見出し画像

「姿勢と嚥下」〜基礎編〜骨盤と股関節のみかた②立ち上がり

はじめに

 摂食嚥下チームアシスタントレポートにお越しいただき誠にありがとうございます。前回は骨盤の前後傾の解剖学的なイメージと動かし方、股関節の内外旋の評価についてお話しました。食事姿勢である前傾座位になるための土台として、骨盤前傾・股関節屈曲になり足底に荷重をのせていく中で、支持基底面と重心を変えながら筋緊張の変化を意識して評価していくことが大切だというお話でした。今回は、それを加味して重心と床反力をみながら骨盤や股関節を連動して動かしていくことで骨盤底筋群を賦活させていきます。
 
前回のレポートはこちら(復習用)


1.骨盤と股関節の運動連鎖について

2011.11.7スライド①

骨盤前傾姿勢で足底に荷重すると、足底から床反力により無意識な筋活動が促されます。また、足底に荷重がかかると運動連鎖で骨盤が前傾しやすくなります。

2021.11.7スライド②

足底が床についていないと、前傾姿勢になっても筋活動は起こりにくいです。足底への荷重に対してどのように骨盤、股関節周囲の筋緊張が変化するのかを感じてみましょう。

運動連鎖とは

2021.11.7スライド③

運動連鎖(kinetic chain)とは、身体が動く際に複数の関節・筋肉が鎖のように上手に連動して動く状態で、日常生活・スポーツなどの運動には運動連鎖が関与しています。

2.股関節運動から腹圧を考える

2021.11.7スライド④

股関節内転内旋すると足底の内側~母趾に荷重がかかります。

2021.11.7スライド⑥

股関節は内転内旋した方が寛骨臼に骨頭が適合し、骨盤が前傾して殿筋や腹部の筋緊張が高まりやすくなります。

2021.11.7スライド⑧

反対に、股関節外転外旋すると足底の外側~小趾側に荷重がかかる。

2021.11.7スライド⑧

股関節が外転外旋したまま骨盤を前傾させると、骨盤臼蓋に骨頭が当たります(インピンジメント)

インピンジメント:『衝突』という意味です。 関節付近で他の骨や筋肉との衝突が生じることによって、組織の損傷が起こり痛みが生じます。また可動域制限にもつながるのでインピンジメントを起こさないように誘導することが大事になってきます。

次に腹圧についてです。
前回の投稿にもありましたが、腹圧には股関節の内転内旋運動が関係します。再度復習をしましょう。

2021.11.7スライド⑨

腹圧とは上のスライドにもあるように「腹腔内圧」を指します。
脊柱などの中枢部を固定し四肢などの運動を円滑にするためにも必要な要素です。
腹圧には多裂筋・腹横筋・骨盤底筋群が関わっています。
腹横筋は骨盤から肋骨の下部を繋ぐように付着しているため、骨盤を前傾させると収縮して活性化します。
また、大殿筋や股関節内転筋は骨盤底筋群の共同筋なので、これらの筋を収縮させることで骨盤底筋群が活性化します。


3.重心移動の練習からの立ち上がり

2021.11.7スライド⑩

骨盤の前傾⇒重心は前上方へ移動し、足部への荷重⇒重心は前下方へ移動します。
相手の床反力を感じながら、自分も一緒に重心を上方へ移動していくと立ち上がり動作につながります。

2021.11.7スライド⑪

 〈殿部離床から立位までの各関節の動き〉
上の図をみてみましょう。まず股関節は屈曲位から殿部離床にかけて屈曲角度が増大しその後、伸展位となります。次の膝関節はこちらも屈曲位から伸展位。このとき足関節では殿部離床時に、より背屈角度が必要となりその後、底屈となります。

2021.11.7スライド⑫

次に立ち上がりの筋電図を見てみましょう。
股関節周囲の大殿筋、大腿直筋、前脛骨筋は殿部離床時は収縮が必要となっていますね。ハムストリングス、腓腹筋、ヒラメ筋は姿勢保持筋であり、立位保持する間も収縮がみられています。

つまり、立ち上がりの際、どの時期にどの筋収縮が必要か知る事が大切です。これらの筋活動を運動連鎖を考えながら、更に腹圧をキープしたままでの立ち座りを誘導することが必要になります。

*立ち上がりの中での骨盤・股関節の評価や骨盤底筋群のアプローチの一例を学びたい方が是非動画をご覧ください!

まとめ

 今回は食事姿勢である前傾座位になるための土台として、重心と床反力(Th7あたりと足首の関係性)をみながら骨盤と股関節の運動連鎖で腹圧を上げていく視点をお伝えしました。キーワードは「運動連鎖」「腹圧」です。
座位からしっかりと評価し、立ち上がり時には足底にしっかりと体重移動していきましょう。その際に私たちが誘導する方向や力加減、セラピスト側の立ち位置等も大事になってきますので、いかに相手の動きを感じ取ることが重要なポイントとなってきます。

度々、お伝えしている通り最終的に初期評価時の嚥下が姿勢を変えた結果どのように変化するかが最も大切となります。また患者様が一口でも多く食事を取れるよう、実際の食事場面を見る機会が増えると幸いです。
*立ち上がりの中での骨盤・股関節の評価や骨盤底筋群のアプローチの一例を学びたい方が是非動画をご覧ください!

おわりに

 これからも解剖学や運動学、実技だけではなく、臨床で必要な思考過程も含めて共有させていただきます。同じ嚥下障害に悩む患者様を担当されているセラピストの皆さんに一人でも多く知っていただき、一緒に嚥下障害を治療していく仲間が増えることを私達摂食嚥下チーム一同願っております。また一人でも多くの皆さんに知っていただけるよう、私達の活動を応援していただけると幸いです。今後も摂食・嚥下アシスタントレポートを宜しくお願い致します。

ごあんない

姿勢&嚥下4回コース開催!!

摂食嚥下について興味・もっと深く学びたいと思った方は、脳外臨床研究会の摂食嚥下セミナー講師の小西がお送りする学びのコンテンツへ⬇


動画購入にて下記の有料ページにて動画閲覧可能です↓

ここから先は

728字

¥ 500

今後も摂食嚥下障害で苦しむ方をサポートする為に! 皆さんの臨床で役立つ摂食嚥下の情報を発信していきますので、宜しくお願いします!