ネットワーク効果PayPay

QRコード決済プラットフォームの競争戦略分析~PayPay~

PayPayについては以下で概要をまとめました。

プラットフォームビジネスで作用する効果などを説明しつつ、PayPayがいかにしてビジネスを拡大しているのか?について、分析したいと思います。

プラットフォームビジネスとは

プラットフォームビジネスの代表例としては電話やゲーム機などが挙げられます。電話の場合は、通信基盤を提供するプラットフォーマー(NTTドコモ、au、ソフトバンクなど)とその通信網を利用したいユーザーとに分けられます。ゲーム機の場合は、ゲーム機本体を提供するプラットフォーマー(ソニー、任天堂など)とソフトウェアの開発メーカー(スクウェア・エニックスなど)とユーザーとに分けられます。ゲーム機のようなプラットフォーマーがある商品の供給側と需要側の双方にプラットフォームを提供することから、特に、ツーサイドプラットフォームと呼ばれます。

ネットワーク外部性

プラットフォームビジネスは利用者が増えれば増えるほどプラットフォームが成長するという特徴を持っています。それが、ネットワーク外部性である。ネットワーク効果とも言われています。

ネットワーク外部性は、プレーヤーが増えれば増えるほどプレーヤーが増加するように働くことです。電話の場合、ユーザーが増えれば通話できる相手が増えるので電話に加入するユーザーが増えると言えます。最も最近はどの電話会社でも他社の電話に通話可能なのでその限りとは言いづらいところではありますが。

ツーサイドプラットフォームの場合、サイド間ネットワーク外部性というものもプレーヤー数の増加に影響します。一方のサイドのプレーヤー数が増えると他方のサイドのプレーヤーもそれが影響して増加することです。ゲーム機の場合、豊富なゲームソフトウェアがゲーム機を購入するユーザーが増え、ユーザーが多いプラットフォームにはソフトウェアを開発する会社が集まりやすいということです。

余談ですが、ゲームソフトウェアのドラクエやファイナルファンタジーと言ったソフトウェアはキラーコンテンツと呼ばれ、数ではなく、それ自体があることでネットワーク外部性が働くというものもあります。これはアクセス価値が高いと表現されます。

プラットフォーマーのお仕事はネットワーク外部性が働くように、自分のプラットフォームに対して、マーケティング活動を行って、プラットフォームを育てる必要があります。

PayPayのネットワーク外部性

ネットワーク外部性とマーケティング活動をPayPayに当てはめてみます。

PayPayの場合、プラットフォームはPayPay、供給は店舗、需要は消費者となります。まずサイド内のネットワーク外部性を考えたいと思います。

ネットワーク外部性
店舗のネットワーク外部性は、店舗間の紹介や商店街単位での推薦が挙げられます。ほかの商店や小売りが導入することで、参入への心理的障壁が取り除かれることや導入が遅れることによる機会損失への恐れと言った心理的な面でのネットワーク外部性が働きそうです。後者については一部サイド間ネットワーク外部性が働いているとも言えます。
消費者のネットワーク外部性も店舗側とほぼ同様で、口コミによる使用への心理的障壁の低下が挙げられます。また、PayPayはあまり知られていませんが、個人間送金も可能なので、PayPayユーザーが増えることで個人間送金がしやすくなるので、消費者ユーザーが増加するといった効果もありそうです。
正直なところ、同じ消費者同士、店舗同士でのネットワーク外部性はPayPayの場合は低いのではないかと考えられます。

サイド間ネットワーク外部性
PayPayの場合、サイド間ネットワーク外部性が大きな作用をもたらします。店舗が増えることにより、消費者が増える。消費者が増えるとプラットフォームを利用する店舗が増えるという循環が起こります。この正のサイド間ネットワーク外部性がPayPayを大きくさせることになります。

マーケティング活動

マーケティング活動サイド間ネットワーク外部性は勝手に働くかというとそうではなく、最初に火付けが必要です。そのための活動がマーケティング活動になります。

PayPayの場合はわかりやすくキャッシュバックが第一に挙げられます。このキャッシュバックは消費者側が目立ちますが、実は店舗側にも行っています。導入してもらったところには導入費用として14000円をプレゼントしています。

店舗側には実際に小口法人担当営業が店舗を一軒一軒回って導入をお願いしています。これも実は効果的です。他のQRコード決済サービスでは回ってないような本当に小さな町のお店に一軒一軒回っています。単純接触効果と言って、ただ会っているだけで高感度があがるというものです。

他にも店舗側には導入コスト0円、条件次第で即日入金、来年9月までは利用料無料というようなメリットを対面で提示することでとりあえず導入を促しています。

クレジットカードなどのキャッシュレス決済を導入する場合、小口小売の場合、導入コストよりも重要なのは金回り、キャッシュコンバージョンサイクルなのです。現金決済を行っている場合、売ったらその場でキャッシュを手に入れることができます。材料の購入は法人間取引なので買掛で月末や翌月以降の締め日にまとめ支払うという形になります。現金決済の場合、お金を払う前に現金を手に入れることができるのです。クレジットカードの場合はこうはいきません。売掛金が発生し、現金の回収までに2か月~3か月程度の時間差が発生することになります。その間の買掛金ようはツケの支払いのために現金を準備しておく必要が出てくるのです。PayPayの場合はこの問題を解決しているために導入がしやすいといえます。

ネットワーク外部性とマーケティング活動のまとめ

まとめると以下のように図示することができます。

チキンエッグ問題の解消

プラットフォームビジネスの場合、ここまで書いたような店舗と消費者の相互作用による成長とその相互作用を働かせるための栄養補給、マーケティング活動が重要です。では、最初に店舗と消費者どちらを作ればいいのでしょうか?鶏が先か、卵が先か、これがチキンエッグ問題です。

PayPayの答え
PayPayの答えは、すでにある需要基盤を借りてきて、自プラットフォームビジネスの供給基盤を作るということです。

ブリッジ戦略によるレバレッジ
プラットフォームビジネスにはブリッジ戦略というものがあります。他のプラットフォームと提携を結んで他のプラットフォームの需要や供給を取り込み、自社プラットフォームにてこの作用のようにレバレッジを掛けるというものです。

PayPayには同じグループにアリババという超巨大ペイメントプラットフォームがいました。そのアリババのアリペイの顧客基盤を使って自プラットフォームの供給、店舗に対してサイト間ネットワーク外部性を働かせたのです。

アリペイに対応できると爆買いする中国人観光客に対する便利な支払い方法を提供することができます。これによってビックカメラなどの家電量販店や薬局、飲食店チェーンに導入を進めることができたのではないかと推察されます。

また、最初から小口小売店ではなく大手小売店を攻めていることで、大きな供給基盤をサービスローンチ時に準備できています。

ブリッジ戦略によるレバレッジでチキンエッグ問題を解消し、供給基盤の確保、需要層の創出、供給基盤の拡大と順を追った施策でPayPayは拡大していっています。

PayPayの課題

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