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一日の研修だけで人は変わるのか?

私の答えは「ノー」です。

私は研修事業を生業の一つとしていますが、研修「それだけで」人が変わるかと問われると「ノー」と答えるようにしています。

研修終了後に「自分が生きてきた中で一番いい研修だった」、「考え方が変わった」、「視野が広がった」というコメントをもらうことは少なくありません。

しかし、例えば年に一度の終日研修(8時間)は、年間労働時間*の0.4%でしかありません。* 8時間/日 × 20日/月 × 12ヶ月で試算。

いくら研修でいい評価をもらっても、それをもってその人が変わった、もしくは変わると判断することは傲慢だと考えています。

では、研修は全くをもって不要なものなのか?

それに対する私の答えも「ノー」です。

でなければ、人材育成に人生を捧げるなんてことは考えません。

なぜそう言えるのか、以下で少し詳しく説明したいと思います。

リーダーの学びの9割は現場にある

人事の世界には、「7:2:1の法則」という有名な調査があります。

これは、第一線で活躍するリーダーは学びの7割を自身の経験から2割は上司を初めとする周囲からのフィードバックから、そして1割を研修や書籍等を通じた内省から得るというものです。

つまり、人材育成で最も重要なのは戦略的な配属やタスクの割り当てと上司の指導力の向上なのです。

我々が微力ながら海外で活躍する日本人リーダーやローカルの評価者・次世代リーダー層のスキルアップや人事制度・評価プロセスの設計支援に力を入れる理由はここにあります。

では、幅広い社員を対象にした研修(1割の内省)は全く意味がないのでしょうか?

もちろん、そんなことはありません。

内省の1割で現場の9割の学びの質と速度が変わる

多くの人は初めての料理を作る時にレシピを見ると思います。

勘と経験で作ることもできますが、既に専門家がどうやったら美味しくできるのかを科学したレシピを見た方が効率的に美味しい料理に近づけるのは言うまでもありません。

ビジネスでも一緒です。

多くの研修で提供されているフレームワークは多くの事例を元に高い確率で安定して成果を出すための秘訣を集約したものです。

日経ビジネスの特集「星野リゾート代表「100%教科書通り」の経営が会社を強くする」の中で、星野リゾートの星野佳路代表は以下の様なコメントを残しています。

私が使うのは研究者が書いた教科書であり、いずれも企業の事例の積み上げから法則を導いています。その内容は例えば医学や化学と同じ科学の世界であり、正しさが証明されています。私は教科書を通して証明された法則を知り、それを経営に活用しているのです。

これが私が「研修は全くをもって不要なものなのか?」という問いに対して「ノー」と答える理由です。

先の調査でも研修等を通じた内省に1割が充てられているのには、このような明確な理由があるのです。

「できる」と「教えられる」の違い

もう一点、研修や書籍を通じたフレームワークの学習及びそれを鑑にした内省にはメリットがあります。

それは「スキルの言語化」です。

この言語化スキルの有無が名プレーヤーと名マネージャーを挟む分水嶺となります。

もう少し説明したいと思います。

「研修に出なくても仕事で成果を出せる人がいるか?」と聞かれると、私は「おそらくいると思う」と答えます。

実際仕事で忙しいビジネスパーソンの中には、「研修に出るのが面倒」、「時間がもったいない」、「自分には必要ない」という様にネガティブな印象を持つ人も多いでしょう。

しかし研修には、「自分が知らないことを知る」、「自分が出来ていない知事を学ぶ」という目的だけでなく、「自分が日々無意識にやっているスキルを、部下が再現しやすいように実証されたフレームワークを使って言語化する」という使い方もあります

このような背景からも、やはりリーダー層へのスキルサポートが組織力を高めるための不可欠な一手となるのです。

結論:3つの矢を戦略的に

つまり適切な①アサインメント(経験)、②評価プロセスの設計と運用(フィードバック)、そして③整合性の取れた定期的な研修(内省)の3つの矢を戦略的に*設計することがリーダー育成の一番の王道と言えそうです。

*「戦略的に」の本質的な意味合いはこちらをご覧ください。

逆に言うと、どれか一つでも自組織に欠けている・弱いと感じる方は、その欠けている矢をどのように設計するかを考えてみると良いかもしれません。

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