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ラノベ ある勇者の悩み事

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ラノベ「ある勇者の悩み事」の作品集です。是非お読み下さい。 魔王討伐パーティーに選ばれた主人公は、魔王討伐後の生活に不安を感じて、逃亡する事を決める…。
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ラノベ ある勇者の悩み事(5)

ラノベ ある勇者の悩み事(5)

 俺はアイツを避けて、建物の裏側から広場へと回った。アイツは気付かずに去って行った。同時に罪悪感も湧いた。
 アイツは未だに俺の事を好きでいてくれているかもしれないのに…。あぁ、俺かっこわる…。
 俺達は気づかれない様に、村の出口を目指して走った。よし、もうすぐそこだ…と思ったその時だった。
「…よぉ、ガロシュカ。久しぶりだな」
急に呼び止められて振り返って、俺はそこにハリオルが立っているのを見た

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ラノベ ある勇者の悩み事(4)

ラノベ ある勇者の悩み事(4)

 目覚めは最悪だった。俺はまだ眠たい目を擦って、寝台から起き上がった。そうだ、俺はあのパーティーからびびって逃げ出したんだったな…と思い出したのだった。夢の中ではあのパーティーでの冒険が続いていた。
 もし、逃げ出していなければ…と思ったけれども深く考えるのをやめた。他の皆は今頃、俺を探し回っている。それで俺の事をいつか見放すはずだ。
 寝台から降りて、部屋の窓から外の風景を眺めた。のどかな田園と

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ラノベ ある勇者の悩み事(3)

ラノベ ある勇者の悩み事(3)

 俺達は農夫にこの村で一番の料理屋を教えてもらった。名を「ねこねこ亭」と言って、獣人の男がオーナーを務めている店だと言う。
 俺達は農夫と別れて、店へ入った。中は思ったより綺麗で、木で出来たテーブルに温かみを感じた。
 やがて中から小太りの獣人の男が出て来た。
「いらっしゃいませ。ようこそ、ねこねこ亭へ。冒険者様であらせられますか?」
ユヌマルが俺を見て、フッと汚い笑みを浮かべた。やめてくれ、それ

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ラノベ ある勇者の悩み事(2)

ラノベ ある勇者の悩み事(2)

 森の中を歩いて数十分、ユヌマルは呑気に鼻歌を歌っていた。俺の気も知らずに。
「ちょっと、鼻歌やめてくんね?」
「何でだよ?」
「俺はそういう気分じゃねぇの。今もとてつもなく不安なんだよ!」
何だか分からない。でも不安だ。未来が恐ろしくて仕方がなかった。
 その時、背後から何か声がした。
「助けて下さい〜!」
「何だ?誰か襲われてるのか!?」
「とにかく急ごう!」
 その声をした方向に向かって、木

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ラノベ ある勇者の悩み事(1)

ラノベ ある勇者の悩み事(1)

 ある日の夜、王都から離れた遠い森の中で一つのパーティーが野営していた。彼らは他でもない、魔王討伐の為に王の詔によって、結成された最強パーティーだ。メンバーは全員、ギルドのお墨付きの強者ばかり。
 ハリオル・ミンス。彼は十五年もの間、冒険者として活動している。魔法はあまり得意ではないが、武術や剣術なら誰にも劣る事は無かった。
 リレン・エストナー。彼女は元々王家の警備官で、送り込まれたスパイや暗殺

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