家づくりにまつわること(10):コストパフォーマンスの良い家とは?
工事費と紐づけられて語られやすい「コストパフォーマンス」について考えてみたいと思います。
家づくりにおけるコストパフォーマンスは「減額」に焦点を当てがちですが、過度に追求するとあまり良くないように思っています。
パフォーマンスはそのままにコストを下げるこの考え方ではなく、コストはそのままに計画や工夫によりパフォーマンスを良くすることをベースに考える当社の志向によります。
この投稿では、その中身についてシェアしたいと思います。
◉パフォーマンスはそのままにコストを下げる一般的な志向を考える
住まいのコストパフォーマンスを考える時に「デザインや性能の割に安い」という表現を良く目にしたり、耳にしたりします。
例えば、ハウスメーカーや工務店では標準仕様として自由な位置に大きな窓を設けられる、免震構造を採用して耐震等級3を取得できる、ZEHや長期優良住宅を取得できるといったことが工事費の割に実現できるということがアピールの一つとされています。
これは国や専門機関が定めるわかりやすい基準というパフォーマンスに対してコストを下げる努力をする姿勢にあります。平均値よりも安くする。それは決して簡単なことではなく、誰かしらにストレスを与える考え方であるとも言えます。
確かに一定の基準や自由を安価に得られることは、建て主にとってメリットではありますが、本当に必要な性能かどうか、また性能を規定しても現場でそれが実現できているかということは建て主の多くが意識できていません。
つまり、比較的適正な家づくりがしにくい考え方であり、結果的に工事費の不透明さを印象付けているようにも感じています。
◉そもそもコストパフォーマンスとは何か?
この用語を三省堂大辞林 第三版で検索すると
①要した費用と、そこから得られた成果との対比。コンピューターシステムの評価に用いる。
②支出した費用に対して得られた満足度の割合。
と出てきます。
②をベースに家づくりに合わせて定義づけると工事費+設計費という家づくりの総費用に対して得られる満足度の割合ということになります。
どうやらこの満足度の正体が解明できれば家づくりにおけるコストパフォーマンスを説明できそうです。
◉満足度の指標
満足度とは何でしょうか?
個人の感覚によって多少の違いはありますが、デザインや計画が
・自分の生活スタイルにあっている
・快適にスペースを使用できる
・無駄なスペースがない
・温熱環境に不満がない状況
を実体験できた時に得られる感覚のことだと考えられます。
前述のように、例えばあるハウスメーカーは高性能を売りにウレタン吹付け断熱や免震構造を標準性能としているとします。これは面積や階数関係なく採用されます。
しかし、1年通して比較的気温差の小さい東京や大阪でウレタンの吹付け断熱ではなく、グラスウールをしっかり気密を考慮して施工し、実体験として温熱環境に不満がない状況では満足度は下がるでしょうか。
グラスウールに対してウレタン吹き付け断熱のメリットは「断熱厚に対して比較的性能値が高いこと」、「気密性が高い」、「施工が容易」であることです。一方でメリットは「コストが比較的高い」、「専用の機械を使用するため場所により施工できない場所がある」ということです。
性能値は計算により同じにできる上、気密性や施工性は工事監理の精度によりカバーできる範囲であるため、わざわざウレタン吹き付け断熱を採用する必要がないと結論づけられます。また、免震構造にしても、平屋にもかかわらず標準性能として採用することには疑問が残ります。
これらをまとめると住まいを『適正化』する行為により、コストパフォーマンスの理想に近づくことになります。
それぞれの項目は設計で指示される性能が過剰・不足していないかということを設計者との会話量と検討量によって適正にしていく行為が求められます。
つまり、住まいづくりにおけるコストパフォーマンスとは設計者との会話量と建て主の積極的な参加に比例するということが言えそうです。
そして、このことがコストの適正化にもつながることは言うまでもありません。
この投稿では、標準という言葉は平均値と安心を言葉として捉えられますが、その裏にあるコストや施工性については適正ではない場合があり、バランスの取れたものではないことを書きました。
その一つ一つを丁寧に適正にしていくには建て主の積極的参加が必要なのです。
私はハウスメーカーを家づくりのパートナーに選ばれた方には、できるだけ建築について勉強するよう勧めています。
ハウスメーカーのように利益追求型ですと、設計者との会話量と検討量がどうしても少なくなるからであり、以上のことを踏まえるとご理解いただけるかと思います。
そして、量より質が重要視される近年では、家づくりのあり方もより丁寧な設計過程へと変わってきていると思います!
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