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ソトナカとVOLVEと慶應義塾大学

こんにちは、吉井弘和です。個人としては初めてのnote投稿となります。今日は、私がなぜ今、ソトナカの共同代表VOLVEのキャリアアドバイザー兼経営者慶應義塾大学の教員という3つの立場で活動をすることにしたのか、個人として、それぞれの立場をこえて、自分の言葉で書き残しておきたいと思います。

どんなキャリアを歩んできたのか

そもそも、私はこれまでどんなキャリアを歩んできたのか、一言でネガティブに言えば「雑多な道」を歩んできたということだと思いますし、一言でポジティブに言えば「リボルビングドアに挑戦する道」を歩んできたということだと思っています。

2004年に新卒で経営コンサルのマッキンゼーに入社をしました。民間企業向けコンサルが中心でしたが、1年目に東京大学の事務生産性改善のプロジェクトに入りました(※)。仕事そのものがおもしろいことは、私にとってももちろん大事ですが、何のために仕事をするのか、その社会的な意義は何なのか、ということが自分にとってはもっと大事であることを再認識した仕事でした。
(※マッキンゼーによるプロジェクト受注は当時メディアによる報道があった既報事実です)

その後、多くの同僚とは異なりビジネススクールには行かず、アメリカとイギリスのポリシースクールに行きました。イギリスで日英比較政治学の修士論文を書いた後、イギリス政治の実際の現場を経験したいと思い、英国保守党本部等で働きました。

帰国してマッキンゼーに復職後は、ヘルスケア企業の仕事と並行して、少しずつ、医療政策の仕事をさせてもらいました。その後、やはり政策決定・運用を行う側に行きたいと思い、厚労省の外郭団体(社会保険診療報酬支払基金)と厚労省で合計5年半お世話になりました。そして昨年の夏に厚労省を退職して、官⇔民の越境キャリア支援を行うVOLVE株式会社を創業しました。私のキャリアの詳細はこちらにも綴っています。

何がきっかけだったのか

そんな私が、なぜここへきて、創業直後で事業立ち上げの大事な時期にもかかわらず、この4月から、慶應義塾大学総合政策学部の教員となることを選んだのか。そこに至る大きなきっかけは、厚労省を退職する約1年前くらいから徐々に構想を始めた、霞が関の有志によるソトナカプロジェクトでした。

ソトナカプロジェクトは、昨年の3月に、霞が関の中途採用職員を中心とする約20名ほどの仲間と共に立ち上げた、有志プロジェクトです。「多様な人材が新しい社会を創り出す霞が関」を目指して、中途採用に関する提言を行うことを、当時の活動の中心として発足しました。

われわれの提言内容は、いつか誰かが提言したものや、民間企業では普通のことも多かったと思いますが、時宜を得たこと、そして当事者性があったことで、反対だけではなく賛同の声も多くいただきました。プロジェクトの直接的な成果と呼べるかどうかは別として、提言内容に沿った多くの動きが生まれていることも事実です。

それと同時に、このような変革活動においては、当事者性が諸刃の剣であることも、身をもって実感しました。当事者だからこそ説得力を持つ反面、当事者だからこそ自分たちの処遇改善運動のように見えてしまう側面もあります。もっと多くの方に霞が関に興味を持ってもらいたいと思って提言することも、当事者である以上は、自分たちの処遇と切っても切れません。
(※この当事者性のジレンマは変革一般に存在するものです。例えば、霞が関改革も今は比較的好意的に受け止められていますが、20年前なら公務員が処遇改善を求めていると言われて、ひどく叩かれていたと思います。)

また、もう少し高い目線で見れば、中途採用の当事者だろうとなかろうと、公務員としてできることにも限りがあります。例えば、(法律を変えればできないわけではないと思いますが…)国家公務員の「一般職」には2つの全く異なる意味があるという事実がある以上、正確性を担保しなければならない役所では、求人を分かりやすくすることに限界があります。

3つの立場は自分にどんな意味があるのか

そこで、民間の立場だからこそ自由にできることをしたいと思い、VOLVE株式会社を起業しました。その1つの活動は、民から官への支援として、越境を後押しするためのキャリアストーリーの発信や、(厳密には不正確ですが、だからこそ)分かりやすい国家公務員求人情報のまとめ民から官への越境転職者への研修の講師などです。

VOLVEを通じたもう1つの活動は、反対側で官から民へと転職する方々へのキャリア支援です。キャリアのもやもや解消は、公務を続けるにしても続けないにしても大切なことです。転職を決めた方々が相手なら、より良い転職をサポートしてその方々が活躍することで、新卒採用活動への好影響も期待できます。

他方で、民間企業の立場だと難しいことも当然あります。人様からお預かりしているお金で会社経営をする中で、会社にとってのリターンを生むことが難しいと分かっているような研究活動に、資金や人のリソースを割くことはできません(大企業のように、本業で有無を言わさぬリターンを生みつつ、長期的・間接的な効果を訴えるなら別ですが)。無理を通してやれたとしても、そのような研究活動は中立性が低く見え、せっかくのアウトプットの社会的な効果も薄まってしまうでしょう。

今、20代の離職率が高まっているのは、霞が関だけではありません。仕事をめぐる、個人と組織と社会の関係性は、日本全体で変わりつつあります。したがって、霞が関だけを見ていても方向性を見誤ります。このような潮目の時期において、大学の教員という中立な立場で、研究・発信することができることには大きな意味があります。それも、「半学半教」の精神を持つ慶應義塾において、教育と研究を両立して、学生の方々と共に研究をできることが、非常に魅力的です。

今の私にとって、ソトナカとVOLVEと慶應義塾大学で活動を行うということは、霞が関の変革という1つのテーマについて、内情を良く知る元当事者(多くの仲間は今も当事者です)、市場のブラインドスポットに手が届く事業者、高く深い視点で対象を見つめる中立な教育・研究者、という3つの異なる立場で活動をすることでもあります。

今、どんな心境なのか

霞が関の変革という1つのテーマに絞ると上記の通りですが、事業者としてはより広く越境キャリア全体をスコープとしていて、教育・研究者としては日本全体をスコープとしているという意味で、同心円状にスコープが大きく広がっています。したがって、自分の手に負えるか不安でもあります。ただ、不安だと言っていても始まりません。それに、VOLVEには高橋貴哲さんという最高のパートナーも参画してくれることになりました。そこで、勇気を出して一歩前に踏み出してみました。

また、ソトナカとVOLVEの立場を兼務するようになってから、自分の中で双方の活動に明確な線を引いてきました。そこに大学教員の立場が加わりますので、あらためて、プロとして非常に高い倫理観が求められることに責任も感じています。今はそんな心境です。そんな私にアドバイスをしようと思ってもらえる方、一緒に何かをやりたいと思ってくれる方、3つそれぞれの立場で、ご連絡をお待ちしています!

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