消してきた。
消すことで、乗り切ってきた。

その声は、あるよ。

本来の私は、消えないよ。

生まれてから、ずっと一緒にいたし、
これからも、ずっと一緒にいるよ。

ありがとう。

いま、この本を読めて、本当にぴったりだ。

変わる必要はない。戻ればいいだけ。

本来の自分は、ずっとそばにいます。

私がこれまで愛だと思っていたものの中には、愛情や善意が混じっている。感情や気持ちの押し付けはいらない。愛情や気遣いが、ひとをちょっとずつ蝕んでいくこともある。私もまわりに気持ちの悪い呪いをかけてきたんだ。自戒する。

なんだか心地いい。ちょっと気分が軽くなる。

純粋なエネルギーが、愛。

すべてを受け入れるというのが、愛のスタンス。

全てを受け入れることは、
全てを我慢することではない。

受け入れた後、自分の体感や感覚に従い、その後の行動を選ぶ。自分を犠牲にすることではない。

無視せず、まずは受け入れる。
そこから、自分の感覚に従い、選択する。

我慢や犠牲だって、それが私の望みなら、それを選択したっていい。それが本当の望みなら、不快や不満は出てこない。

不快や不満は、ズレを教えてくれる。
本当はそれを望んでいないよ、と教えてくれる。

私の望みとズレていると気づいた時。
できるだけ「違うことをしない」。
望みに、なるべく近いことをしていく。

自分と調和する道を選ぶ。

それが、できること。

私の初期設定も「ハイクオリティな愛をつかえばつかうほど、それがお金になっていく」にしたい。

「自分を生きるっていうのは、これをすれば幸せになれるとか、これをやめないと不幸になるとか、そういうことでもなく、自分を生きたからって、悲しみはなくなるわけではないし、つらさが減るわけでもない。

人生は、誰にとっても、基本的につらいものだから。

それでも自分を生きていけば、生きることはきっと豊かになる。」

ただ生きててくれたら、それでいいから。
ただ笑ってて。楽しく暮らして。

亡くなったひとたちは、
私の笑顔しか求めていないよ。

『「違うこと」をしないこと(吉本ばなな:著/角川文庫/2021年)』

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