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OpenData2.0をCivicTechがもたらした2020年

まだ2020年を振り返るには4半期も終わってなくて早すぎるのだが、確実にタイトルのことが言えると思う。

政府においてもこれまでオープンデータの取組はなされてきたが、多くのケースの場合、直裁に言ってしまえばデータを公開するという「形」だけでその本質的な意味は社会的にも理解されていなかったと思う。だからこそ未だにPDFなどによるデータ公開が多く、機械可読な形での公開が少ないという現状がある。今回のコロナウィルスに関する感染者に関する情報提供や、企業の無償等サービスの検索サイトを通じて、整理されたデータを公開すると何が可能となるのかということが社会にもわかりやすい形で示されたのではないか。データだけ公開されても理解されないが、それがウェブアプリケーションとして使いやすい形でプレゼンテーションされたことで市民にもその価値が理解可能となった。

そのムーブメントを今支えているのは政府ではなく、各地のCode forのCivicTecherであり、ITを使いこなす市民である。国や自治体はそのムーブメントを支持し、拡散することでそこに信頼性を担保している。各地のCode forが作成したサイトが続々と自治体のオーソライズを得ているのはその姿を表している。このような国と市民との新たな関係性のあり方は、今後の日本にとって重要な財産となるだろう。

また、同時多発的なCode forの動きは、オープンソースのソフトウェア開発環境に支えられている。つまり、オープンデータの次にはその情報を提供するソフトウェア自体もオープン化し、皆が参画して編集できることが、先人の知恵をベースにソフトウェアをクイックに進化させることに繋がっている。オープンデータ→オープンソースソフトウェアという流れは、パブリックサービスの開発のあり方を次の次元にもたらした。ソフトウェアとセットでのオープンデータの活用をOpen Data2.0と呼ぶとすれば、それは上記のようなオープンソースの開発環境によってもたらされたと言っていい。

これまで民間サービスの世界では、ITエンジニアがオープンソースソフトウェア開発にコントリビュートし、ソフトウェアを発展させてきた。テックジャイアントの多くがオープンソースにコミットしているのも、このようなソフトウェア開発エコシステムをリードしていきたい、それをリードすることが、自社のサービス開発のスピードを上げ、マーケットシェアを拡大することにつながると考えているからだろう。

日本のパブリックセクターにもやっとそのオープンソースの活用が訪れたが、それを牽引したのは官僚でも、自治体職員でもなく、市民そのものだったのだ。このようなオープンソースの活用に関する方法論は、行政機関の今後のソフトウェア開発の中でも活かしていくべき考え方だろう。

また、今回のシビックテックの動きは現在の行政機関の動きに対するアンチテーゼでもあると考える。国民が求めているものは何かを素早く察知し、それに反応していくことが求められている中で、素早く形にしていくことが期待されている。だからこそ今回のCode forをはじめとする対応に支持の声が集まっている。たとえ行政側にソフトウェア開発の能力が現状はないとしても、そのような姿勢は持てるはずだ。

行政機関はユーザーである国民にとってどのようなサービス、体験を提供したら良いのかを察知し形にすることが苦手であることを持って「お役所仕事」と言われることが多いわけだが、この現状を変えていかなればいけない。ユーザー中心主義を行政に持ち込んでいくことが必須であるということを自戒も込めて噛み締めたい。



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