散文詩『三千世界』2019.10.05



大きな蓮が咲いている。線香の煙が帯を作っている。仏様が (大きな舟に乗せて) 罪を種の中に閉じ込めている 「やっと咲いた」。
国が出来る。遠く. 祖父と祖母に祈りを, 鶴が飛んでいる。「千匹いるの、たすけて」。
病弱な衣は右前に間違われて、( 大きな羽が飛んでるよ ) 青い空はやけに薄い色をしている。「体調が悪いのかな」?
指先に薄青の血管が走っている、爪が割れないように, そっと握りしめる. 「指の間までちゃんと握って」。
抜け落ちた髪の束をもう一度切り直して、( 大丈夫だよ) 鏡に映る骨の浮いた身体を抱きしめ直して、「忘れられない記憶」あのときは一人でなかった。
しゃがみ込む姿を、噂話に重ねて (なんて酷いのだろう。) ありふれた光景だと嘘をついて。「もうやめてもいいかな」。
清潔な廊下と、嘘だらけの手すり。「足音を立てないで」。日本酒で交わして、祈り程度の。
朝が来るのを待つ。永遠の昏い夜を. 河を渡るように通り越して。足先をつけた ( 冷たいと信じて) 裁ちばさみで何度も、運命を切り取って。
蜘蛛を遠ざける、仏様の大きな手。白い雲を薄くして開くように. 来世は紅い着物を着て。何も恨まない, 幸福な生活を.
あなたのために歌を詠んで輪廻。糸。



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