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自動車産業の衰退

今日のおすすめの一冊は、山口揚平氏の『自分だけの才能の見つけ方』(SB Creative)です。その中から「今後の日本で注力すべきテーマ」という題でブログを書きました。

本書の中に「自動車産業の衰退」という興味深い文章がありました。

日本の屋台骨である自動車産業も長期的には衰退を免れ得ないでしょう。 もちろん、新型コロナウイルスによる販売減は一時的なものではあります。しかし、より本質的な減益の原因としては、自動車産業のコモディティ化が存在していると考えられます。 

今は途上国の進化が進み、車は必ずしもトヨタやホンダでなくてもよい、という状況になっています。国内自動車メーカーも海外企業に出資するなど頑張ってはいますが、それだけではやがて衰退していくでしょう。 

そこへさらに、様々な変化が追い打ちをかけています。EV(電気自動車)、AI化の波 です。これまでのガソリン系統の自動車作りでは従来の職人技が必須でしたが、電気系統に切り替わることで駆動システムも内装もシャーシも全部変わってしまいます。

今まであった部品工場もエンジンやマフラーを作っていた職人たちも、いらなくなってしまうのです。 そして車がAI化した暁には、自動運転が中心になるため当然、車はバスや電車などの公共交通機関と同じく、シェアリングされます。

今でもどんどん進んでいるシェアリングの波が、さらに加速するのです。そこで恐ろしいのは、実は自動車というのは、所有していたとしてもほとんどが駐車場などに停止している状態である、という事実です。

つまり、車を持っている人はほとんど運転していないにもかかわらず、なぜか所有しているというということは、もし自動運転が当たり前になったら、車を持っている人は当然減っていくことでしょう。

新型コロナウイルスによる影響も、販売店の休業といった要因だけなら一時的な販売減で済みますが、その後もテレワークの普及などで人が移動しなくなったとしたら、長期的に販売数を押し下げます。

そこで何が起こるかというと、自動車のみならず自動車の関連業界全体に影響が出てくるということです。駐車場やメンテナンス業だけでなく、自動車保険を扱う損害保険会社も今のままで体制を維持できなくなるかもしれません。

このように、現在の自動車産業はダブルどころかトリプル、いや数え上げれば10個は逆風となる問題を抱えています。また、自動車業界の衰退は、日本の産業全体の問題ともなります。

日本の産業の中心は何か。時価総額500兆円のうち、だいたい10%、50兆円を占めるのが自動車関連事業です。雇用に占める割合もほぼ10%、600万人を雇っている巨大な産業です。さらに自動車保険や中古車市場などの周辺の事業も合わせると、その割合は20%、100兆円規模になるかもしれません。

端的にいえば、我々日本人は過去50年間はこの自動車産業で食べてきたのです。自動車産業には企画や設計から、部品作りがあり、板金でシャーシを作る工場も必要です。そして、それらを組み立てて販売し、アフターケアもしなければなりません。さらには自動車単体のみならず、保険や金融事業を付け加えることもできます。

ガソリンなどのエネルギーもです。それらの長いサプライチェーンのもと、バケツリレーをしっかりとやっていくことで、よい車ができるわけです。このバケツリレーこそが、ある意味で島国で暮らしていたことで、阿吽の呼吸で会話することに慣れている日本人が得意なことです。

◆2022年のヨーロッパの自動車のEV化率は12.1%、アメリカは7.2%、中国は20.5%。片や日本は、1.42%だ。中国やヨーロッパと比べて、かなり出遅れていることがわかる。そして、自動車の電動化率は年々、世界中でどんどん加速している。

トヨタの2023年4~6月期決算は過去最高の1兆円を超え、四半期ベースで営業利益が1兆円を超えるのは日本企業としては初だという。しかし、残念ながら「陽極まれば陰」の言葉の通り、これから先は前途多難だ。

本書では、自動車産業に変わるもの、それがロボティクスだという。いわゆるロボット産業だ。

ロボティクスの日本での展開に期待したい。

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