
映画ロケ地巡り × 建築(ロサンゼルス編)
シカゴ編に続く映画ロケ地巡りの第2弾はロサンゼルス。
ロサンゼルスと言えば映画の都であり、当然ロケ地も数多い。しかし私の場合、そもそもそれが目的の旅ではないので、今回も、ロケ地・映画いずれにも偏りがあることをご了承頂きたい。
ゲティ・センター
石油王のジャン・ポール・ゲティが設立したゲティ財団による美術館である。彼はケチだったそうだが、少なくともアートにはお金を惜しまなかったようだ。
この美術館、ロサンゼルス郊外の丘の上にあるのだが、とにかく広い!
また作品はギリシャ・ローマ時代の彫刻から中世絵画、近代の印象派まで幅広くコレクションしており、充実している! しかも無料である!
設計はリチャード・マイヤーなので、建物が「白」なのは言うまでもない。何よりカリフォルニアのカラッとした青空には、この「白」が良く合っている。
各建物はパネルやトラバーチンが使われているのだが、いずれも30インチ(76cm)の正方形グリッドでビシッと構成されているのがとても気持ち良い。
所々にある広場からの眺望も最高だ。
ここでは「スター・トレック イントゥ・ダークネス」(2013)が撮影された。
サンフランシスコの艦隊本部という設定だが、実際にはLAだったのだ。背景がCGで描き足されているが、「白さ」が決め手となり、それと分かるとだろう。
Caltrans District 7 Headquarters
カリフォルニア交通局の第7地区(ロサンゼルス)を管轄するビルである。つまり役所なのだ。
設計はトム・メイン率いるモーフォシス。メタリックなデザインは彼の特徴でもある。穴の開いたパンチングメタルで建物全体を覆っているが、これによりカリフォルニアの強い日差しを和らげる効果があるそうだ。
建設中には「Mr.&Mrs. スミス」(2005)が撮影された。また「抱きたいカンケイ」(2011)、「ハンコック」(2008)にも登場する。
パーシング・スクエア
ダウンタウンにある公園である。19世紀からある広場であり、1992年にはメキシコの建築家 リカルド・レゴレッタの設計により整備された。
オブジェ?がレゴレッタらしい色使いであるが、ビルに囲まれた街中の公園ということもあってか、ノンビリ過ごすというような場所ではない。またあまり治安がよろしいとも言えない。
周辺のホテルや地区を含めれば多くの作品のロケ地となっているが、公園が映るシーンとしては「アイ・アム・サム」(2001)で病院に駆けつける場面や、「スピード」(1994)の身代金の受け渡し場所などがある。
サンタモニカ・ピア
昔、「来て 来て 来て 来て サンタモニカ🎵」という歌があった。「お前が行けよ!」と思うのであるが、サンタモニカと聞くとこの曲を思い出す。
それはさておき、サンタモニカ・ピアはロサンゼルス郡サンタモニカ市にある大きな桟橋である。造られたのは1909年。
桟橋の上には遊園地やお店・レストランがあり、いつも観光客で賑わっている。
こちらも登場する映画は数知れず、例を挙げれば、「スティング」(1973)、「ビーン」(1997)、「フォレスト・ガンプ」(1994)、「ザ・インターネット」(1995)、「アイアンマン」(2008)などがある。
ドロシー・チャンドラー・パビリオン
映画のロケ地ではないが、映画ファンには無視することのできないホールである。それは1999年までこの会場でアカデミー賞の授賞式が行われていたからだ。
私は青春時代の80年代から90年代にかけては特に多くの映画を観ていた。その頃の映画の話をするとキリがないのでやめておくが、当時はアカデミー賞にもそれなりに関心があった。なので個人的には思い入れのある会場でもある。
ウォルト・ディズニー・コンサート・ホール
フランク・ゲーリーの代表作の一つでもあるコンサートホールである。特徴的な外観は観光名所にもなっている。
私も好きな建築の一つであり、ゲーリーのウネウネ・グニャグニャの中でも、かなり洗練されたデザインなのでは?と個人的には思っている。
こちらもやはりLAの青空と良く合っている。
「アイアンマン」(2008)では、スターク・インダストリーズ社のパーティーシーンに使用された、その他にも「ゲット・スマート」(2008)、「路上のソリスト」(2009)などがある。
ゲーリー建築全体に言えることだが、彼の建築は背景として印象が強過ぎるため、実は意外に使い方が難しいかもしれない。
例えば「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」では、ビルバオ・グッゲンハイム美術館が、本編とは関係なく一瞬映るのだが、それでもインパクトがあった。少なくとも私には「ここ行きたい!」と思わせるものがあった。(いつか行くぜ!)
South Grand Avenue
今まで紹介した場所は、観光地あるいは建築として比較的有名である。しかし自分で紹介しておきながら何だが、ありきたりであり、ハッキリ言えばつまらない。
そこで少々マニアックな場所を紹介したい。それがSouth Grand Avenueである。
ディズニー・コンサート・ホールにも面したこの通りは、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の終盤で、スポックがカーンを追っかけるシーンで数秒映るのだが、CGで周辺の風景が描き変えられているにも関わらず、このシーンを見た時に直ぐ「あそこだ!」と分かった。ちなみに映画を観たのは、この場所を訪れて(というか通りかかって)5年後のことである。
こんな何でもないシーンで、何でもない場所に気付くのは、地元民以外では私くらいのものだろう。
ブラッドベリー・ビルディング
全く何の役にも立たない情報を「ドヤッ!」と自慢してしまったが、本当に映画もロケ地も熱く語りたいのは、トリを飾るこの場所である。
1893年に建設された現役のこのオフィスビルは、アメリカの歴史建造物にも指定されているが、特筆するほどの外観ではない。
しかし一歩中に入れば、自然光が降り注ぎ、美しいディテールが施されたアトリウムが広がる。たとえ建築に興味がない人でも驚き、見とれてしまうだろう。
この空間こそ「ブレードランナー」(1982)でタイレル社の技師セバスチャンのアパートとして使われたビルである。映画では中盤とクライマックスに登場する。
ガラス屋根の鉄骨が素晴らしい雰囲気をつくるのに一役買っている。映画ではこの上を通る飛行船が印象的だった。
映画にも登場するエレベーターがコチラ。乗りたい!(残念ながら。ビルの関係者以外は乗ることが出来ない)
この明るい空間が、映画の中では近未来の退廃的な場所として描かれているのだ。
リドリー・スコットの映画は出来・不出来が激しいと思うが、その中で「エイリアン」と「ブレードランナー」は映画史に残る傑作である。何より2作品とも映像が美しい。さすが”光と陰の魔術師”リドリー・スコットである。
このビルは他にも多くの映画やドラマに登場するが、このビルが最も美しく表現されているのは、「ブレードランナー」をおいて他にない!
以上が映画ロケ地巡り・ロサンゼルス編である。
今回のロケ地巡りは、本当は最後の2箇所だけを紹介したかったのだが、それでは薄い内容がさらに薄くなるので、格好付けるために他の場所も紹介させてもらった次第である。結果、ダラダラ長くなってしまっただけであったが...。