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ローカルバスに乗って万里の長城へ 【世界旅行記009】

2012年7月23日(月) 中国 北京

北京最後の今日は、満を持して万里の長城へ。事前に調べておいた通り、徳勝門前から出ているバスに乗って1時間強。中国人の集団にまざって、たった12元(約160円)で八達嶺(万里の長城のなかでもっともメジャーな場所)へたどり着くことができた。

急勾配の坂を登ってたどり着いた先は、残念なことに便所のにおいが充満しており、心地よく景色を眺められる場所ではなかった。しかし、なにもない山のなかに切り開かれた長城のスケール感は、間近で見るとなおさら迫力満点であった。

この急勾配を登って降りる。老体でなくてもつらい。
ゆるやかなルートもあったが、敢えて激しい道を選んでみた。

行きはそこまで並ばずに乗れたバスだったが、帰りは時間が悪かったのか、想像以上の大行列。しかし、このバス以外に足はない。40分並んでようやく乗ることができた。

長い歴史とすばらしい遺産を抱える国ではあるが、現代の中国人には、いい加減こりごりしてきた。どこもかしこも大行列で、ろくに並ばない(待つことをいとわない姿勢は評価できる)。黙って人を押しのける(しれっとかなり強引に)。ゴミを平気で道に捨てる(持っていたペットボトルをごく自然に落とす様は見ていて感心する)。どこでもツバを吐く(女性でも)。

バスを待つ人々。もはや北京ではおなじみの光景。こんなに密着しなくてもと思うが……。

北京はインフラが追いついておらず、夕方になると道路も地下鉄も大混雑する。それは仕方ないとしても、わたしが見た印象では、むしろ「インフラに人が追いついていない状態」と言った方がふさわしい気がした。北京の人々は地下鉄を乗りこなしていない。機械を使いこなしていない。券売機の半分くらいは常に「Out of Service」、自動改札ではエラー音が鳴り響いている。我先にと電車に乗り込むわりに、降りる駅が近づくと満員でも強引にドア付近に移動してくる(大勢が降りる駅だと知らないのだろうか)。

これから北京は、どのように変わっていくのだろうか。皮肉にも、街のいたるところに「北京精神」と題する以下のような標語が掲げられていた。

北京精神
愛国(Patriotism) 創新(Innovation)
包容(Inclusiveness) 厚徳(Virtue)

2024年7月23日(火)のつぶやき
改めて旅日記を読むと、なにもそこまで……と思うほど、中国人への苛立ちが募っている。ローカルバスに乗って万里の長城を訪れる外国人観光客は、ほとんどいなかった。ローカルに入り込むことでわかる文化の違いがあり、それを肌で感じたからこそ、わたしはこんなトゲトゲしい感想を書いているのだろう。自分とは違うことへの興味の表れなのかもしれない。

二十四節気で大暑を迎えた今日、東京は午前8時台に30度を超え、警報が出るほどの危険な暑さが続いている。締め切りに追われるわたしは、いくつかの予定をキャンセルし、オフィスにこもって原稿執筆に集中している。

企業のメッセージを代筆するゴーストライター的な仕事をはじめて、もう10年近くになる。それでもぜんぜん慣れることはなく、書くたびに生みの苦しみを味わう。企業のトップになりかわるイタコ業のような仕事だから、モードを切り替えないといけない。「自分がその企業の社長だったら?」そんな脳内シミュレーションを繰り返すことで、世界が違って見えてくる。自分とは異なる人や社会に対して思いを馳せ、未来を妄想する。わたしにとって、とても大切な時間だ。

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Travelife Log 2012-2013
世界一周の旅に出てから12年。十二支ひとまわりの節目を迎えた今年、当時の冒険や感動をみなさんに共有したいという思いから、過去のブログを再発信することにしました。12年前の今日、わたしはどんな場所にいて、何を感じていたのか? リアルタイムで今日のつぶやきを記しながら、タイムレスな旅の一コマをお届けします。


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