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プロセスの上で踊るのか、はたまた踊らされるのか ~ リサーチ・ドリブン・イノベーション発刊にあたっての想い①

4月20日に初の著書『リサーチ・ドリブン・イノベーション;「問い」を起点にアイデアを探究する』が翔泳社より発売されることになりました!

安斎との共著であり、また東大の研究員として取り組んできたインテージ社デ・サインリサーチグループとの共同研究もベースになっている書籍です。

3月頭より予約もスタートし、ありがたいことに、初日にAmazonの本の人気度ランキングで1位に入りました!

これまで大学時代を通じて、数多くの商品開発のプロジェクトに携わらせていただき、またミミクリデザインでは、組織開発のプロジェクトも多く経験させていただきました。また安斎始め、ミミクリ・ドングリの多くのメンバーと探究を進める中で、CCM理論を中心に、より創造的になるためには何が大切なのかを考えさせられる日々を過ごしてきました。

出版にあたって、さまざまな取り組みの中で感じた新しい何かを生み出すことの難しさや困難さを起点に、この本に込めた想いを3つの視点で皆さんに紹介していきたいと思います。(3本に分けて紹介します)


プロセスの上で踊るのか、はたまた踊らされるのか

デザイン思考という言葉も一般的なものになってきた現代、日々新しいメソッドが生まれ続けていると言っても過言ではないほど、何かを生み出すための新しい”道具”が世の中にはあふれています。

またそうした方法は、まるでこれを使えば成功間違いなし、とまで言わんばかりの謳い文句が添えられていることも少なくありません。(この本もそうした印象を受ける方もいると思います)

確かに良い道具を用いることは、成功へ近づくための大切な1つの要素ではあります。しかしながら、日々セミナー等をやる中で感じるのは、こうした道具に踊らされてしまっている人が増えているのではないか、という危機感です。

大学院時代の私は、後輩が主に取り組むプロジェクトの設計を数多く任されていました。当然後輩たちには良い成果を出してもらいたいと考え、どうしたらより良いアイデアを生み出せるのか、さまざまな方法論に触れては取り入れてみることを繰り返していました。

それらしいアイデアは生まれますし、後輩たちもある一定程度まではしっかりと結果を残してくれます。しかしながら、プロセスを作り込めば作り込むほど、自分の予想を超えてくるアイデアを生み出してくれることは少なくなっていくのです。やらされている状態に陥ってしまうこともあり、成果は出ていたとしても、本当にこれが後輩たちの成長につながっているのか、プロセスに成果を生み出させているだけになってしまっているのではないかと、悩むことが多くありました。

ミミクリでも、プロジェクトのほか、セミナー等でさまざまなプロセスを紹介しています。中でも意味のイノベーションに関しては、研究している人が少ないこともあって、一専門家としてその要点やデザイン思考との違いを度々紹介しています。

しかしながら、これを学べば大丈夫、という伝え方をすることには常に葛藤を感じ続けてきました。手順通りに進めて形になっていくことの面白さもあることは間違い無いのですが、この進め方であっているのかを常に気にするばかりのプロセスが、人間にとって創造的であるとは思えないからです。


メソッドや方法論とは何のためにあるか?

この本の中で、一つのキーワードとして「創造的自信」という言葉を取り上げています。IDEOの創業者であるトム・ケリー氏とデイビッド・ケリー氏著『Creative Confidence(邦題:クリエイティブ・マインドセット)』の中でも語られているように、創造的になるためには、自らの創造力に自信を持つことがとても大切になります。

一方で、さまざまな方法論で溢れかえる中で、どのプロセスが「正解か」にばかり目がいってしまい、かえって自信を失っている人が増えているのではないでしょうか?デザイン思考の具体的手続きをまとめたトム・ケリー氏とデイビッド・ケリー氏が、自信を失ってまで正しく方法論を使うことにこだわって欲しいと考えるとは到底思えません。

本書籍では、創造的自信に基づき、それを後押しする存在としてさまざまなデータを用いて新たな方向性を探索していくための方法論として、リサーチ・ドリブン・イノベーションという考え方を紹介しています。

しかしながら、こうすれば大丈夫というような正解のプロセスを示すことは意識していません。そのため、この本を買ってそのままプロセスを再現すればイノベーションが起こせるのか!と期待される方には、あまり相性がよくない書籍になっているかもしれません。

(最も誰もがイノベーションを起こせるプロセスが存在していたとしたら、それによって生み出されるものが果たしてイノベーションと呼べるかは怪しいのですが)

本書籍の中で紹介しているのは、さまざまな方法論を組み合わせ、作り手自らが創造的に、創造的なプロセスを構築していく「羅針盤」となるようなものです。そこに関わる人々が、自らの内なる創造性を発揮し、そこから誰もがみたことがないような新しい何かが生まれてくる。さまざまな方法論をそのための"道具”として使いこなし、人々が主体的に踊るプロセスをもっと社会に実現していきたい。そんな想いでこの本を執筆しました。


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次のnoteでは、データを活用したプロセスの中に存在する"わかること至上主義"という観点で書籍に込めた想いを紹介していきたいと思います。


また合わせて安斎の記事もぜひご覧ください!


みなさんからいただいた支援は、本の購入や思考のための場の形成(コーヒー)の用意に生かさせていただき、新しいアウトプットに繋げさせていただきます!