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ハリウッドのジェダイマスターから、交渉力チームづくりも学べる本

こんにちは、本の編集者の中川ヒロミです。

8月の担当本は、ハリウッドのスーパーエージェント、マイケル・オービッツさんの自伝『LEGEND』です。この本、濃くて熱くて厚くて迫力満点!装丁も、tobufune小口さんに重厚感あふれるかっこいいデザインにしてもらいました。うっとり。

オービッツを初めて知ったのは、『HARD THINGS』を編集したとき。著者のベン・ホロウィッツは倒産の危機を救うため、自分の会社を一部売却する交渉で、オービッツにアドバイスをもらいに行きます。するとオービッツは、売却のデッドラインを設定するよう言われます。「私は『恣意的に設定するデッドライン』の効果を信じている。私は競り合わせ効果を信じている」。教えに従って2社に8週間後には売却すると通告すると一気に話が進んで7週間後に話がまとまる。別の売却交渉でも、オービッツを頼り、売却価格を上げるための秘策を教えてもらう。めっちゃ交渉上手!

さらに、ベン・ホロウィッツとモザイクをつくったマーク・アンドリーセンが、ベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ」の組織をつくるために参考にしたのが、マイケル・オービッツが創業したエージェンシー「CAA」。

ベン・ホロウィッツとマーク・アンドリーセンが尊敬する人ですから、本人も面白くないわけがない。大卒で大手エージェンシーに入社するも、当面は下働き。そこからのしあがり、出世するも、30歳を前にして自分たちのエージェンシーを仲間と創業。古巣から嫌がらせをされまくるけれど、あの手この手で大物俳優、監督を次々とクライアントにして、映画の企画をパッケージにしてスタジオに売り込んで、ゴーストバスターズ、ジェラシック・パーク、レインマンなどなどすごい作品を生み出すわけです。一時はハリウッドの大物が9割所属していたというくらい勢いがあったとのこと。ソニーのコロンビア買収、松下のユニバーサル買収を仲介した話も、孫さんとヤフー株を買う交渉をしたことなど、迫力満点でここまで書いていいのだろうかと心配になるくらいです。

でも、自慢話の自伝にしないところが、さすがハリウッドのスーパーエージェント。友達のディズニーのマイケル・アイズナーに何度も誘われてディズニーに入るも社長は14カ月でクビになるし、長年の親友にも裏切られ、かわいがっていた部下はドラッグ中毒で死んでしまう。しかしそこで引退せずに、そうした失敗をこの本でも書いちゃうし、今度はシリコンバレーで起業家たちに教えていくところが、オービッツがさすがだと思うところ。本には、マーク・アンドリーセン夫妻とハーブ・アレンに叱られた話も書かれています。

交渉術、人を口説く方法、組織づくりなどすごく勉強になりますが、ノンフィクションとしても面白いので、夏休みにぜひ。
そして膨大な映画の名前、人の名前を調べて訳してくださった大熊希美さん、ありがとうございました!!

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