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うまく言葉を話すことができない息子とのコミュニケーションはイマジネーション〜岸田ひろ実のコーチングな日々〜

知的障害のある息子、良太は、うまく言葉を話すことができません。それでも、身振り手振りや、知っている言葉を組み合わせて、息子は一生懸命になんとかして伝えようとしてくれます。

そんなわけで、母としても、なんとかして息子の伝えたいことを理解したいと思うのです。

「それってこういうことかな?」
「あっ、わかった!あのことだね!」

と言ってみるものの、息子はしぶい顔をして首を振ったり、時にはふてくされてしまったり。なかなかうまくいかない日々を繰り返してきました。

でも、そんな奮闘の日々で、ようやくわたしたちは会話のコツを掴んできました。

息子が伝えたいことは、だいたいこんな内容だとわかりました。

・いま夢中になっている漫画やゲーム
・通っている福祉作業所で起こった楽しいこと、悲しいこと
・参加してみたイベント

ということは、息子がいま、どんなことに興味を持っているかをちゃんと知っていると、話している内容がグッと予想しやすくなるのです。

わたしは息子が好きなものや嫌いなものを一緒に見てみたり、福祉作業所のスタッフさんとやり取りしている連絡帳からヒントを得たり。ふとした時に楽しそうな息子をじっと観察しはじめました。


おかげでわたしも、若い人や子どもの間で流行っているものが少しずつわかるようになってきました。

そしてついに、息子が伝えたいことが、予想してはっきりとわかる日が来たのです。

ひとつは、ハロウィンのこと。

息子がわたしになにかを伝えたいようなのですが、うまく言葉が見つからないのか、ついに胸の前で手をそろえてなにかを心に訴えるようなポーズを取るではありませんか。

母としてはテレパシーを受け取りたいところですが、残念ながら、同じポーズをとってみても何も受信できません。

そこで、作業所のスタッフさんに向けた連絡帳に「なにか新しいことや、楽しいことがありましたか?」と書いて、たずねました。

すると、作業所で「ハロウィンというイベントがある」という話をしたことがわかりました。

なるほど、息子はハロウィンという楽しそうなイベントがはじまるよ、とわたしに教えてくれようとしたのです。でもハロウィンという言葉を聞いたのが初めてで、うまく覚えられなかったのでしょう。

「昨日、ハロウィンって言いたかったんだね!」

と息子に言うと、息子はすごく喜んでくれて、ハロウィンで一体どんなことをするのか、話が弾みました。


もう一つは、ケンカのこと。

作業所から帰ってきた息子は、どうやらご機嫌ななめ。どうしたのと理由を聞いても、説明ができなくて、説明ができないことにまたイライラして、部屋に閉じこもってしまいました。

「もういやっ」と言って、最近ハマっているゲーム機をちらちら見ていたので、どうやらゲーム機が関係していそうです。

「ゲームでなにかあったの?」と聞くと、息子はうなずきました。連絡帳を開くと、そこには、お友達とケンカをしてしまったと書いています。

「お友達と、ゲームのことでケンカしたの?」
「うん」
「それで、腹が立ったんだね。明日、仲直りできる?」

こう聞くと、息子はとりあえずわたしに伝わったことで感情がおさまったのか、わかったと言ってくれました。

大人でも、怒っているときに、その気持ちをわかってくれないというのは辛いものです。しかも、説明したくてもできなければ、なおさら。

息子が言いたくても見つからない言葉を、わたしが推理して、代わりに拾うとまず「わかってくれた」ことに安心するのか、息子は喜んだり、穏やかになって話しはじめてくれます。

ここで大切だなと思ったのは、ぜんぶを予想して「こういうことだね」と答えを突きつけてしまうのではなく、あくまでも「これが言いたいの?」「こういうことかな?」と、会話のヒントを見せること。

人は誰でも、決めつけられると嫌な気持ちになるものです。それはしないように気をつけています。

ヒントが違っていれば、息子の反応がまた別の手がかりをくれますから。

こんな風に、言葉によるコミュニケーションが難しい人というのは、たくさんいます。だけど、うまく伝わらないことを不安に思って、こっちが勝手に答えを押しつけるのは禁物。

どうすれば会話の糸口が見つかるのか、伝わりやすい工夫があるのか、知っているだけでできることがあります。

うまく言葉を話すことができない息子、良太からいつも大切なヒントをもらっている私です。

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