【建築】村上隆 in アストルップ・ファーンリ現代美術館(レンゾ・ピアノ)
2017年5月、ノルウェーでピーター・ズントー建築巡礼とフィヨルド観光を終えた私は、首都オスロまで戻ってきた。日本への帰国まではまだ数日あるので、このオスロでも建築や美術館を巡ることにしたのだ。
オスロの主要産業は海事・海運業である。以前は造船所や倉庫などの大きな施設もあったようだが、近年、市街に近い地区では再開発が行われ、現代的な商業施設やマンションが立ち並んでいる。
アーケル・ブリッゲはその一つで、地元の人にも観光客にも人気のスポットだ。今や世界のどこにでもある街並みともいえるが、ヨットハーバーもあり、楽しく過ごすことができそうなエリアではある。
アストルップ・ファーンリ現代美術館も、そんなウォーターフロントの再開発地区であるTjuvholmen(読めない...)にある。
美術館の運営は海運王の一族が設立したThomas Fearnley, Heddy and Nils Astrup財団とHans Rasmus Astrup財団により行われている。そう、この美術館は発展した海運業のお陰で成り立っているのだ。ただしコレクションは、海や海運とは全く関係ない。
先のアーケル・ブリッゲから延びるプロムナードをさらに進んで行くと、ガラス屋根で覆われた建物が見えてくる。誰が設計したのかは一目で直ぐ分かる。
レンゾ・ピアノだ!
美術館は、企画展棟、常設展棟、オフィス棟の3棟に分散して建てられている。各棟をヨットの帆のようなガラス屋根でつなぐことによって一体感を出している。
こちらは企画展棟。
アトリウムを挟んで、展示室とカフェに分かれている。
アトリウムは外光がほぼそのまま入る明るい空間である。
内部の紹介は後ほど。
ファサードは、地元の建物や造船技術などスカンジナビアの伝統的な工法を参考として、木材で仕上げている。木材だと色褪せるのではないか?という意見もあるようだが、建築家としては、雨風・潮風に晒されて風化していく様子も見て欲しいらしい。(なんかこの話、日本の某新国立競技場でも聞いたような気がする)
海側は芝生広場になっており、自由にノンビリくつろぐこともできる。私もカフェでコーヒー買って、優雅な気分で飲んでみた。
ところでこのガラス屋根、右端を見ると地面につきそうになっているが、
屋根には登れないよう、ちゃんと先端を小さな池と花壇で囲んでいた。
ガラス屋根は建物から少し張り出している。少しでも日射しを和らげるためだろう。北欧とはいえ、日射しは結構キツイのだ。
常設展棟。
アーケル・ブリッゲから続く常設展棟のプロムナード。揺らぐ運河の水面が天井に映ってキレイだ!
プロムナードの先端から振り返る。右に見えるのは人工の小さな砂浜。
普段は子供たちの遊び場だが、この日は鳥たちが静かに羽を休めていた。
こちらはオフィス棟だが、地下は常設展棟から続く展示室になっている。
オレンジ色のシェードが目立つ。この色だと、シェードを開けるか閉めるかで、建物の印象もかなり変わる。
竣工後5年が経過して、こちらの面は既に風化が始まっているようだ。
建築家はこの移り行く様を見て欲しいのか?
常設展棟とオフィス棟の間はイベントの開催も可能な階段状の広場になっている。階段はそのまま街につながる。
各棟は運河を挟んで建てられ、それぞれのプロムナードを橋で結んでいるのだが、個人的にはこの配置と距離感がとても気持ち良いと思った。
以上が建物のザックリした紹介であるが、この記事のタイトルには「村上隆」を入れている。なのでもう少しお付き合い願いたい。
建築が目的ではあったが、企画展として村上隆展「Murakami by Murakami」が開催されていた。(透明なガラスに白文字は見にくい)
メインの展示室はレンゾ・ピアノの本領発揮とも言える空間で、ガラスの屋根を通して、程良く柔らかな自然光で満たされている。
村上隆は、アニメやサブカルチャーを題材とする日本を代表する現代美術家だ。その作風には賛否あるが、海外でも人気があることは確かだ。
私も食わず嫌いであったが、今回の初めて村上作品をじっくりと見ると、ファンになったとまでは言えないが、彼の作品に少し興味が持てるようにはなった。(実際、その後何度か村上さんの展覧会にも足を運んでいる)
せっかくなので、いくつか作品も載せておく。新作だけでなく、従来からの作品も多く展示されているので、ファンにはお馴染みの作品も多いだろう。ちなみに村上さんって東京藝大の日本画科卒業なんですね。だから日本画の作風も多いのか。
菩提樹の下の69羅漢
たんたん坊:a.k.a.ゲロタン:輪廻転生
Blue Life Force, 2012
The Blessed Lion Who Nestles with the Secrets of Death and Life, 2014
赤鬼と青鬼と48の羅漢
己、超えよ時。心、咲けよ宇宙
マイ・ロンサム・カウボーイ
3m Girl, 2011
この作品、家族連れで来ていたお父さんが"彼女"の写真を真剣に撮っていた。そしてそれを冷めた目で見つめるお母さんや子供たちが印象的だった。
お花
村上ワールドに少し疲れたのでテラスで一休み。風が通り抜けて心地良い。
一方の常設展棟は、突き当りに窓を設けた展示室などもあるが、建築空間としては至って普通である。(決してディスっている訳ではないし、もし私がそのスゴさを見抜けなかったとしたらゴメンなさい)
ただしその中で重要な作品を紹介しておきたい。
イギリスの芸術家に毎年贈られるターナー賞という名誉ある賞があるのだが、1995年はダミアン・ハーストが、真っ二つに切断された牛と子牛をホルマリン漬けにした"Mother and Child, Divided"という作品で受賞した。これは当時話題(批判も含めて)になったのだが、オリジナルがあるのがこの美術館なのだ。
ここに来たら、是非忘れずに見て欲しい。
ノルウェーの建築訪問記
フィヨルドツアー
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