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なぜ、アメリカではニッチフレグランスブランドがうまれやすいか? (後編)

こんにちは。香りのコミュニケーターHIROです。

「なぜ、アメリカではニッチフレグランスブランドがうまれやすいか?」前編からの続き。

ニッチフレグランスが育つ環境

「American Perfumery」のセミナーで香りを紹介したブランドのひとつ、aroma M PerfumesはKern氏が示唆する20年かけて育った、スーパーニッチといわれたこともあるブランドだ。その調香師Maria McElroy氏は、自身の経験と現状をとらえてアメリカのニッチブランド市場の成功に姿勢とシステムをあげている。

アメリカの‘CAN-DO-SPIRIT ‘ 。また、事業を始めるに当たって、リソースへのアクセスがアメリカでは容易。 
ー Maria McElroy, Perfumer, aroma M

また、Kern氏はオープンソースの教育機関の存在にも触れた。The Institute for Art and Olfactionである。芸術・嗅覚研究所を学びの中心としてロサンゼルスで設立された非営利団体である。この存在が今あるニッチブランドのムーブメントの火付け役になったと強調する。

アメリカ人は、スタートアップ精神に報いる文化から恩恵を受けます
ー Saskia Wilson-Brown, Founder, The Institute of Arts and Olfaction

香りに焦点を当てたクロスモーダルな芸術と技術のプロジェクトを通してクリエーティブな実験に専念するために設立されたThe Institute for Art and Olfactionは、嗅覚分野に興味を持っている人々のためのエントリーポイントを作り、あらゆる媒体で創造的なアイデアを取り入れることを目標としている。活動を進めていく過程で、教育プログラム、オープンセッション、そして数多くのキュレーションアートプログラム、講演、そしてパートナーシップを立ち上げ、2014年からはThe Arts and Olfaction Awardsという授賞式を開催している。

今年2019年の受賞者の一人で今回、その香りを紹介させてもらったPKPerfumesの調香師Paul Kiler氏は、ニッチフレグランスに参入した理由をこうシェアしてくれた。

私たちは市場でのオファリングに満足していなかった。よって自らを満足させるものづくりに没頭し、それを市場に出したい。
ー Paul Kiler, Perfume Composer, PK Perfumes

新たなモーブメント

「American Perfumery」を追求するため、4月の終わりにニューヨークで取材した際、新しい形の会社に出会った。彼らは香料会社といわれることを嫌い、「Creative Agency specialised in Scent」(香りに特化したクリエーティブエージェンシー)と紹介するThe Society of Scent

創業メンバーは皆、大手香料会社で20年以上の経験を持つ。マーケティング主導になってしまった香水業界に変革を起こしたかったが、内部でのチェンジマネージャーにはなれなかった。独立して外部からイノベーションを起こそうとしている。

香水がものづくりで、アートであった時代のように質の良いものを少量提供する点では、ニッチブランドのカテゴリーの定義に合致する。

創設者の一人はニッチフレグランスブランドがうまれやすいアメリカをこう説明する。

目新しさを取り入れ、また「アンダードッグ」を愛する市場
ー Fred Jacque, Co-founder, The Society of Scent

本人も元ダンサー(アーティスト)で、現在はライターとしてSoliflore Notesのパフューマ―として活躍するValerie Vital氏は下記のように、現代のニッチブランドのクリエーターたちの心情を代弁する。

アメリカの芸術家は、反抗的な精神を強く先駆的に持つ独立したものとしてみられます。独学または(志)同じくするコミュニティにて創造することを強く望みます。意味のある香水を作るためにものづくりに臨みます。
ー Valerie Vital, Soliflore Notes, Perfumer and Writer

「American Perfumery」5つの要素

サマリーとして、下記の5つの要素がアメリカでニッチフレグランスブランドが生まれやすいファンデーションを作っていると言えるのではないか。

1. ものづくりへの尊重
2. アメリカンスピリット
3. コミュニティーの存在
4.(法的)システム
5. 伝統への回帰

香水文化が伸び悩む日本でもニッチフレグランスブランドは生まれているが、上記のようなファンデーションまではほど遠い。

「なぜ、アメリカではニッチフレグランスブランドがうまれやすいか?」 m前編はこちらから。

今日も香り満ち溢れる素敵な一日を!

画像:La Causette Parfumee; The Society of Scent





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