仕事の中に「自分」をひと匙入れる 〜『「ジョブ・クラフティング」で始めよう』
人事・人材開発 分野に携わっていると、日々いろんな言葉に出逢います。
心理的安全性 はもはや耳に馴染みましたが、他にも、数多くありますね。DEI、リスキリング、人的資本開示、アンラーニング …… etc.
そんななか最近のお気に入りワードが「ジョブ・クラフティング」です。
出逢いは #CULTIBASELab
僕がジョブ・クラフティングという言葉を最初に意識したのは、2021年9月開催の CULTIBASE オンラインイベントでした。
メンバーの主体性発揮や働きがい向上をマネジメントするには?:ジョブ・クラフティング研究からヒントを探る
イベント開始直後には、こんな風にツイートしています。
ジョブをクラフトするという語感から意図することはなんとなくイメージできますが、当日のゲスト登壇者 高尾義明さんが紹介してくれたのは、次の定義でした。
個人が「主体的に」「変化を加え」「仕事の経験を創り上げ」る、ということ。企業目線でのキャリア自律を迫る観点とはちがって、どこかワクワク感が伴う定義です。
続けて紹介されたのが、一田憲子さんの著書『「私らしく」働くこと─自分らしく生きる「仕事のカタチ」のつくり方』からの一節。
この「自分をひと匙入れる」というフレーズが、イベント終了後も強く印象に残りました。
仕事の中に「自分」をひと匙入れる
高尾さんは、2021年11月にジョブ・クラフティングに関する著書『「ジョブ・クラフティング」で始めよう 働きがい改革・自分発!』を発刊されました。以降は、本書内の記述をもとに書き進めます。
エイミー・レズネスキーとジェーン・E・ダットンによる定義
もともと、ジョブ・クラフティングという概念は、組織行動論の研究者 エイミー・レズネスキー氏とジェーン・E・ダットン氏によって2001年に提唱されたのだとか。
提唱されてから、すでに20年以上たつ概念なのですね。
高尾義明さんによる解釈・解説
とはいえ、上の定義は頭にスッとは入ってきづらいです。
そんなわけで、高尾さんはこのように解説してくれています。
ポイントは、以下の3つだと感じます。
・主語が、「会社(人事)」ではなく「働く個人」であること
・「言われたからやる」のではなく「主体的に変化を加える」こと
・「手法」ではなく「プロセス」であること
これでだいぶ理解しやすくなってきました。
一田憲子さんによるメタファー
さらに、イメージがわくのが「自分をひと匙入れる」というたとえです。
高尾さんの著書では、提唱者の定義やご自身の解釈よりも前に紹介されていました。
このメタファーが秀逸だと思うのは、以下の点です。
・仕事を、外部にある存在ではなく口に入れるものとしている
・ゼロから作りかえずとも、ひと匙くわえることの大切さが伝わる
・「自分」の知識・経験・ノウハウなどを意思をもって入れることで、オリジナリティが出せると感じられる
・味わいの変化と喩えることで、美味しくなったり、(ときに失敗して)不味くなるイメージが湧く
おかげで、ジョブ・クラフティングがとても身近に感じられるものになりました。
キャリア自律を社員目線で捉える
ここ最近、人事・人材開発の世界では「キャリア自律」という言葉が叫ばれています。
この言葉、正論ではあるものの、どうも冷たいイメージ(突き放すイメージ)がつきまといませんか? 「自律せよ!」「しないとこんな酷いことになるぞ」みたいな……。
ただ、僕はここに強い違和感がありました。
本来、自律というのは外部から言われてするものではありません。本人の中から湧き出る内発的なものだと思うのです。
そんな背景もあり、「ジョブ・クラフティング」という概念に出逢ったとき直感的に惹かれました。「仕事の中に『自分』をひと匙入れること」というメタファーについても、キャリア自律を社員目線で捉える良い思考材料だと感じています。
(勤め先の次年度計画にも「ジョブ・クラフティング」というキーワードをそっと仕込んであります 😁)
高尾さんの著書では、概念説明の他に、「若手層のジョブ・クラフティング実践」や「シニア層のジョブ・クラフティング実践による活性化」がそれぞれ1章を割いて書かれていました。特に後者(シニア層の…)は自社でも今後まさに向き合うべき課題であり、おおいに参考にしていくつもりです。
社員目線での人材開発や組織開発に興味がある方には、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
関連情報
以前、『レヴィ=ストロース入門』で知った「ブリコラージュ」という概念も、個人の手仕事という意味でジョブ・クラフティングと親和性が高そうです。
なお、本稿を書きはじめて気づいたのですが、ジョブ・クラフティングという言葉そのものには 2021年4月に出逢っていたようです。(すっかり忘れてましたが…)
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