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Kimono Kirumono Cycle PROJECT

新企画【Kimono Kirumono Cycle PROJECT】について

衣類の廃棄や製造過多などで環境への配慮に対し長らく問題視されているアパレル業界
その問題解決は当然容易ではなく、各方面で様々な取り組みが行われているが現実的に地球規模での結果をだそうとすると法を巻き込んだ強制力のある方法や大資本の力を伴わないことには難しい。極端な方法を選ぶしかなくなるとファッションとしての可能性も狭める可能性も考えられるので、理想としては業界全体としての意識の変化を促し、消費者にまで意識を浸透させていくことのできる方法を持続していくような各社の取り組みが増えていくことではないかと思う。

現在はどんな取り組みが行われているか。わかりやすいものだと
・リサイクル素材(落ち綿を使ったリサイクルコットンや同様なナイロン、ペットボトルなどの再生利用)の活用
・古着などの二次流通市場の活性化
・リメイクなどの既製品の再生企画
・完全受注生産

このあたりがわかりやすいかと思う。ただこれらは安易に環境に優しいかと言われるとまだまだ疑問が残るし、製造業の観点から見ると別の問題もあるように感じざるを得ない。あちらを立てればこちらが立たずというやつである。
 たとえばリサイクル素材は通常の素材作成よりも当然コストが必要になるわけで素材の原料が無駄から作られる面ではゴミは減るが各コストはあがるし、その素材を作るためにゴミを作り出すなんて本末転倒なことにもなりかねない。   
 二次流通市場は新しい服の製造量が多い大量生産にも支えられ、安価で購入できるものが多く成り立っている(一部の希少品は別)ので完全受注生産が絶対となれば生産量も減少し、その分市場に出回る数も減る。二次流通のメリットである低単価もなくなる。ただ、欲しくても変えなかった人が購入できるチャンスは変わらず生み出せる。
 リメイクに関しても同様に、既存の素材となる商品(古着や古着物など)があり、それら材料となるものが格安であるがゆえ成り立っている。ここも材料が底をつけば制作自体が難しくなり通常品以上の価格になっていくはずで循環型とは言い切れないし、なによりモノのリメイクやリサイクルは製造側の新たな仕事がどこかで減少したりなくなることにもなる。
 そもそも何かを作るということはエネルギーが必要で、効率化を図れなくなればコストはあがるし、ものである以上耐用年数や寿命が存在するのでゴミが0にはならない。

 一番良いと思える答えは、個々がモノを大事に長く使うことでゴミが排出されるまでの期間を長くする

これこそが重要なのではないかと思う。
となると大切なのは素材の強度であったり、修理すれば長く着れることであったり、デザインとしても飽きないもの、体型の変化にも対応できるもの…

そこで今回01u10が目をつけたものは『着物』である。
着物は日本の伝統ある衣類で、庶民から武家・お偉い方まで貴賎関係なく着用していたもので(様式や素材は違えど)
生地は着尺幅共通で作成され体型もカバーできる衣類である。解いて洗って作り直すことも出来て、本来はミシンなどの動力も極めて必要ない手仕事が主となる衣類でもある『循環型』を地で行くものが日本には元々存在している。
着物であればリメイクがあるという声もあるかと思うが、リメイクではカバーできない部分がある。それは
・材料(生地)の新規製造
・和裁士の仕事の確保
大きくこの2点がすっぽ抜ける。少なくとも自分が見てきた中でこれらを含みながら活動されている方にはお会いしたことがない。つまるところリメイクは新しく着物の反物を作り出す必要がない。そしてミシン縫製工の仕事は生み出せても、着物を製造する本来の技術者の仕事にはならないということ。

ではこの『着物』を基軸に01u10として循環型を求められる世界にどのようにアプローチしていくか。それが今回の企画の主となる『cycle』にある。
着物は伝統服でありこんなにメリットがあるのに利用される範囲が限定されているのは、格式や着用時の面倒さ・高価な値段があると思う。なのでソコを一旦無視してメリットに目を向けると

・サイズの調整できる自由度がある
・手縫いの為、縫い解き時に生地を痛めすぎない
・縫いを解き反物(生地)に戻せる

これらである。長く着用可能となりゴミとなるまでの期間を長く取れ体型の変化にも対応する。着物の設計や本来の製造技術がそれを可能にしている。
 そうとなれば、このポイントを利用して『洋服』も作ってしまってはどうか。手縫いを主に据えた洋服である。さらに解き反物に戻せることも活かし『洋服』から『着物』の造り変えも可能にして『着物』から『洋服』への造り変えも可能に…まさにサイクルし続ける衣類を企画してみた。着物は基本的に生地に必要以上の裁断をいれない直線で作られる服である。そのため服にするためにはデザインはかなり制約がかかる。そこは01u10の企画力やデザイン力の見せ所であり縫製する技術次第で解決する。

この企画の簡易な概要は下記(詳細は後日UPする販売ページなどにてお伝えする)

・着尺巾でのデザイン・企画
・着物・洋服の仕立てとそれらの作り替えによる衣類廃棄問題への挑戦
・播州織りによる生地の企画・販売
・和裁士・和装の技術の認知度UP
・生地産地の可能性の模索

このサイクル企画のメリットは

・『着物』と『洋服』のサイクルが可能であること
・サイズの制約が少ないので多くの人が楽しめること
・新たな仕事を産み出しながら進められること
・日本の伝統的な技術を守れること

これらがある。

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↑↑↑着物の状態

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 ↑↑↑コートの状態

 誤解を招かないように言うとリサイクルにリメイクや洋服をつくること自体にも当然メリットがある。ただこれは弊社以外でも多くの方が行われていることであるし、あらためて01u10が行う必要もないと考えているので
今回の企画はブランドのテーマである『循環』を考えたときに現時点で出来る最大限の環境配慮のものと思う。日本という国に生まれたからには着物という文化はなくなって欲しくないこともある。実際現状のままだと和裁士という職人・その技術は10数年でいなくなってしまい、その技術の継承は困難になって消え行く可能性が高いそうだ。ロストテクノロジーというやつである。さらに協力いただいている生地産地の西脇地区でも同様に機屋という生地の製造元も減少の傾向が強い。

 正直に言うと弊社の規模では世界を変えるという大きなことは言うことはできても実現は出来ない。できることはこの小さな企画を通して一人でも多くの人に問題点やその解決方法を独自の視点でお伝えすることくらいである。そして日本特有の文化である着物という財産に触れるきっかけの一つになれば有り難い。
 その一例として今回のサイクルする企画を立ち上げた。洋服としての着用スタートでもその服が着物にサイクル可能という事で着物文化を意識するきっかけになり得るし、現時点では誰も踏み込んでいない部分であるので採算は考慮していないけれど、まずはこの企画や商品に触れて誰かの何かのきっかけを作り出すことの一助にでもなればうれしい。
 企画した独自の着物は伝統文化のソレとは異なり邪道とも受け取られると思う。あくまで『着るものとしての着物』を考えて企画したものであることをご理解いただければ幸いです。


最後に

この企画に際して協力頂いている方々の紹介を。
素材開発・共同での企画進行・撮影・着用モデル
多数の方に力添えをいただいて実現・発表できたこと多大な感謝申し上げます。

・共同企画
京都芸術大学 空間演出デザイン学科 ファッションデザイン講師 
伊藤 正浩

・生地製造関連
桑村繊維㈱ 松原様
遠孫織布㈱

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・和裁・製造
株式会社後藤和裁 松井様 田村様

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・撮影関連
NORIHITO MIYAJI
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