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家屋への対ミサイルシェルター設置率が低すぎる日本、なんとかできない?

大阪市会でシェルター議案提出。可決される。

令和4年9月28日、大阪市会で自民党の大阪市議らより「国民の命と安全を守るためのシェルター設置の推進を求める意見書案」という議員提出議案が提出されました。

内容としては、諸外国に比較して、極端に普及率の低い日本国のミサイル落下を考慮したシェルター設置を推進するよう、国へ求める意見書です。

目下のロシアによるウクライナ侵攻では、首都キーウ周辺などに連日ミサイルが撃ち込まれニュースで流れておりますが
全く他人事ではなく、日本もまたウクライナとは逆側の東部でロシアと国境を面する国家です。
また連日の北朝鮮によるミサイル発射は大変な脅威です。
「日本海に落下」と軽く報じられ、皆様慣れてはいけないものに慣れつつあるのではないでしょうか?
これは漁民など日本国民を危機にさらす、許しがたい暴挙です。
事前に軍事演習などとして近隣国了承の上、避難させたところに打ち込む話ではないのです。
一方的に発射していることは、大変危険な行為であるとの認識をお持ちください。

大阪市会「国民の命と安全を守るためのシェルター設置の推進を求める意見書」全文

議員提出議案第26号
国民の命と安全を守るためのシェルター設置の推進を求める意見書案

本案を別紙のとおり提出する。
令和4年9月28日
大阪市会議長 大橋一隆 様

提出者
前田和彦 川嶋広稔 加藤仁子 太田晶也
────────────────────────────────────────
(別 紙)
令和4年9月 日
衆議院議長参議院議長
内閣総理大臣総務大臣
国土交通大臣防衛大臣
内閣官房長官
大阪市会議長 大橋一隆

国民の命と安全を守るためのシェルター設置の推進を求める意見書

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反として断じて許されるものではない。
現在もなお、東部・南部の主要都市や港など拠点への爆撃が継続され、無辜の民間人も犠牲となっており、半年が過ぎた今日もまだ停戦には至っていない。

一方、日本を取り巻くアジア情勢も日々緊迫化を増しており、近年、北朝鮮は断続的にミサイル発射を展開し、本年5月に日本海に向けて短距離弾道ミサイル3発を発射したほか、
大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)等ミサイル開発も高度化するなど脅威が増している。

また、中国はロシアとの間で軍事・外交面において緊密な関係性を深め、8月には弾道ミサイル5発を日本の排他的経済水域(EEZ)に発射、9月にはロシア軍との大規模軍事演習時に、艦艇6隻による機関銃射撃が日本海で実施されるなど緊張感が高まっている。
こうした情勢下、日本が他国から軍事的侵攻を受けない保証はなく、今後、防衛力の強化、国家安全保障の確立などが急務である一方、万が一の有事における他国からのミサイル攻撃に対しては、国民の命を守る避難所の設置について真剣に検討しなければならない時期に直面していると言える。

ロシア軍事侵攻時において、ウクライナ国内各所に設置されていた大規模シェルターは、ウクライナ国民の命と生活を守る重要な拠点機能としての役割を果たし、実際に多くの民間人の命を救ったことは言うまでもない。軍事侵略されたウクライナのように、
ミサイル着弾に備える世界の主な国のシェルター普及率は、韓国(ソウル市)は323%、スイスとイスラエルは100%、ノルウェーは98%、アメリカは82%、イギリス67%となっている。
一方、我が国においては、国民保護法に基づく全国の「緊急一時避難施設」は94,125か所であり、そのうちミサイル攻撃から身を守るために有効とされる地下施設はわずか1,278か所のみで、シェルター普及率はわずか0.02%に過ぎない(2021年4月時点)。
よって国におかれては、有事の際に我が国における国民の命と安全を守るため、シェルター設置の推進に向けて、早急に検討を進めることを強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

https://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/result/pdf/2022giin26.pdf

まったく対応シェルターの整備が進んでいない日本

シェルター普及率は、韓国(ソウル市)は323%、スイスとイスラエルは100%、ノルウェーは98%、アメリカは82%、イギリス67%とのことで、対して日本のミサイル対応のシェルターといいますと0.02%というのですから、皆無に近い現状があります。

あまりにも少ないため、国家的に支援し普及率高める必要はあるように思います。
もちろん予算の優先順位という話もあるでしょうが、いざというときの備えであり、軽んじていい話とも思えません。

日本の普及率は異常に低い!? 政府も本腰を入れ始めた「日本のシェルター最新事情」

日本の核シェルター普及率0.02% ウクライナ侵攻で問い合わせ急増


そもそもも耐震対策からして間に合ってない日本のお粗末

今回の議員提出の意見書は、共産党のみ反対で可決されることになりました。
私としては上記の通りで、北朝鮮や中国のミサイルた幾度も日本のEEZ(排他的経済水域)に着弾していますし、北朝鮮の弾道ミサイルにいたっては日本列島を超えたりもしています。これは日本国民の命を危険に晒す行為ですから、軽んじていい話ではないはず。

しかし、ミサイルシェルター以前にやることあるだろうという考えも確かに一理あり、そもそも木造家屋の多い日本はその防災対策がまだまだ遅れており、今後進めねばなりません。

このあたりの問題、防災シェルターによる対応について、以下の本を参考に読ませていただきました。

『耐震シェルターがわかる本』
耐震シェルター普及会・企画、前田邦江・著
https://book.gakugei-pub.co.jp/gakugei-book/9784761526528/

いろんな各種「耐震シェルター」の商品と施工例が紹介されており、参考になりました。
なかなか木造家屋を一気に耐震基準満たす建物へ改築、新築とはいきませんが、一部屋を耐震シェルター化する工事で、もしものときの倒壊に備えるというものがこの「耐震シェルター」です。

この書籍によれば、なかなか進まない耐震工事の理由としていくつかの項目が挙げられています。

補助が受けられない
自治体は補助の対象に一定の基準を設けており、その基準に外れた物件は受けられないということです。
長屋住宅では住民全員の承諾が必要とか、確認申請された建築物などの条件が付くこともあるそうですが、建築基準法が無かった時代の木造住宅では確認申請はありませんし、ほとんどは大工が設計して建てたもので、補助制度の条件に沿えない古い木造住宅こそ耐震工事が求められているはずなのに、条件がバリアになって利用できないことがあるのだそうです。

また、そこに住むかたは高齢で収入も少ないことが多く、本来ならそういったそこにこそ補助の手が差し伸べられるべきなのに、置き去りに。
逆に基準を満たして補助を受けられる層では、経済的な基盤がある上に補助が受けられるという「逆さまごと」が起こってはいないか?と筆者は問いかけます。

そこで、補助に頼らなくてもやれる費用負担の少ない方法を模索したものがこの本になります。

具体的には家屋の1部屋を防災部屋としてシェルター化し、そこへ逃げ込めば、とりあえず家屋倒壊から身と守れるというもので、
各社からこの種の建設商品が販売されているのです。


大阪府、大阪市の耐震工事補助制度

では、大阪府、大阪市の耐震補助制度がどうなっているのかご紹介します。

大阪府の耐震対策
住宅・建築物の耐震化について

https://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_kikaku/kikaku_bousai/
木造住宅の耐震化について
https://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_kikaku/kikaku_bousai/mokuzou.html


「その他の対策」として、「耐震シェルター」も想定されているようで、各社の耐震シェルター商品紹介へのリンクもあります。

ただし、府HPによれば、府の支援は各市町村を通してのものとのことで、詳しい条件は各市町村ごとによるそうです。

大阪市の耐震対策
民間住宅の耐震化の促進

【民間戸建住宅】耐震診断・改修補助制度パンフレット(PDF形式, 1.85MB)
https://www.city.osaka.lg.jp/toshiseibi/cmsfiles/contents/0000256/256544/2022_kodate_pamphlet.pdf


こちらは大阪市都市整備局、耐震・密集市街地整備受付として、大阪市住まい公社が出しているチラシです。


こちらはまたちょっと違う内容で、空家利活用改修補助というのがあり、これにも耐震補助があります。




大阪府市は耐震工事にいろいろ補助事業をやっておりますので、まずは役所に相談に行ってみる価値はあると思います。

しかし上記を細かく読んだかたはお気づきかと思いますが、課題もあります。
あくまで「耐震診断」が条件になっており、ここを費用出せないような家屋こそ対策急務なのではないでしょうか?
前田邦江氏『耐震シェルターがわかる本』で指摘されていた問題がまさにここにあり、このあたりの補助をもっと拡充し、支援の対象者を増やしていく取り組みが必要かもしれません。

耐震シェルターと耐ミサイルシェルターは対立概念では無いはず

ここまで見てきたように、現状でも耐震シェルターへの補助制度はありますが、ミサイルに耐えることを目的としたシェルターへの支援制度は用意されていません。

「ミサイル防衛の前に耐震」と切り分けるのではなく、これは同時に支援しうることで、むしろ部屋型シェルターの普及にプラスとなり
結果として地震対策にもなるのではないかと思うのです。
当然に、ミサイルに耐えうるシェルターは地震の倒壊にも耐えうるわけですから。


部屋型の核シェルターも最近注目されており、しばしばニュースになっています。

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国として、部屋型シェルターへも支援し、結果的に普及しコストが下がることで、あらゆる防災に強靭な国へ変貌することは決してデメリットではないはず。
これは自治体レベルでなく、国家レベルで支援していいのではないでしょうか?
あらゆる災害について、「もしものため」の対策をすることが防災です。
政府としても一考いただきたい話です。

もちろん、上記で挙げたように、耐震診断費の公費助成もなんとかして、補助へ繋げることが必要です。これも自治体財政でなかなか無理なら、国家的事業として取り組むべき課題のはずです。

「どちらか」でなく「どちらも」私は対策をしていくことが求められていると感じています。

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