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教え方が上手い人に習えば、子どもが伸びるわけではない理由

「カリスマ家庭教師の体験授業を受けてみたら、教え方が上手くてびっくり。でも、数ヶ月後、成績が伸びているわけじゃない」

こういうことがよくあります。
「いい先生」の見極め方というのは、ものすごく難しい。


「できること」を「教えられる」わけじゃない

仮にそうだとしたら、勉強を教える先生として最適なのは東大生ということになります。
でも、そうとは限らない。

スポーツの世界でも世界最高のプレイヤー全員が、名コーチにはなっていないのは自明です。

つまり、「できる人」に習っても、子どもが「できるようになる」とは言えないのです。

「教え方がうまい」は先生の評価でしかない

教師の勉強会などでは、ある課題の「教え方」を研究することが多いようです。
「どう教えたら、よりわかりやすいか」を追求しています。
何も勉強しないよりははるかにいいです。

でも、どんなに教え方や説明が上手でも、聞いている子供に届くとは限らないのが難しいところです。
なぜなら、教えられる子どもは一人ひとり違うから。

結局、万人に届くような一定の教え方という魔法の杖は幻想に過ぎません。

そんな教え方があるなら、動画全盛の今の時代、「カリスマ教師の魔法の動画」みたいなのが出てきて、大ブレークしてもおかしくないはず。
視聴数だけブレークするのでなく、それを見れば全員の成績が上がる、みたいな。
実際は、ありえないですよね。

なぜなら、「教え方」の前に、「生徒の捉え方」があるからです。

よい先生に必要な「生徒の捉える力」

どんな子で、どんな力がある子なのか、を適切に捉えられないと、理解はさせられても、力をつけることはできません。
どう説明したらよいかを、いつも決まった同じ説明ではなく、相手によって変化させながら運用する力です。
毎年、植木算の単元では同じ説明をしている講師には培うことができない力です。

偏差値30の子と70の子では、教え方・・・というか指導の仕方に違いが生まれるのはあたり前。
では、55と56の子でもそれを分けられるか?
そこに力量の差が出ます。

「生徒の捉え方」に合わせて適切な説明をしたらよいか?

たぶん、カリスマ家庭教師でも成績が上がらないのは、ここじゃないかな。

生徒の捉え方も上手い、生徒と関係性作るのもうまい(つまり生徒がなつく)、そして、説明もうまい、授業が楽しい。
だから、その先生に話を聞いた問題については理解するだけではなく、自分で解けるようにもなる。

でも、教わっていないその他の問題はできないまま。
だから、その人の授業を受けても汎用性がない。

こうなってはいけない。

以前、「カリスマ教師」と言われる人が書いている本の中にこんな生徒がいました。

「僕は〇〇先生の授業が大好きだった。でも、学年が変わってその先生が担当ではなくなってしまった。それによって、その科目が好きではなくなり、苦手になってしまった」

その先生が及ぼす影響の大きさを好意的に見ることもできます。

一方で、その「カリスマ教師」は、その科目が好きだという子どもの気持ちを自分と切り離すことはできなかったという証明でもあります。
それって、まだまだ指導者としては未熟だよね、と思います。

誰に習っても、誰にも習わなくても、その科目を好きでい続けるようにするのが本当の「カリスマ教師」じゃないの?
と。

じゃあ、どんな人に習えばいいのさ?

まず「教える」という手法をとり続けない人です。
どこまでいっても、「教える」の主語は「先生」です。
子どもは「教わる」で、受動的な行為になってしまいます。

先生から「教わる」じゃなくて、子どもが自分で「学ぶ」に変えられる人が教育者としては最も優れています。
誰かの話や授業ありきではなく、自分自身で学んでいくことができる、さらには好きな子になる。

そのために、先生は黒子に徹する。
だからクローズアップされない。でもそれでいい。
前にも書いたな、こんなこと。

というわけで、「教えるのがうまい先生=よい先生」という定義はやめたほうがいいと思います。

では、本当によい先生をどう見極めたらいいのか?

よい先生の見極め方

これは難しいですが、授業なり個別指導なり、先生が子どもと関わっているシーンを見せてもらうことが一番です。

はっきり言って、どの塾も入塾しちゃえばブラックボックスです。
日々、我が子とどんな関わり方をしているか、我が子のことをどう捉えているのか(いい面も課題も)、などは見えにくくなります。

だから、体験時に以下を見ておく。

  1. 子どもへの関心
    個別の性格を捉えようとしているか、課題だけでなく長所も見ているか。

  2. 指導の工夫
    教え込むだけでなく、子どもの考えを引き出そうとしているか。

  3. 子どもとの対話
    コミュニケーションの仕方は、高圧的ではないか。
    発言しやすい空気を作り出しているか。

  4. 学習意欲
    意欲を引き出そうとしてくれているか。

  5. 成長
    知識の伝達だけでなく、思考力など見えにくい部分の成長も考えているか。

本当は日常的に、それらをウォッチするといいんですけどね。
進学塾とかだと、見学ができないところもあるし、先生もさまざまだから、正直、まったくわかりませんが。

そういう場合は、教育観を問うてみるといいと思います。
たとえば、
・授業する上で他とは違うどんな工夫がありますか?
・生徒に考えさせようとしていますか? どうやって?
・理解が遅い子、速い子への対応は?
・興味を引き、意欲を出すような関わり方の工夫は?
・どんな子が、どう学習して、どう伸びたかの具体例は?
・最近あった教育上の発見は?
・先生の教育に対する理念は?
・子どもの可能性を引き出すにはどうしたらいいと考えているか?

全部聞こうとすると煙たがられるかもしれないですが。

CANTERAでの取り組み

最後に、うちの塾では、これらは体験時に見て、聞いてほしいことばかりです。常に、意識しているから自信があります。

日常的にも、なるべく関わり方、生徒の捉え方をレポートするようにしています。

進学塾でも、そういうの書いてくれないかなーと自分の子を預けると感じましたが、一切ありませんでした。
もうちょっと業界全体で見える化しないといけないですね。

実力が顕になってしまうので、難しい面はあると思いますが。

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