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【建築】スリランカで絶対泊まるべきヘリタンス・カンダラマ(ジェフリー・バワ)

普段、海外旅行では出来るだけ安いホテルに泊まることにしているが、スリランカは例外であった。なぜなら、建築家ジェフリー・バワのリゾートホテルに泊まることが目的だからである。
そのホテルの一つ、ヘリタンス・カンダラマはバワの代表作として知られる。日本でもメディアで紹介されているので、建築に詳しくない人にとっても、スリランカ観光の目的になっているだろう。

ホテルは人造湖であるカンダラマ湖畔にある。ガイドさんの車で湖を半周し、舗装されていないジャングルの道を通り抜け、ホテルに到着したのは午後もまだ明るい時間帯であった。

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ホテルの見所:其の壱
は「岩盤を活かした建築」だ。
建設にあたって、元からある岩盤を取り除くことなくそのまま活かして、デザインとして取り入れている。エントランスもその一つである。ただし残念ながら、そこにはセキュリティゲートが設置されていた...。
実はスリランカでは2019年のテロ事件以降セキュリティが厳しくなり、特に外国人が利用する多くのホテルにはセキュリティゲートが設けられた。「設置方法を少し工夫してくれよ」と思うのだが、我々の安全を守ってくれるのだからやむを得ない。
気を取り直して仕切り直し!

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スリランカの他のホテルでも見られたが、フロントには外部との仕切りやドアはなく、半屋外空間となっている。風や雨が強い時はどうするのだろう?

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チェックインはカフェラウンジでするのだが、そのラウンジへの通路がスゴイ! もちろん飾りではなく、自然の(という言い方も変だが)岩盤である。

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ホテルは起伏のある土地に建てられているので、同じ階でも場所によって地面からの高さは変わる。エントランスでは地面と同レベルだが、同じ階にあるこのラウンジでは下に木々が見える。まるで森の上にいるようだ。

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ちなみに岩盤がむき出しになっているのは、客室廊下や...

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ラウンジ(チェックインのラウンジとは別)にもある。

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ホテルの見所:其の弐
は「森の中のホテル」
それを表す有名なアングル。もちろん実際に森に埋もれている訳ではない。

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廊下も半屋外。森が迫っているので、森の中を散歩している気分になる。

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廊下と木漏れ日が重なっている! 素敵!

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そしてほぼ100%の確率でサルに出会える。

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ホテルの見所:其の参は「廃墟のように植物に飲み込まれた外観」
実際はツタを絡ませるフレームを別に設けているので、建物がツタに侵食されるということはない。それどころか、写真をご覧頂ければ、庭もよく手入れされていることがお分かりになるだろう。

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ツタのフレームを横から見る。下の方に赤白の服を着たスタッフが写っているが、ツタの手入れをしているのだ。

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客室からはフレームとツタが額縁となり、風景が絵画のように強調される。

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ホテルの見所:其の肆
はその「額縁から見える風景」だ。
建築においては、壁に窓や開口を設けて、そこから見える風景を切り取って見せる手法が時々使われるが、ココでは柱とスラブがそのまま額縁となっている。そしてそんな場所にはちゃんと椅子が置かれている。特に大きなフクロウの彫刻下にある踊り場からの眺めは、バワもお気に入りであったとか。

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ちなみにフクロウとはコレ。バワ建築には欠かせない彫刻家ラキ・セナナヤケによる作品。このホテルの象徴でもある。

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他にも見所はたくさんあるのだが、長くなってしまうので簡単に紹介する。
まずはインフィニティ・プール。写真ではそう見えないが、プールサイドからは湖とつながって見える。

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これは別のプール。建物とツタのフレームの関係が分かり易い。

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客室廊下の階段とエレベータ。あまり言及する人がいないが、シンプルながら、私は結構好きなデザインだ。

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屋上庭園。サルがいた!(というか、このホテルはサルに囲まれている)

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その屋上庭園から見える朝のカンダラマ湖。美しい!

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このホテルは世界中から観光客が訪れるので、スタッフの対応やサービスも良い。またジャングルに埋もれているように見えるが、館内は掃除も行き届いおり、清潔でゴミも落ちていない。快適な滞在であった!

建築としては実にシンプルだ。
何棟もの直方体の建物を角度をずらしながら約1kmに渡って配置しているが、凝ったファサードがある訳ではない。インテリアも、白と黒とモスグリーンを基調としたデザインだ。
しかしバワは「ホテルの中から周辺の湖、森、山という景観を如何に美しく魅せることが出来るか?」ということに注力して設計したと思う。だからそれを邪魔しないよう、建物が主張し過ぎないようシンプルにしたのではないか?
実際、私は多いに感動した! 写真も撮りまくった! そうした写真の多くが、ホテルの中から外の景観を撮ったものであったことが、それを物語っている。

この後もバワの有名なホテルを何軒か泊まって廻ったが、私の中ではココがぶっちぎりのNo.1である。





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