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【建築】青空と芝生の塩梅が絶妙なフロリダ・サザン・カレッジ(フランク・ロイド・ライト)

フロリダ・サザン・カレッジ。
美しい名前の大学であるが、訪れるまで私は知らなかった。そこにフランク・ロイド・ライト設計による校舎があることも...。




フロリダ州オーランドといえば、多くの人がイメージするのがディズニー・ワールドかユニバーサル・スタジオ・フロリダだろう。しかし私はどちらにも遊びに行かなかった。いや、ダウンタウン・ディズニーでお土産だけ買ったかな?

いずれにしろわざわざ時間をかけて訪れたのは、オーランドから車で1時間の街 レイクランドにあるフロリダ・サザン・カレッジである。その名の通り多くの湖があり、キャンパスも湖のほとりにある。(遠くにチラリと湖が見える)

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このキャンパスにある約70棟の校舎のうち、1941年から1958年にかけて建設された12棟の建物群がフランク・ロイド・ライトの設計によるものであり、「Child of the Sun」と呼ばれている。「Child of the Sun」とは、"grow out of the ground and into the light, a child of the sun."という意味らしい。

これらは同一施設におけるライトの建築群としては最大のものであり、2012年には米国の歴史建造物に指定されている。また2011年と2012年には米国の最も美しいキャンパスの一つにも選ばれている。


見学はツアーでの参加が基本となる。
まずはライト先生が自らお出迎え!

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Sharp Family Tourism and Education Center

元は教職員用の住宅として設計されたが、当初は資金難のため建設されず、2013年にツアーの拠点となるビジターセンターとして完成した。ユーソニアン様式の建物である。ライトらしく水平感が強調されている。
無駄に延びた庇が美しい。

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Annie Pfeiffer Chapel (1941年)

最初に竣工した1,000人を収容できる大きなチャペルである。幾何学的な美しいデザインであり、このキャンパスの象徴にもなっている。

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アーチ型の天窓からは眩しい光が降り注ぐ!

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壁に組み込まれたガラスから入る光も良いアクセントになっている。

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Seminars (1941年)

3棟が隣接した講義室棟。見学コースからは外れていることあり詳細不明。

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Buckner Building (1946年)

当初は図書館 Roux Libraryとして建設された半円形の建物。現在は講堂・事務所として利用されている。

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Watson/Fine Building (1949年)

ビジターセンター近くにある管理棟。

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中庭プールの反射した光が庇を照らし返す。キレイだ...。

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ここまでの紹介でお気付きの方もいらっしゃると思う。そう、ここの校舎は、ライトが考案したテキスタイル・ブロックと呼ばれるコンクリートブロックを使った工法で建てられている。

ブロックはシンプルな無地のブロックと小さな色付きガラスが組み込まれたブロックの2種類がある。寸法は同じで、これによって建設コストを抑えているのだ。

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Danforth Chapel (1955年)

小さなチャペル。屋根がシャープでカッコイイ!

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祭壇後ろのステンドグラスは、夕日の方向に向けられているらしい。

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先のAnnie Pfeiffer Chapelと並んでいる。

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Ordway Building (1952年)

元は工業実習用として利用されたが、現在は講義室・シアターとなっている。シンプルな実用的なプランで、ライトもお気に入りだったとか。

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中庭が心地良い。

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Polk County Science Building (1958年)

科学系のラボ・実習室がある。ライト様式の建築の上にパイプダクトが走り、プラネタリウムも備えている。「ミスマッチがマッチしている」という表現もあるが、違和感しか感じない。いいのかコレ?

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Esplanades

各校舎をつなぐ回廊。これがまたカッコいいのだ。場所によっては庇に大きな開口があって、日差しも雨も防げないけど、それがまた良い!

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段差がある場所の屋根の仕上げ。

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Polk County Science Buildingだけは回廊の柱がアルミ製。

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大学生の頃は芝生の広がるキャンパスに憧れた。正にここはそれを絵に描いたような風景であった。自分もこんなキャンパスであれば、授業をサボることもなく、もっと勉強していたであろう。(いや、やっぱしないか...)




この建築群「Child of the Sun」はアメリカに、いや世界に誇ることができるキャンパスであると思う。しかし実はフロリダの強い日差しと経年によって、劣化が始まっている。もしかしたらライトの設計へのこだわりがその一因になっているかもしれない。
既に修復には順次着手しているようであるが、ライトのオリジナルのデザインを残しながらの修復は多大な資金を必要とするらしい。大変だとは思うが、これからも何とかこの景観を保ってほしいと願う。




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