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社会との接点を持ち続ける

今日のおすすめの一冊は、樺沢紫苑氏の『精神科医が教える 毎日を楽しめる人の考え方』(きずな出版)です。その中から「もっと人生を楽しもう」という題でブログを書きました。

本書の中に「社会との接点を持ち続ける」という心に響く一節がありました。

50代後半~60代の人と話すと、「退職後はのんびり過ごしたい」「早期退職して、悠々自適に過ごしたい」という話がよく出ます。退職までは必死に仕事をがんばり、退職してからのんびりと過ごしたい。そういう老後設計の人が多いのですが、まったくお勧めできません。 

最近の研究では、「リタイア」はものすごく健康に悪く、 認知症の発症リスクも高めることがわかっています。 リタイアすると5年寿命が縮むというデータがあります。リタイア年齢が高いほど認知症リスクが下がる。つまり、早期退職すると、認知症リスクが上がるという研究があります。

「リタイアして悠々自適な生活をしたい」と思っても、リタイアした瞬間に一気に老け込んで、生活習慣病になったり 、 認知症になったりして、「悠々自適」というよりも、「闘病生活」に陥る人も少なくありません。 

まず、リタイアすると運動不足に陥りやすくなります。そして人と会う時間が大きく減り「脳への刺激」が減るとともに孤独に陥りやすい。孤独を感じる人は、そうでない人と比べて死亡率が2.3~2.8倍、心疾患が1.3倍、アルツハイマー病のリスクが2.1倍、認知機能の衰えが1.2倍高まります。また、うつ病は2.7倍、自殺念慮が3.9倍と、メンタルにも甚大な悪影響を及ぼすのです。 

家族と同居していても、「疎外感」があれば孤独です。「息子夫婦の家で世話になって申し訳ない」と思っていれば、ストレスになってしまいます。「リタイアして、老後にのんびりする」は、「絵に描いた餅」になりやすいのです。 

アメリカの研究で、100歳以上の長寿者の共通点を調べ たところ、そのほとんどが現在働いているか、最近まで働いていたという結果が出ました。アメリカは定年制がないので、高齢者でも働いています。スーパーに行くと、80 歳くらいの高齢者がレジ打ちしている姿も見られます。 

しかし、70歳、80歳になって「毎日、あくせく働き続けるのは嫌だ」と思う人が多いでしょう。「リタイアしないほうがいい」というのは、「完全にリタイアしないほうがいい」ということです。フルタイム、毎日9時~17時で、80歳まで働きなさい、ということではないのです。 たとえば週1回でもいいので、何か仕事を持つだけで、「運動不足」と「孤独」の予防になります。

重要なのは、社会との接点を持ち続けること。社会に「参画」し続ける こと。 「働く」とは、会社への貢献であると同時に「社会への貢献」「他者への貢献」なのです。完全にリタイアし、年金生活になると、「国に対して申し訳ない」「社会のお荷物になってしまった」と、自己肯定感が大きく下がり、メンタ ル的に良くないのです。 

自分は、人の役に立っている! これを「自己有用感」と言い、「自己肯定感」の1つの要素です。仕事をしていると「自己有用感」が維持されるので、前向きでいられるのです。そのため、仕事ではなく「ボランティア活動」をするというのも有効です。

「できるだけリタイアはしないがいい」と言っても、退職後に「相談役」として好待遇で勤務できるような人はごく一部であって、65歳をすぎて雇ってくれる会社を見つけるのは大変。ということで、リタイア後は「趣味」「遊び」を通して、「運動不足」「孤独」を予防していく。それが結果として、生活習慣病や認知症の予防につながります。

アメリカでは定年制は法律で禁止されている。年齢を理由に差別することになるからだ。定年制が許容されているのは、公共交通機関の業務や警察官、消防士などだけ。ちなみに、カナダやイギリス、オーストラリアなども定年制が禁止されている。こうした事情のため、アメリカでは従業員個人の意思でリタイアの年齢を決定する。(Morebiz/西東美智子)より

このコロナ禍では、年齢にかかわらず、社会との接点が激減した人は多い。約2年以上にわたり、その状態が続き、それが習慣となってしまったからだ。しかし、それは長い人生の中のたった2年だけの異常な期間。

それまでの人生では、「もっときづなを深めよう」「旅に出よう」「たくさんの人と会おう」「もっと密につながろう」ということが推奨された価値観だった。それが人としての本質的な行動だからだ。しかし、それがコロナ禍ですっかり変わってしまった。

そして、このコロナ禍では、高齢者ほど外へ出かけることが制限された。しかし、外へ出なくなればなるほど、社会との接点は少なくなる。つまり、このままいくと、高齢者の寿命は縮み、認知症は急増するということになってしまう。

今一度、社会と接点を持ち続けることの大切さを思い起こしたい。

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