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『響け!ユーフォニアム3』久美子と麗奈の関係性から12話「さいごのソリスト」を語りたい

※本記事はあくまで個人の感想であり作品の内容を確定させる また 作品へ影響を与える目的の記事ではありません。またネバタレを含む記事になりますので未視聴の方は記事を読まないで下さい。

一番伝えたいこと


私がこの記事で一番語りたいことはふたりの「愛」です。久美子と麗奈の関係性から物語を語っているのもふたりの友情では割り切れない「愛」を語りたいからです。

関連する回


12話を語る前に第八回・十一回、誓いのフィナーレ〜アンサンブルコンテストより、久美子と麗奈の関係性と変化に触れ「さいごのソリスト」を語ります。


久美子と麗奈の関係性

まさに「特別」です。
特別とは奏者として一緒に高みを目指せる関係です。
その理由は、彼女たちの間には普通の友情を超えた感情と共感があるからです。

たとえば、第八回「おまつりトライアングル」では、麗奈が久美子に対して抱く強い気持ちが描かれています。ここでの二人のやり取りは、普通の友人同士ではあり得ないほど、深い結びつきを感じさせます。

特別であるからこそ12話「さいごのソリスト」大吉山での久美子と麗奈の場面の会話に切なさが生まれています。

ふたりの関係性の変化・特別の詳細は以降 順を追って語ります。

特別の始まり


第八回「おまつりトライアングル」
久美子にとって麗奈は序盤こそ非日常の存在でしたがここでふたりの関係性は大きく変化します。

特別を共有することで芽生える感情
他人と違う麗奈と交わることで久美子の中で「麗奈への憧れ」が生まれそれは同時に麗奈の一番(特別)になりたいという目標になった瞬間でもあったと解釈しています。

第八回「おまつりトライアングル」大吉山にて麗奈に魅了される久美子

この大吉山での麗奈との交流をきっかけに久美子もユーフォで一番(特別)を手にいれ麗奈の横に並びたい、認めてもらいたい気持ちが芽生えた。
この時に久美子にとっての麗奈が一番(特別)の存在になったのではないでしょうか。

第八回「おまつりトライアングル」大吉山にて久美子に特別を共有する麗奈

大吉山はふたりの気持ちが通じ合った(音を重ねた)はじまりの場所。
ここからふたりの「特別」が始まります。

第八回「おまつりトライアングル」大吉山にて「愛を見つけた場所」を奏る久美子と麗奈

共犯者になったオーディション


第十一回「おかえりオーディション」
北宇治吹奏楽部ではオーディションは完全実力主義、学年に関係なく一番上手い人が吹くべきという方針。

この時に先輩からソロパートを麗奈が勝ち取ることで、自分達が一番上手い人が吹くことが”北宇治にとって最良の選択”であることを証明しています。

それは「信念を曲げない」ことを自分達が証明しているとも言える。
ここが12話において非常に重要な意味を持ちます。

第十一回「おかえりオーディション」公開オーディションにてソロの座を競うふたり

またオーディション時、久美子の麗奈への「愛の告白」は、私も一緒に罪を背負うという意味にもとれますよね。

一番(特別)になる為にともに罪を背負う覚悟。それは裏切らない誓いとも受け取れる。これこそが麗奈を想う久美子の愛、ここでふたりは共犯者となるのです。

第十一回「おかえりオーディション」裏切らない誓いを交わす

リズと青い鳥


「誓いのフィナーレ」
個人的な解釈ですが『リズと青い鳥』では、みぞれと希美の関係性だけでなく久美子と麗奈の関係性も重ね、ふたりの特別の終わりを示唆していたように思えます。この終わりを内包している危うさが大吉山、コンクールで随所に描かれており個人的に非常に印象に残った場面でした。

劇場版「響け!ユーフォニアム〜誓いのフィナーレ」

この時のふたりには違う形の”愛情”が芽生えていたのかもしれません。
このように友情では割り切れない結びつきを感じさせる関係性も素敵です。

ただしふたりの関係は音楽より私情が上になってはいけません。
私情 > 音楽だと特別から普通の関係になってしまうからです。

久美子と麗奈は一緒に一番(特別)を目指す「奏者」であるべきなのです。

私情か実力か


「アンサンブルコンテスト」
この疑問の答え合わせが「さいごのソリスト」で回収されます。
私情ではなく、実力で麗奈に選んでほしいと願う久美子の心情が伝わる深い場面。私情で選ぶ行為は久美子への裏切りであり、一番傷つける行為でもある訳です。

何より自分達が築いた北宇治の実力主義の「信念」を曲げることになる。
これは「特別」のふたりが一番破ってはならない誓いのはずです。

劇場版「響け!ユーフォニアム〜アンサンブルコンテスト〜」疑問に蓋をする久美子

以降は12話「さいごのソリスト」について語ります。

さいごのソリスト

久美子(私情)か真由(実力)か


第十一回「おかえりオーディション」との対比
公開オーディションでソリパートを決める状況は久美子たちが一年生の時と全く同じです。ただし、今回最も違う部分は最後は麗奈の投票でソリが決定するということ。

あの時「自分を貫き」先輩からソロパートを勝ち取った麗奈と久美子が今度はソロパートを決める選択を迫られる。しかも私情か実力かの選択を問われるのが、あの時の選択は「本当に正しかったのか」と問われているようで非常に残酷な展開でした。まさに因果応報。

私情か実力か。
北宇治にとっての最良の選択は、実力で選ぶことです。

ここまで久美子と麗奈は自分を曲げず北宇治にとって最良の選択を貫いてきました。

だから自分達も例外ではなく最良の選択をしなくては「信念」を曲げることになります。このロジックが見えた時に、公開オーディションでの麗奈の葛藤が見えてきます。

麗奈の久美子への愛


私情か実力か、この二択で麗奈はとても揺れていましたが、
もし私情で久美子を選んだとしたら、それは久美子への裏切りになります。なぜなら、香織先輩とのオーディション時に「一番(特別)になる為に共犯者になってくれた久美子との誓い」を裏切ることになるからです。

第十二回「さいごのソリスト」久美子(私情)か実力(真由)かの選択を葛藤する麗奈

久美子を裏切らない為に真由を選んだ麗奈は正しく合理的です。ですがその結果、久美子との「特別」を失うことが分かっていてでも、久美子との誓いを果たした麗奈の選択は、久美子への”愛”が溢れていると私は思いました。

奏ちゃんの気持ちが胸に突き刺さる


それとこの気持ちは別です

第十二回「さいごのソリスト」オーディション後
第十二回「さいごのソリスト」久美子の代わりに大泣きする奏

この台詞が全てですよ。視聴者の気持ちを代弁してくれた気がしました。
この選択が最良とは頭で理解していても心はそう簡単に割り切れません。
久美子が本心を出さない分、奏ちゃんが泣いてくれたことに涙。

本当に死ぬほど悔しい

第十二回「さいごのソリスト」大吉山にて久美子の叫び

久美子の麗奈への愛


第八回 「おまつりトライアングル」との対比

大吉山は久美子と麗奈にとって「特別」の始まりの場所。
だからふたりの特別の終わりもこの場所じゃないと成立しないんです。

麗奈が真由を選んだことが久美子は嬉しいと言う。
それは久美子が憧れた「自分を曲げない」特別なままの麗奈でいてくれたから。

久美子は変わり大人になった。
けれど麗奈が変わらないでいてくれたことが何より嬉しかった。
この久美子の麗奈を思う気持ちに”愛”を感じざるをえません。

麗奈は最後まで(特別を)貫いたんだよ。私はそれが何より嬉しい

第十二回「さいごのソリスト」大吉山にて久美子の告白
第十二回「さいごのソリスト」

この時の黒沢ともよさんの演技がまじで凄すぎて言葉を失いました。
この麗奈の気持ちを尊重する久美子の姿が麗奈への”愛”で溢れています。

特別の終わり


「音楽」という共通項があり、全国大会金賞という同じ景色を見ていたからこそ一緒にいられた。奏者として一緒に高みを目指せた。
けれど、その特別な時間ももう終わり。

だからこの場面は私は一番(特別)になれないけれど、麗奈にはこれからも変わらずに一番(特別)のままでいてほしいという久美子の願いが込められていたらいいなと思ってます。

第十二回「さいごのソリスト」大吉山にて久美子から麗奈へ特別の願いを託す

久美子が麗奈に「夢を託す」瞬間がマジで尊いんです。

同時にここで”特別”からの卒業でもあると思うと、やはり”特別”の終わりは大吉山しか成立しないと実感させられます。

第十二回「さいごのソリスト」

久美子と麗奈は隣に並んで一緒にこれ以上高みを目指すことはできません。
この麗奈にとっての久美子が”特別”ではなくなる切なさと、そのことを理解した上で麗奈の選択に「誇らしいと思う自分に胸を張りたい」と受け止める久美子の切なさの表現がすごく胸を締め付けます。

はじめて音を重ね特別を共有したあの頃とは変わってしまったふたりの道。
大吉山はそこにあり変わらないのに気持ちが変わり子供から大人になってしまう終わりの寂しさ、そして今この瞬間の気持ちが尊いものだからこそ、この場面は胸に突き刺さる。

死ぬほど悔しい


ここでようやく本当の意味で、久美子は中学時代の麗奈に追いつけたのだと思います。同時に自分は麗奈の一番(特別)にはなれなかったことへの悔しさが爆発した瞬間でした。麗奈に追いつけたけれど死ぬほど悔しい。
奏者としてではなく、部長として「信念」を曲げなかった久美子の正しい選択に涙を流さずにはいられません。

それでも「それとこの気持ちは別」なんだと溢れ出す割り切れない感情の表現が胸に響きました。
間違いなく12話のベストシーン。

第十二回「さいごのソリスト」大吉山にて本心が爆発する久美子の心の叫び

この瞬間もいつか思い出になる


「音楽」以外の友情を超えた結びつきがふたりにはある。

第十二回「さいごのソリスト」

だからこの瞬間も大人になった時のいつかいい思い出になる。
あの瞬間確かに吹奏楽に本気で打ち込んでいたと胸を張って言える。
それが久美子のなりたい理想の姿のはずです。

だからこの瞬間をふたりは思い出に閉じ込めた。

第十二回「さいごのソリスト」

こうして久美子と麗奈の「特別」が青春物語として綺麗に幕を下ろすのが死ぬほど美しかった。

第十二回「さいごのソリスト」

まとめ

ここまで目を通してくださりありがとうございました。
私の中で「響け!ユーフォニアム」の心残りをなくす為に今回の記事を書きました。

久美子と麗奈の関係性より12話の面白さを語ったつもりです。
整理してる際に思ったのは、やはりユーフォニアムを語る上で麗奈がいてユーフォニアムだということです。

なぜなら久美子が変わるきっかけをくれたのは、麗奈だからです。
そういう意味でもやはり久美子にとって麗奈は”特別”であり、それはずっと彼女の中で不変なものなんでしょうね。

そして本気で泣いて笑って吹奏楽に打ち込んだこの3年間で手に入れたもの全てが久美子たちのかけがえのない財産であり「青春の価値」でしょう。

この作品に出会えたことが何より嬉しい。

全話視聴した際の感想も貼っておきます。
おわり。











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