思い込みと使命感のアドバイスをやめる 〜岸田ひろ実のコーチングな日々〜
今回は、私がコーチングの学びの中で気づいたことを書きます。
子どもが困っている時、悩んでいる時、苦しんでいる時、できることなら代わってあげたい。そんなふうに思う親は多くいると思います。でも、実際には代ってあげることはできません。そのかわりに私がしていたことは「ああしなさい!こうしなさい!」というアドバイスでした。
大げさだけど、自分の命よりも大切な存在である娘や息子の未来のために、親として当然のことだと思っていたからです。失敗をさせたくない、辛い思いをさせたくない。そのためなら何だってするという思いの1つが「ああしなさい!こうしなさい!」のアドバイスだったのです。
思い込みと使命感のアドバイス
そんなアドバイスを、私が喜んでしていたかというと決してそうではありません。どちらかというと、親の役割だからという思い込みで決めつけた、 私の使命感でやり続けていました。でもそれはきついことでもありました。
なぜなら、「ああしなさい!こうしなさい!」のアドバイスは子どもに届かないことが多いからです。
「うるさいなぁ!」
「ほおっておいて!」
そう言われると決まって私も言い返します。
「もうしらない!」
「勝手にしなさい!」
娘や息子は怒る。私は腹を立てる。しばらく険悪なムードになる。
アドバイスの需要と供給が全くあっていないわけですから、そうなって当然です。これでは私の身が持ちません。子育ては永遠と続くわけですから。
娘が大学を辞めると言った日
娘の奈美は、大学に通いながらベンチャー企業で働く会社員という、二足の草鞋を履いていました。気がつけばいつしか学業どころか、寝食も忘れるくらい夢中になって働いていました。ちょうど3年生になった頃。
「大学を辞めようと思う」
そう言いだした娘に、私は猛反対をしました。
苦労してやっと入れた大学を、途中で辞めるなんてとんでもない。
将来のことを考えたら、絶対に卒業した方がいいに決まっている。
今は仕事の方がおもしろいから、大学を辞めるという楽な道を選ぼうとしているに違いない。
よくない選択をしようとしている娘のことを、何としても説得しなければと思いました。しかし、一生懸命な私のアドバイスにも、娘は首を縦には振りません。それどころか、私と話さなくなり心を閉ざすようになりました。
なんで、私はしんどくなるのか。
なんで、私は辛くなるのか。
どうして、娘は聞かないのか。
どうして、娘は怒るのか。
ある日、はっと気付きました。
私は娘のことを信じていなかったのです。信じてもらえていないことを、娘はわかっていたのです。「ああしなさい!こうしなさい!」という、私のアドバイスが無意識に娘を傷つけていたのです。私はアドバイスをやめました。それから3ヶ月が過ぎた頃。
「大学も仕事も辞めないことにした」
娘は晴々とした顔で報告してくれました。
「そうなんやね」
飛び上がるほど嬉しかったくせに、なぜか愛想のない返事をしてしまった記憶だけが今も鮮明に残っています。
信じて待つ心
求められていないアドバイスをしなくなって、私は楽になりました。
求めていないアドバイスをされなくなって、娘は自分と向き合い、自分で考えて決断できるようになりました。夢に向かって自分で選んだ道を歩むようになりました。
命に関わることは別ですが、それ以外のことでは教えないことも必要なことだったのです。
たとえ失敗したとしても、辛い状況になったとしても、人は必ず立ち直る力を持っています。だから、無条件に子どもを信じてあげるだけでいいのです。
「信じて待つ」
やっとたどり着いた私の答えでした。
親は子どもの最高のコーチ
親の願う幸せと、子どもの願う幸せは同じ。
親の言うことを聞く子が良い子だ。
もしそんなふうに思っていたとしたら、それは勘違いかもしれません。そんな勘違いからのアドバイスは、時には子どもを傷つける武器になりかねません。
上手くいかない時に、上手くいく方法を教えることが親の役割ではなく、子どもが自分で選んだゴールにたどり着くまで、少し離れたところから見守ること。子どもよりも子どもを信じて待つこと。それが本来の親の役割だと私は思うのです。実はそれってコーチの役割と同じなんです。
すなわち、親は子どもの最高のコーチなんです。
大切な子どもが幸せな未来にたどりつけるように、時にはパパコーチ、ママコーチとして、子どもと向き合ってみると、子育てがちょっとラクになったり、もっと楽しくなったりすると思います。
タイトル写真は、大好きな写真家 #幡野広志 さんに撮影していただいたお気に入りの1枚を使わせていただきました。
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