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建築が切り取るキリトリ風景

以前「窓」の記事を書いた。窓には採光や換気といった機能があるが、外部の風景を"切り取る"ということもできる。はその風景をより強調し、時には絵画のように見せる。窓だけでなく、床・壁・柱・天井・梁などの建築がつくるフレームにも同様の効果がある。

建築が切り取るキリトリ風景。普段は見過ごしてしまうこともあるが、改めて覗いてみると、そこには素晴らしい光景があるかもしれない。




ジェットウィング・ライトハウス(ジェフリー・バワ)

スリランカ南部の街ゴールの海岸に立つリゾートホテル。椅子とテーブルが並べられただけのラウンジが、建物のフレームにより格段に映える。ホテルに到着するとココでお茶を頂きながらチェックインするのだが、今までのチェックイン環境の中でも最高であるのは言うまでもない。


聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館(ピーター・ズントー)

ケルン大聖堂はお気に入りの建築の一つだ。何度見ても圧倒される。大聖堂を眺めるベストポジションはやはり迫力を感じることが出来る大聖堂前広場だが、それ以外であれば、この窓が挙げられるだろう。切り取り方がホント絶妙!


今治市伊東豊雄建築ミュージアム(伊東豊雄)

大三島にある建築ミュージアム。瀬戸内海の島々を巡る道中で立ち寄る人も多い。この棟は建築家のかつての自邸を再現したものだが、ここからの風景を眺めながら一息入れることもオススメだ。


青蓮院門跡

京都・東山にある天台宗の寺院。門跡とは皇族・公家が住職を務める寺院のこと。日本の建築には「庭屋一如」という考え方があるが、青蓮院でも、室内と障子が切り取る庭園とが絶妙のハーモニーを奏でていた。


タリン旧市街

中世の建造物が残る歴史地区。城壁をくぐり抜けてその地区に入ろうとした時、趣のある路地を目にして思わず写真を撮ってしまった。中世の旧市街は欧州各地にあるが、現代的な商業施設の進出により、どこも似たような景観になりつつある。タリンも例外ではない。そんな中、こんな風景が少しでも残ってほしい。


木陰雲(石上純也)

期間限定のイベントだったパビリオン・トウキョウ2021。個性ある建築家やアーティストらによるオブジェの中でも、石上さんの木陰雲は異色だった。焼き杉を使ったパーゴラは独特の景観をつくり出すだけでなく、空の青さも強調していた。


ギャルリももぐさ

美濃焼の産地である多治見市で陶芸家・安藤雅信さんが主宰するギャラリー。古民家をリノベした建物は、作品を展示すると同時に、背景として周りの風景も巧みに活かしている。ホワイトキューブとは全く異なる展示空間だ。


ルイジアナ近代美術館

この窓は、"切り取って魅せる"ということにおいて、私の中でダントツにNo.1である。建築もジャコメッティも庭園も、全てが完璧に調和している。


寿福寺

お寺や神社も好きなのだが、その中でも、山門(神社であれば鳥居)から本堂(本殿)に向かって真っ直ぐ伸びる参道が特に好きだ。もちろん参道の手前には"門"というフレームが欠かせない。


法隆寺宝物館(谷口吉生)

谷口さん独特の心地良い緊張感のある美しい建築。この光景を"キリトリ"として選ぶかは迷った。しかしこのルーバーやフレームがあるかないかでは、前庭や水盤の印象もかなり違ってくるだろう。


京都市京セラ美術館(青木淳・西澤徹夫)

京セラ美術館の中央ホールを先に進むと、リニューアル前まであまり知られていなかった日本庭園に突き当たるが、その少し手前、ドア越しに庭園が"切り取られて"見えるこのポイントこそ、京セラ美術館のハイライトだと思っている。


旧林家住宅

美濃路の宿場である起宿。その脇本陣・船庄屋を務めた林家の旧宅が一宮市に残る。大正から昭和初期に再建されたものだが、建築も庭園も素晴らしい。実はこの建物のことは全く知らず、サイクリングの途中で偶々通りかかって知った。無計画に彷徨ったからこその出会いであった。


エルプフィルハーモニー・ハンブルク(ヘルツォーク&ド・ムーロン)

ハンブルクが港湾都市であることがよく分かる展望台。あまり感動する風景でもないのだが、人気スポットでもあるので観光客は多い。この写真、私には珍しく、そんな観光客も"絵"を構成する要素として入れてみた。


瑞聖寺庫裡(隈研吾)

日本全国どこでも隈研吾。中には「???」が沢山付く建築もあるが、この瑞聖寺は良い。1757年に建てられた本堂は国の重要文化財にも指定されているが、コの字型に配置された回廊から見る本堂は、インスタ映えし過ぎて、撮ってる自分が恥ずかしくなるほどだ。


伊根の舟屋

伝統的な舟屋が並ぶ京都府伊根町。宿泊施設でもある一軒の舟屋で、何もせずただノンビリと目の前の伊根湾を眺めて過ごした。至福の時間だった。小洒落た家具ではなく、使い古した椅子やテーブル、釣り道具が置かれていたことも良かった。


蓮華寺

紅葉が有名な蓮華寺。縁側ではなく、あえて部屋の奥から鑑賞する方が断然良い。訪れたときは紅葉には少し早かったのが残念。


プリンストン大学

米国の名門大学には「自分が学生の時、こんな環境だったらもっと勉強していたろうなあ(←ウソ)」という羨ましいキャンパスが広がる。校舎を通り抜ける通路からチラ見えする中庭さえも、とても魅力的だった。


KAIT広場(石上純也)

建築技術の限界に挑戦したKAIT広場。「そのことに意味はあるのか?」という議論もあるようだが、今まで見たことがない建築に驚くことは間違いない。そして広場に寝転がって見上げれば、きっと空の美しさ感じるだろう。


ヘリタンス・カンダラマ(ジェフリー・バワ)

スリランカ中央部の森にあるリゾートホテル。階段の踊り場には「ここからこの風景をご覧下さい」とでも言うように、椅子とテーブルが置かれている。実際この場所はバワのお気に入りでもあったそうだ。


おまけ:白山洞門

コレ建築じゃないだろ!というツッコミはさておき、やはり自然の景観に敵うものはないのだ。(という強引なオチで締める)


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