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組織の健康の測り方

そもそも「健康な状態」とは?

「皆さんにとって健康な状態とはどんな状態ですか?」

こんな質問を投げかけると、返ってくる答えは十人十色だろう。

大きな病気をしていないこと、好きな時に好きなことが出来ること、よく寝てよく食べること、健康診断の結果が全て正常の範囲内であること等々。

ちなみに私の母はいつもコレステロール値を気にしているし、私自身は子供が大きくなっても一緒に遊んだり、身体を動かし続けられる状態でありたいと思う。(そしてそのために毎日1時間歩いて出社している)

つまり、人にとって「健康な状態」の定義は異なる

前回「パフォーマンスと健康~個人、そして組織~」と題して、健康経営の重要性について少し触れたが、自社が健康な組織かどうかを測るためには、まず自社にとって健康な状態とはどんな状態なのかをじっくりと考えることが第1歩となる

ちなみに、あるべき状態をまず明確にし関係者(例.チームメンバー)と合意するというこのアプローチは、過去に投稿した問題解決の手法にも通じている。

常識を疑い、自分なりの健康を深く考察する

組織の健康を考える上で、健康の定義は非常に重要なのでもう少しだけ掘り下げたい。

例えば、組織の健康を測る代表的な指標の一つに社員の離職率がある。

この指標を取った時に、健康的な離職率とは果たして何%だろうか?

反射的に「0%」と思う人もいるだろう。

しかし、入社した人が一切辞めない組織というのは果たして本当に健康と言えるのだろうか?

環境が変われば企業の戦略も変わり、求められるスキルや組織の陣容も変わってくる。

一部のコンサルティング会社やIT企業は、自社を人材輩出プラットフォームと位置づけ、退社を「卒業」と呼び、一定の人材流動性を許容する文化を意図的に醸成している。

これを踏まえると、離職率0%を理想とする会社もあれば、一定の新陳代謝はあって然るべきと考える会社もあるだろう。

情報の透明性に関してはどうだろうか?

風通しが良く透明性のある会社と聞くと、健康的に聞こえる。

しかしどんな風も通し、どんな情報も透明化することが本当に健康と言えるのだろうか?

これも答えがない問いである。

この「自社にとっての健康とは何か?」という絶対的な答えがない問いに対して独自の答えを導き出すのが、経営者に求められる健康経営の第1歩である。

はっきり定量化できなくてもよい

とはいっても、他社の取り組みから得られる示唆はある。

例えば前回も紹介したマッキンゼーのレポートによると、以下のような視点が組織の健康測定指標の例として挙げられている。

・Staff turnover(社員の離職率)
・Employee-engagement scores(従業員エンゲージメント)
・Employees’ views of the company’s leadership(社員から見たリーダーシップ)
・Communication and awareness of goals(ゴールの浸透度合い)
・Transparency(透明性)
・Accountability(説明責任)
・Teamwork(チームワーク)
・Candor(誠実さ)
・Customers(顧客視点)

抽象的なものも含まれるが、上記に関連する質問項目をアンケート形式の全社調査で定点観測している会社も多いのではないだろうか。

実際このようなエンゲージメントサーベイを提供している会社も複数存在する。

これに加えて興味深いのが、当時低迷していたコカ・コーラで、2004年から全社改革を指揮した元CEO Neville Isdell氏が残した以下のコメントだ。

“when I first arrived, about 80 percent of the people would cast their eyes to the ground. Now, I would say it’s about 10 percent. Employees are engaged(社員が皆仕事に没頭している).”

https://www.mckinsey.com/business-functions/people-and-organizational-performance/our-insights/a-better-way-to-lead-large-scale-change?cid=app  

つまり、下を向いて(うつ向いて)仕事をしている人の数を会社の健康の測定指標として捉えている。

これはユニークで面白い。

つまり、健康な状態の定義やその測定指標は必ずしもアンケート等で測定可能な定量的なものである必要はないということだ。

ぜひ自社が健康であると胸を張って言え基準を言語化してみて欲しい

では、どうやって健康状態を改善するか

自社にとって健康な状態を具体化し、それをどのように測定するかを決めたらあとは体質改善だ。

ここでもいくつかポイントがある。

まず定めた健康測定指標に優先順位を付ける

多くの場合、健康診断のレポートの様に自社の健康を測定する指標は複数ある。

おそらくその指標の中には、正常値のものもあれば、要経過観察のもの、そしてすぐに手術が必要なものもあるだろう。

その全てを改善しようとするのではなく、まずは今期に集中的に改善する優先指標を定める。

この取捨選択こそが、戦略の本質である。

優先的に改善すべき健康指標が決まれば、あとはなぜそれが悪化してしまったのかの原因(例.食事、運動不足、ストレス、寝不足)を分析し、その原因に合った対策を打つ

原因によって適切な対策は異なるので、対策を考える前の原因分析は欠かせない。

長期戦を覚悟する

体質改善には時間がかかる。

寝る前にサプリを飲んだだけで、翌朝別人になることはない。

組織も同じで、企業規模にもよるが健康な体質に変わるには、数ヶ月ではなく数年間根気強く取り組みを続けることが肝要である。

文化や習慣を培った期間と同じくらいの期間がそれを変えるためにかかるとよく言われる。

体質改善に失敗する一番の理由があるとすると、それは体質が改善する前に取り組みを止めてしまうことだろう。

初めのいくつかの取り組みがあまり上手くいかなかったとしてもあきらめず、試行錯誤を続けながら是非取り組み続けてみて欲しい。

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