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今「生きることができない」状況に直面する外国人がいる。鈴木江理子さんインタビュー

望月優大

新型コロナウイルスの感染拡大に伴って日本で暮らすすべての人の暮らしに大きな影響が出ています。様々な国での経緯からわかってきたことは、危機の前から社会の中にあった所得や生活、権利の格差が、危機の中でさらに増幅されて現れているという現実です。リスクは誰に対しても平等ではなく、「どれだけ持ち堪えられるか」は元々持っていたものの差に大きな影響を受けるということです。

日本はここしばらくの間、様々な政策や仕組みを作ったり利用したりしながら、低賃金の外国人労働者の活用を大きく進めてきました。その当然の結果として、外国籍者の中では様々な形態の非正規雇用など不安定な労働に従事する割合が日本国籍者に比べてかなり高く、(元々そうだったのですが)今も全体の中でより脆弱な状況にあることが想像されます。

長引く危機の中で、雇用や生活の現場ではどんなことが起きていたのか。そしてこの状況を切り抜けるために必要な支援や社会資源は十分に揃っているのか。国士舘大学教授で移民政策に詳しい鈴木江理子さんにお話を伺いました。鈴木さんはNPO法人移住連(移住者と連帯する全国ネットワーク)の副代表理事も務めるなど、現場での支援や政策提言などの領域でも活動されています。

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なお、インタビューの内容は4月23日にリモートでお話した時点のものとなります。インタビュー後にあった変化については注記などで反映しました。

「生きることができない」という状況

――日本には様々な業種で働いているたくさんの外国人の方がいますが、今どんな影響が見えていますか。

労働に関して言うと、外国人はやはり間接雇用の割合が日本人と比較して非常に高くて、雇い止めや派遣切りの問題が大きいです。

とりわけ日系人は間接雇用の比率がいまだに高くて、景気変動の影響を受けやすいというのはリーマンショックから変わっていません。留学生も、同国人のコミュニティなどを通じて間接雇用で働いている人たちはもう2月の後半ぐらいから影響を受けています。

外国人の側からしても、日本語が十分にできなかったり日本社会についての情報がない場合には、派遣などに頼った方が仕事を見つけやすいというのもあるんですが、やっぱりそういうところから切られていきます。

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(写真提供:移住連)

小売りなどのサービス産業では、深夜や早朝などコンスタントにアルバイトを見つけづらい時間帯を派遣に頼っているところもあって、そこに中国とかベトナムからの留学生などが働いていることがあります。例えば24時間営業が短縮されたりすると、彼ら彼女らが派遣で働いていた夜勤のところから切られていくわけです。

しかも3月は春休みで、週40時間(通常は週28時間)働くことができるので、留学生にとっては、ある意味アルバイトシーズンでした。この時期にがんばってアルバイトをして、翌年のための生活費などを貯めようと考えていた留学生にとっては混乱が大きくなっています。

外国人は日本人と比べてサービス産業で働く比率がより高いという特徴があり、別表2(以下※を参照)の就労に制限のない人たちも多く働いています。飲食店とかホテルの清掃、ベッドメイキングも多いので、観光関係が打撃を受けると仕事もなくなって、いきなり解雇という形だけではなく、まずシフトを減らされるというのは2月後半ぐらいから聞いていました。オリンピックの延期が決まる(3月24日)よりも前からです。

(※)入管法上の在留資格は大きく「別表1」と「別表2」に分類され(加えて、入管特例法上の在留の資格「特別永住者」があります)、別表2の在留資格――「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」、「定住者」――には就労に関する特別の制限がありません(業種や転職、労働時間など)。その他の在留資格、例えば「技能実習」や「留学」、「技術・人文知識・国際業務」、「家族滞在」などは別表1に含まれ、就労に関して何らかの制限があります。

――すでに収入の激減や生活の危機に直結する広範な影響が出ていますね。

外国ルーツの子どもたちの保護者の方は、突然学校が休校になっても、日本人の保護者以上にすぐに新たな預け先を見つけることが難しくて、とても大変な思いをしています。

子どもをみるためにアルバイトなどの仕事を休んだり辞めたりせざるを得ないということも起きていて、日本人の大変さプラスの様々な困難があると思います。また、休校で家庭学習するといっても、日本の学校教育を受けていない保護者の場合、日本語の問題もあったりして、子どもの勉強をみてあげることも難しいです。

それから、日本人の大変さと外国人の大変さの違いの一つは、在留資格によって仕事に制約があることです。例えば、「技能」の在留資格で料理人として働いている場合、経営不振でお店が閉店になってしまった場合、次の就職先が見つかるまで、コンビニでアルバイトをしたり、労働力不足が報じられている農業や介護などで働いたりすることは認められていません(※)。

(※)インタビュー後(4月30日)に、新型コロナの感染拡大によって解雇や自宅待機、勤務日数・時間の短縮といった状況にある方にはアルバイト(資格外活動)の許可を可能とする旨の文書が出入国在留管理庁から発表されました。「新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による雇用状況の悪化のため解雇、雇い止め、自宅待機等となった方について

あるいは、技能実習生で、実習先で本来の職種とは違う仕事をさせられていた場合、それを訴えて、本来の職種に該当する新しい実習先がみつかるまで待機していることがあるんですが、その場合は在留資格が「短期滞在」になるので働くことができないんです。しかも、「短期滞在」だと住基(住民基本台帳)に記載されないので、このままでは、今回の10万円の現金給付も対象外になってしまいます(※)。

(※)4月20日の総務省事務連絡「200420特別定額給付金(仮称)事業に係る留意事項について」にもとづく。

――自分の責任ではなくても在留資格が理由で働いてお金をやりくりしたり現金給付を受けたりすることができない状況に陥ってしまう場合があるということですね。

出国準備で「短期滞在」になったまま帰れなくなって生活困窮という人も多いです。これまで「技術・人文知識・国際業務」や「技能」など、専門的・技術的労働者の在留資格で働いていて、たまたまこの時期にその仕事を辞めた人や、留学や技能実習が終わった人が、出国までの期間、「短期滞在」に在留資格が変更され、帰りのチケットを購入していたにもかかわらず、コロナの影響で足止めになっている人もいます。ちょうど、卒業の時期と重なっていますし。

――そういった様々な相談は全国から届いていますか?

はい全国です。「生きることができない」という状況に直面している人が少なくないです。家賃が払えず、住居を失い、住むところがない、食べる物もない、日々の生活ができない。留学生が卒業して大学の寮を出てしまっている場合、友人の家を転々としていたり。

いつものことなんですけれども、宗教団体などが早期にシェルターを準備したり、食料品などの生活必需品をパッケージに詰めて困っている人たちに送ったりしています。政府からの特別給付金があってもそれを待っていられない状況の人たちも多いので、寄付を募って、現金給付を始めた団体もあります。

政府の支援策は使えるのか

――政府の支援メニューはどうでしょうか。

都道府県の社協(社会福祉協議会)が実施主体となっている生活困窮者自立支援制度については、これまで、自治体によって、外国人については「永住者じゃないとダメ」とか、「留学生でもOK」など、運用が異なっていたんですよ。そこで、全国の移住連会員からの声を受けて、担当省庁である厚労省に要請した結果、日本人と同様に、外国人でも対象になることが確認できました。

省庁交渉

過去の省庁交渉の様子(写真提供:移住連)

社協を通して利用できるものが大きく分けて3つあります。それは生活福祉資金貸付、住居確保給付金、一時生活支援事業という3つなんですが、在留資格に関係なく、要件を満たせば利用可能だという回答を、文書で得ることができました。

上記3つの詳細につきこちらを参照。移住連「新型コロナウイルスの感染拡大に伴い生活に困窮する外国人への支援策について(要請および厚労省からの回答)

ただし、だからと言って、各社協の窓口でその通り運用されるかどうかはわからないので、運用されていないという事例があれば、改めて周知を求めるなどしないといけません。各地の現場に、外国人に対してもこれらの制度が使えるんだということを伝えていくことも重要です。

――国籍に関わらず様々な支援制度が社協を経由して広く使えるというのは、元々そうであったことが今回改めて確認が取れたのか、このタイミングで厚労省の通達や運用自体が変わったのか、どう捉えると良いでしょうか。

以前から、別表2の就労に制限がない人に対してはほぼ大丈夫だったと思います。ただしそれが徹底されてなかった地域もありました。その一方で、別表1の人については、例えば専門的・技術的労働者の多くは、雇用を前提に在留資格が認められているので、「そもそも生活には困らないでしょう」ということで、支援の制度を使うこと自体が想定されていなかったと思います。

留学生も在留資格認定証明書が発行される時点で、学費や生活費などの支弁能力がチェックされているはずなので、「支援なんて必要ないでしょう」とみなされていたと思います。けれども、実際には「アルバイトしなければ生活できない」留学生が多いということは暗黙の了解で、そのことが今回の事態で改めて明らかになったのではないでしょうか。

今、こういった支援制度の情報を必要とする当事者に伝えるための多言語化をしているところなんですけど、多言語化をしても窓口での申請や説明は日本語が基本ですから、かなりハードルが高いと思います。だから、各地の当事者コミュニティだけでなく、支援団体にも伝え、「こういった制度があるから活用してください」、「必要に応じて一緒に随行してください」とお願いしています。

移住連による多言語版の「新型コロナ対策特別給付金 案内・申請書のご案内」及び「新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A

――リーマンショックのときは日系人に対する帰国支援金ということを政府はやりました。最近では不要になった技能実習生に強制帰国をさせる企業の問題もあります。そういった「日本から出て行けば?」というような動きは今回もありうるでしょうか。

今回の事態が最も特殊なのは、出入国が非常事態だということです。国境が閉じてしまっているわけなので。要らないからといって帰すこともできないんです。それは収容も同じです。そもそも収容施設は送還のための一時施設なんですね。でも出国ができない状況の中ではその役割も違います。

だからリーマンショックとの大きな違いというのは、少なくとも国境が閉ざされている状況の中では、今ここにいる人たちでやっていかざるを得ないということです。これまで日本というのは、日本だけではないかもしれませんが、「国民」ではない外国人や移民に対しては、「好ましくない」という判断による排除が可能だった。でも今は、国境が閉じているから、物理的な排除はできないんです。

もう一つ、感染というリスクがありますよね。国境から排除しなかったとしても、誰かをいろんなセーフティネットから排除すればより弱い立場になります。より弱い立場ということは感染リスクを高めるんです。感染リスクを高めれば結果的に感染拡大が生じて終息がより遠のいてしまう。そういう点でも、社会全体としてこぼれ落ちる人を作ってはいけないんです。

医療へのアクセスと無保険の問題

――その意味では、やはり今一番重要な社会資源の一つは医療だと思うのですが、保険などとの関係で医療へのアクセス自体が難しい状況の人もいますよね。

保険を持っていれば体調に異変を感じたら病院に行けます。でも保険がない人というのは、平時でも相当ひどくならない限りは病院に行きません。とても高い医療費が請求されてしまいますから。ましてや在留資格のない非正規(滞在者)の人はそうです。

コロナウイルスのPCR検査に関しては、移住連で厚労省に確認したところ、感染予防法に基づき、国籍や在留資格の有無にかかわらず公費負担なのですが、PCR以外の検査に対しては公費負担ではないので料金がかかるんですね。それで無保険の人にはかなり高い金額が請求されてしまっています。

――無保険だとPCR検査以外の部分が全額自費になってしまうわけですね。

例えば3万円かかっても保険に入っていると3割負担ですよね。じゃあ保険に入っていないから3万円かと言うと必ずしもそうではなくて、自由診療扱いになるので、保険適用の場合は1点10円のところ、病院によっては1点20円~30円で設定しています。したがって、無保険の場合、1点30円で9万円を請求されることもあるんです。だからちょっとした風邪でもかなり高くなります。

――高額療養費制度も使えないから上限もないですしなかなか簡単に病院には行けないですね。

そうなんです。だから病気の初期に行っていれば、症状も軽く、低額で済んだはずの医療費が、市販の薬などではどうすることもできないほどひどくなって、ようやく病院に行ったりするので、結果的に何百万とかかるような手術をしなきゃいけないということもあったりします。

コロナウイルスに感染したかもしれないという場合に最も医療につながりにくいのは非正規滞在の人たちです。病院では本来業務である医療が優先されるので、非正規の人が病院に来たからすぐに通報されるわけではありません。

この解釈は、国会での質問主意書に対する答弁書でも明言されているんですが、それでも不安はあると思います。だからこそ、その点については大丈夫なんだということを伝えていく必要があります。

――非正規滞在の方が無保険であるというのは理解しやすいと思うのですが、正規の在留資格がある人で医療保険に入れていない人もいますね。

日本人でも、無保険の人がいるのと同じですね。ただし、その数や割合はわからなくて、すごく前の外国人集住都市会議での調査ではかなり高かったんですね。自治体によっても違ったんですが3割ぐらいはあったと思います。日系人に特徴的な雇用が間接雇用なので、それで高く出たんだろうとは言われているんですが、その頃に比べると、かなり改善されてきているとは思います。

住民基本台帳に記載されている外国人であれば国保の対象になるんですが、今でも保険に入っていない外国人はいます。本来だったら社保(社会保険)が適用されるべき人たちが、社保に加入できていないということも少なくないです。

働いている場合には社保ですよね。社保と国保(国民健康保険)を比べたら、事業主が半額を負担してくれる社保の方がお得なはずなんですが、社保に入っていない人もいます。社保の対象であるにもかかわらず、入っていない、入らせてもらえていない人の割合は、日本人よりも多いのではないかと思います。

「雇用主に、社保に入れてほしいとちゃんと言った方がいいよ」って言うんですが、雇用主の側から「でも保険料結構大変だよ、病気にならないでしょ、入んなくていいよ」とか色々丸め込まれて、結局、社保に入れないままの外国人は少なくないです。本人たちにとっても確かに保険料で1万円とか手取りが減ってしまうので、納得させられてしまうこともあって。

――特に企業側が支払いの負担が増えるから保険に入れるのを嫌がるパターンがあるということですね。

嫌がる企業は多いですね。とりわけ飲食店とかのサービス産業では、大手チェーン店ではかなり改善されたとはいえ、社保に加入させていないところはいまでもあります。フルタイムの従業員でも入ってない。それである社長さんと話したときに「いや日本人だって入ってないんだから」って言われたんだけど、そういう問題ではないはずです。

様々な制度から排除される非正規滞在者

――非正規滞在者の方の中には入管施設に収容されている方や在留資格の無いまま仮放免という状況の方もいます。特に収容施設内での感染リスクが高いという状況の中で、これまで移住連も関わって政府に対して様々な要請をされてきたと思いますが、現状を教えてください。

仮放免の方についてはすでに出頭が免除されています。当初は緊急事態宣言が出された7都府県にある収容施設のみでしたが、今は全国に宣言が出されているので、すべての収容施設で同様の対応になっています。あとは収容されている人たちなんですけれども、今次々と仮放免されているようです。

牛久の収容施設でも10人、20人という単位で仮放免されていると聞いていますが、ただし、いまだに残っている人もいます。難しいのは、受け入れ先がある人はいいんですけれども、ない人もいます。収容施設は3密の最たるところなので一律で仮放免が出るといいんですが、そうなったときにじゃあ居場所があるのかという問題です。宗教施設などが住居を提供したりもしていますが、3密を考慮すると限界もあります。

あとは、保証金が支払えない人もいて、支援者が立て替えたりしているんですけれども、すでに一人でかなり立て替えている人もいて、全員が仮放免されると誰が立て替えることができるのかと。緊急事態対応ということで、保証金いらないよとか一律5万円とかにしてくれればいいのですが、今でも20万円とかの保証金が求められているようです。

――施設内での感染リスクを下げるという目的からすると保証金のところで歯止めがかかってしまうのはどうなのかとも感じるんですが、そこは変わっていないんですね。

聞く限りはですね、私もすべての人の保証金の金額を聞いているわけではないので。ただ人によって保証金って本当に違うんですよ。結構低い金額で仮放免される人もいれば、30万円とかっていう人も普通にいます。

――仮放免された後の生活資金をどうするのか、暮らしの保障をどうするのかという問題もありますね。さっき説明くださった様々な福祉の制度や10万円の現金給付に対しても在留資格の無い非正規滞在者の人は基本的にアクセスがない状態です。

そうです。だからこそ、私は10万円の特別給付金というのは非正規の人も対象にすべきだと思っています。人権という意味でも感染症予防という意味でも「すべての人」にした方がいいと思うんです。

――そう思います。

旅行者で足止めされている人たちだって、生活の困難に直面しているかもしれない。適切な生活環境が整えられることで、結果的に感染リスクが低減され、感染の拡大を抑えられ、終息も早められるのだから、私は「すべての人」というところにこだわっています。

――在留特別許可(非正規滞在者の合法化)についても要請の中に入っていますね。

今この国の中にいる人たちで力を合わせるしかないというときに、特定の人たちを在留資格のない不安定な状況に置いておけば、先ほど懸念を示したようにコロナの感染の疑いがあっても医療機関にアクセスしないかもしれません。彼ら彼女らが安心して医療機関にかかれるようにするためにも、やっぱり合法化ということは非常に重要なことだと思っています。

この機会に再度、彼ら彼女らがなぜ長期に渡って収容されながらも帰国を選択できず、日本にい続けることをこれほど強く求めているのか、それぞれの特別な事情を改めて考慮し、柔軟に在留資格を与えるということを検討してほしいと思っています。

日本人の家族がいる人、日本で生まれ育った子どもがいる人もいます。日本人と一緒に日本の学校に通っている子どもたちもいます。合法化されれば働ける人たちもいます。合法化することでその人たちの持っている力を生かしてもらうこともできます。

一方で、非正規の人たちの中には、長年に渡って過酷な労働をしたり、長期に収容される中で心身が壊れてしまっている人もいます。だから、働けるといった「有用性」のみを訴え、「役立つ」ということだけを強調してしまうと、「役立たない人はいらない」ことにもなってしまうので、その点は、注意して主張しなければいけないと考えています。

けれども、合法化されれば少なくとも病気になったときに適切に医療にアクセスすることができる。そうすれば適切に治療ができて、感染症の拡大を防ぐことにもつながるわけです。

漏れ落ちた人を市民社会で支える

――社会の中から一部の少数者を制度的に排除してきたあり方を変えなければいけないですね。

移住連はネットワーク組織なので、直接支援ということは、原則していないのですが、この状況の中で、移住連としても基金をつくって、生活困窮者に対して現金を配るしかないんじゃないかという議論をしています。切羽詰まった、どうしようもできない状況を見ているので(※)。

(※)その後、実際に移住連として新型コロナ「移民・難民緊急支援基金」を立ち上げ寄付の募集を開始。こちらのリンク先からぜひ支援を。

本来は公的な枠組みですべての人を支えてもらうのが一番いいんだけれども、それでも漏れ落ちてしまう人たちがいるならば、その人たちは市民社会が助けるしかないんですよ。そして、その実績を見てもらいながら、公的な部分で支援してもいいんじゃないかと気づいてほしい。

それはまさに日本語教育と同じなんです。日本語教育ってずっと市民社会が、ボランティアで支えてきたんですよ。以前は公的な支援も何もなかったんです。それを積み重ねる中で、少しずつ自治体がそうだよねということで日本語教室を支援したり、国もようやく日本語教育と言うようになってきた。

公共性がある、だから公的な部分で負うべきだという主張はしつつも、今漏れ落ちている人を支えることは市民社会にしかできないんです。だから市民社会で実績を積んでいく。

そうすることを通じて、「非正規滞在」とか「仮放免」というと、イメージとしてはとてもネガティブかもしれないけれど、入管法に違反してしまっただけで、犯罪者ではないんだということ、私たちと同じ人間なんだということ、この人たちが日本で暮らすことは決してマイナスじゃないんだということ、そういうことが伝わっていけば、社会が変わるのかなと思います。

――政府の変化を引き起こすためにも市民社会の側が率先して動く。

彼ら彼女らの存在を認めること、彼ら彼女らの生活を支えることは重要なんだと、そういう市民運動の力が大事です。例えばフランスでは、非正規移民を飛行機で送り帰そうとした時、同乗した市民がシートベルトを着用せず、送還を阻止したという事例があります。そういう力っていうものを見たときに、ああ流石だなと思う。それは、市民の力で社会を変革した経験をもつ国の力なのかもしれないけど。

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(写真提供:移住連)

私は学生たちに、自分で判断する力を持ってほしいと思っています。間違ってる、おかしいと思ったことには声をあげることができる人間になってほしいと伝えています。

よりよい社会があると思うのならば、自ら動くことで、社会を変えることができるはずだ。変化に対するそういった信念がない限り、この非正規の問題というのも、いくら移住連とかいろんな団体が細々と議員さんや担当者のところに行って交渉したとしても、一個人や一家族を合法化することはできても、今8万以上いる人たちの課題を解決することはできないと思います。

あるいはもっと言えば参政権の問題にしても、私はおかしいと思っています。外国人には参政権がない。少なくとも地方参政権については、地域社会で一緒に暮らしてるわけですよね。今では住民基本台帳にも一緒に載ってるわけですよ。それにもかかわらず、地方参政権に向けた政治的な動きといったものが、2000年代の最初の頃でぱたっと途切れてしまっています。

一方で、国も自治体も、こんなに多文化共生、多文化共生と言っているのに、参政権には言及しない。多言語情報の方はどんどん進んでいっていますが、なんかすごく馬鹿にしているような気がします。もちろん多言語情報の発信は有用ですし、必要なことだと思いますが、本当の意味で対等になろうと思ったら、参政権とか、あるいは国籍条項の問題をきちんと解決していかないと。そういったことに対して声をあげるのは、やっぱり市民の力じゃないかな。

――鈴木さん、今まさに起きていることから、より底流にある本質的なところまで、幅広く貴重なお話聞かせていただきありがとうございました。

鈴木さんたちの活動を応援するには

鈴木さんが副代表理事を務めるNPO法人移住連では、10万円の給付金の対象外の方や新型コロナの影響で生活に困窮する方に対して、1人あたり3万円の現金給付を行うための基金への寄付を募っています。ぜひ以下のリンクで詳細をご確認のうえご協力ください。

この基金の目的は、移住連の会員団体等のネットワークを通じて、「特別定額給付金」の対象外もしくは生活に困窮する移民、難民、外国にルーツのある方に現金給付による経済支援を行うことです。(上記サイトより)

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この記事は今まさに進行している「新型コロナ危機をどう捉えるか」を考えるためのインタビューシリーズです。すでに公開している大西連さん、稲葉剛さんのインタビューも合わせてお読みください。本記事中でも触れられた「生活福祉資金貸付」や「住居確保給付金」についての話題も各記事で出ています。

このシリーズは色々な仕事の合間を縫いつつ手弁当でやっておりますのでぜひ応援・サポート・シェアのほどよろしくお願いします。

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望月優大

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