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D2Cブランド「世界観」の次に注目すべきは「問診型」モデルの理由

近ごろ目にするようになってきた『質問に答えてあなただけの○○をつくる』というサービス。

私はこれを問診型ECと読んでいる。問診型ECは食品から香水までバリエーションが増えてきており、徐々にきてるな〜と感じている。じつは私自身も仕事では問診型WEBサービスを担当している。それで問診型ECのポチッとしちゃう仕掛けや、最適な質問数が気になっていた。なにげに問診型ECのリサーチをしてたら、問診型ECモデルは、従来ECを飛び越えまくって最強ではないかと思ったのでメモを残しておきたいと思う。いま私が注目しているD2Cの問診型ECを6ショップをリサーチした。

リサーチの目的は2。

目的1:最適な質問数と、質問画面のUI/UXを調査
目的2:D2Cブランドではなくても取り入れられる戦略はないか?

SNSを駆使して顧客と関係性を深めていくのがD2Cだが、SNS以外のWEB戦略が語られる機会はほぼない。SNS以外の施策も相乗効果となっているはずなので、それは何なのかを勝手に想像してみたいと思った。(あ、コレは完全にひろこ主観の考察ですよ)

D2Cの領域は様々な評論も生まれている。「世界観」×「テクノロジー」=D2C=オシャレ が今の時代となっているが、実際のところ老舗ECや楽天などモールに出店している店舗は、D2Cブランドのように世界観があるショップばかりではない。正直、D2Cの世界観とデータドリブンは真似できないショップの方が多いだろう。楽天やYahoo!といったモール型店舗はSNSと相性があまり良くない。

SNS以外に注目することで、世界観を作り込む自信はないし、ロングテール戦略もしたくないけど、どうしたらいいか分からない。と悩んでいるショップのヒントが見つかるのではないかと思ったのだ。

今回は約5,000文字と長文になったので、答えを先に書いておく。

苦戦しているショップ(老舗ECは特に)が見直すべきことは『フロント商品』だ。D2C問診型ECは、有益な情報をフロント商品として置いている。

それにしても...D2Cはショップはやっぱりおしゃれだね〜眺めていて本当に楽しい!リサーチを忘れて買い物にはしってしまういそうになる。ということで、はじめていきます。


・PostCoffee(ポストコーヒー) **

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POST COFFEE 株式会社 2018/09設立

取扱アイテム:コーヒー

質問数:10問

どんな悩みを解決する?:なんとなく毎日飲んでいるコーヒーの価値を高める。

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感覚的で答えやすく、イラストもかわいい。

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どんなことしてる?:D2Cの教科書のようなショップだと感じた。デザインも統一されていてわかりやすい。毎日習慣的に消費するもので、こだわりを語る人口が多いのはお酒とコーヒーくらいではないだろうか。届いて飲んだコーヒーのフィードバックをすることで、次回届くコーヒーが最適化される仕組み。

質問後の画面では最高にコーヒが美味しくのめるシーンが想像できる写真と言葉が。

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BLOGにコーヒーの豆知識や試してみた系のコンテンツは一通りある。個人的にはコヒーレシピがもっと見たいな〜と思ったけど、コーヒー好きは断然ブラック派なんだろうな。私も1日3杯飲むがオールブラック。でも今年の夏は、このコーヒートニックというのを試してみたい。

最近はストック型コンテンツを作るより、SNSやウェビナー中心みたいだ。

読み出したらコーヒーネタが面白くて、最近BLOGが更新されていなようで残念...と思ったらnoteがあった!これも美味しそう、普通に作ってみたい。


・MEDULLA(メデュラ)

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株式会社Sparty 2017/07設立

取扱アイテム:シャンプー

質問数:9問

どんな悩みを解決する?:1人ひとりの髪に合うシャンプーで、シャンプージプシーを卒業する

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こちらの質問も、感覚的にパッとみてわかるのでサクサク進める。

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診断結果の画面も丁寧。香りや成分が丁寧に書かれている。

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どんなことしてる?:D2Cはリアルの空気感も大事にするので、メディアで紹介されているほとんどのショップが小さくてもリアルの場所を持っている。

この「サロンで無料診断」サービスは良いね。オンライン診断ではなく、認定スタイリストのいるサロンで無料診断ができる。商品の委託販売のモデル近いにですね。美容室は無在庫で対応できるし、この手があったか〜。思いつきそうで、思いつかない。シャンプーとブローが無料らしいので、コロナが落ち着いてきたら対面のほうがいい人は増えるのではないだろうか。同会社はスキンケアサポートサービスのサブスクも新しく始めたようなので、D2C×サブスクのリーダー的ポジションですね。


・FUJIMI(フジミ)**

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トリコ株式会社 2018/04設立

取扱アイテム:サプリメント/フェイスマスク

質問数:20問

どんな悩みを解決する?:自分の肌に合うサプリとフェイスマスクを知れる

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問診数は20問と他のショップより多いが、デザインのおしゃれで質問に答えるのが楽しい。

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サプリ購入の前に診断結果を教えてくれるんです。実際はもっと長いページで、さらに詳細やおすすめサプリも見れる。買う前からこれだけの情報を見せてくれるのは非常に親切。(私の肌状態バレバレだが...)

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どんなことしてる?:こちらはSNSメディアSkieNa(スキーナ)を運営している。やはりSNSだ。クラウドファンディング から始まり、SNSを駆使している印象だ。美容診断をして自分に合うサプリを購入するサービスは今までもあったはずだけど、あファッションブランドのように作り込んだ世界観がウケたのだろうか。手軽でワクワク感があるのもいい。代表は若い女性のようだけど、ビジネスの仕組づくりの視点をしっかりと持っているのだろう。


・LIBERTA perfume(リベルタ パフューム)**

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ヤマネコ株式会社 2019/01設立

取扱アイテム:香水

質問数:20問

どんな悩みを解決する?:自分らしい香りがわかる

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まず最初に、自分用かギフトか選ぶところから始まる。

For Giftを選ぶと、選んだものを贈るか、本人に選んでもらうかが選択できる。これは良いサービスだ。問診系ECのギフト需要があるジャンルは、取り入れたほうがいい。

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イラストがかわいい。問診型ECはワクワク感がないと途中で面倒になって離脱してしまうので、イラストや写真でワクワクを継続させる仕掛けは思っていたより大事だ。これは、何度も診断を受けてみて改めて感じた。

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購入後はおすすめの香りと傾向を教えてくれる。こちらも細かく教えてくれるので無料で親切だな、買ってみようかなと思わせる。

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どんなことしてる?:香りは化学や薬学でも解明しきれていない奥深い分野なだけに、ネットで売るのは困難とされてきた。だけどローンチからわずか1年半で15万件のプロファイリングが集まっている。こうやって香りを売る方法があったのか、と関心する。SNS以外は、百貨店でイベントは開催しているようだけど、他のD2CほどSNSを頻繁に利用しているイメージではない。15万件のデータを使ってでオリジナルのペルソナ別香水を作っていくのだろうか?


・GREEN SPOON(グリーンスプーン)**

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株式会社Greenspoon 2019/05設立

取扱アイテム:スムージー

質問数:7問

どんな悩みを解決する?:自分の体に必要な野菜とフルーツがとれる

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質問は7個と少なめで、全体的にすごく操作が簡単な印象だあった。今回リサーチした6ショップの中で、もっともUIデザインが優れているように感じた。

質問に答えていくと、必要栄養素の高い野菜だけ残っていく仕掛けも面白い。(写真ではわかりにくいが、一部の野菜の写真はワントーン暗くなっている)

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質問が終わると、いま必要な野菜やフルーツを教えてくれる。

カートへの流れがスムーズで、 UIデザイン・UXライティングにかなり時間をかけたのではないかと思う。

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次のページで大きく「あなたにもっともオススメのスムージー」が出てくる。そのすぐ下にその他のオススメのスムージが出てきて。その場で個数を決めてカートに入れられる。使いやすい!買いやすい!

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どんなことしてる?:本格ローンチされてわずかしかたっていないが、インスタフォロワーはかなりいる。今後は百貨店イベントをしていくようだ。
百貨店以外にどんリアルイベントをしていくのか注目していたい。


・Mystery for You(ミステリーフォーユー)**

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株式会社SCRAP 2008/06設立

取扱アイテム:謎の箱

質問数:10問

どんな悩みを解決する?:好奇心や想像力をかきたててくれる


質問に答えると、趣味嗜好に合う謎解きが毎月届くサブスクサービス。

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『謎』という謎のものを売っているのであえてかもしれないが、他のD2Cショップと比べるとかなりシンプルで、質問に答えていく途中のワクワクというより、謎を買う謎のワクワク?そわそわ感がある。脱出ゲーム系を多く手がける会社が運営している。

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何が届くかわからないので、もちろん質問が終了したあとの説明はなし。

どんなことしてる?:謎がサブスクで届くという発想がすごい!お子さんがいる家庭では盛り上がれそうだ。謎解き系は小学生のファンが多い。小学生がスマホで自分で購入するのはほぼないだろうから...広告はやはりYouTubeか?このサービス自体は今年の5月に開始されたばかりだ。


まとめ

問診型EC6ショップをリサーチを終えて。

目的1:最適な質問数=10問題前後が多い
    UI/UX次第で20問を超えても余裕

質問数は10問前後が多かったが、UIデザインやUXライティングの工夫次第で、20問を超えても面倒を感じないことがわかった。

質問に答えていく途中にワクワク感を感じる仕掛けがあれば、もっと質問数が多くてもいけるだろう。離脱させないために、イラストなど取り入れて楽しい雰囲気にしている。


目的2:SNS以外の施策は何をやっているのか=有益な情報の無料公開

すべてのショップが問診結果の有益な情報を無料で公開している。(謎を売っているショップ以外ね)

つまり、この無料公開されている有益な情報がフロント商品となっているのだ。

従来のECショップは、お得に購入できるフロント商品で顧客リストを獲得し、育成していこうという考えが主流だった。ユーザーの悩みはマーケティングで仮説をたてて、商品を企画して販売していた。

問診型ECは悩みを抱えているユーザーが自ら集まってくる。自動で”悩み”が集まるこの仕組みは、マーケティングツールであり、LPでもある。従来のLPと違うのは、質問に答えて画面を進んでいくので「この商品は自らが導き出した答えである」と強く感じることだ。同じ商品で、1枚ページのLPと、画面が進む問診型でABテストをしたら、問診型のほうが転換率は高くなるのではないだろうか。

今までのECは『顧客データ』を集めるという概念だった。問診型ECは『悩みデータ』を集める概念だ。

問診型でプロファイリング数を集めるのは、経費をかけて無料プレゼントを配りまくるより、よっぽどリターンがあるだろう。そしてお気づきだろうか。なんと6社の内5社は、3年以内に設立された会社だ。かなり勢いをつけている会社もある。問診型の効率性が想像できるのではないだろうか。

D2C「ブランド」の次にきている「問診型EC」が最強の理由は、フロント商品であり、マーケティングツールであり、LPでもあるからだ。


私たちは、ユーザーの悩みがわかったフリになっていないだろうか?

私たちは本当にユーザーの悩みを解決する発信をしてきたのだろうか?

有益な情報の無料公開?そんなの当たり前よねと思ったあなた。本当に当たり前ですか?

あなたのショップは、的外れな”フロント商品”を置いているにも関わらず、バックエンドばかり増やそうとしていませんか?



過去にこんなリサーチもしました。




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