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最大手SIer出身者が語る、SIとSaaSの違いと未来

おはようございます。

SaaS×D2Cを運営しているSUPER STUDIO COOの花岡です。

このnoteでは、最大手SIerで4年勤めてから独立し、SaaS事業を運営している僕の視点からSaaSとSIerについて本音のぶっちゃけトークができればと思います。

これからSE/エンジニアとして働く方、既に働いていて転職を考えている方々には是非読んでもらいたい内容です。

また、何かしらの領域でシステムを導入する際に、SaaSを契約しようか、SIerないし自社開発のフルスクラッチでいこうか悩まれている企業様の参考にもなれば幸いです。

※書いていたらものすごく長くなってしまったのでタイトルの最初に結論を記載させていただきました。


ビジネスモデルで見るSaaSとSI

<結論>
・SIは労働集約の人月ビジネス、初動から黒字、低利益率
・SaaSはストックビジネス、初動は赤字、高利益率

SaaSもSIもいわゆるIT関連のビジネスですので、IT業界と一括りにされることが多く「ITって高利益率なんでしょ」とよく言われますが、SI企業とSaaS企業は全くビジネスモデルが異なります。

わかりやすいように超ざっくり表現すると以下のようになります。

■SIは労働集約型の人月ビジネス
利益:人月 - 人件費

■SaaSはサービス利用料によるストックビジネス
利益:サブスクリプション収益 - 人件費 - システム原価

いわゆる、皆さんがイメージする利益率の高いITというとSaaS型のビジネスモデルのことを指します。弊社の「ecforce」もSaaS型ですし「SmartHR」「freee」さんなんかも代表的な日本のSaaSです。

SaaSビジネスモデル

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SaaSを運営する側の視点でいうと、提供するためのシステムを開発するため膨大な開発コストが発生します。一方で、SaaSの売上は契約高の積み上げに伴うサービス利用料になりますので、数億円かけて開発したサービスの初月の売上は数万円なんてこともあります。

また、サービスは開発しただけでは売れませんので、サービスを販売するためのマーケティングコストも膨大にかかるため、初動から数年はだいたい赤字です。

ただ、SaaSの売上は契約高の積み上げによるストック収益ですので、順調にいけば将来的には非常に高い利益率になります。

ネガティブポイントは、サービスの開発に膨大な開発コストがかかるのに、事業計画の変数が多く、一定運用してみないとビジネスとして成立しているのかがわからないという点です。

結局のところサービスのLTVとCACのバランスであり、これらは運用してからチャーンレートが見えないと判断できないため、最初に開発コストをかけたにも関わらず、契約を取れば取るほど赤字を増幅させていたなんて可能性もあります。



SIerビジネスモデル

SIerはビジネスモデル観点で言うと「技術者の人材派遣サービス」であり、労働集約型のスポットビジネスです。

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SaaSは最初に膨大なシステム開発コストがかかるのに対して、SIはクライアントからシステム開発のための要件定義〜設計、開発、テストといった各工程ごとに工数で費用を請求するモデルのため、初動から黒字が見込めます。

事業を立ち上げるのに初期コストがかからないため、資金調達などをしなくても、規模を徐々に拡大していくことができます。

ビジネスモデルとしても非常にシンプルで、売上は請求する工数(単価×時間)であり、原価は人材の給料です。

プロジェクトに人材が派遣できていればほぼ確実に売上と利益が上がる仕組みなので、IT人材不足という現状を踏まえると比較的安定して成長できるモデルだと思います。

ネガティブポイントでいうと、規模の拡大に応じて人材をかかえていくことになりますので、IT人材の需要と供給の関係に大きく左右されるビジネスになっています。


利用者視点で見るSaaSとSI

<結論>
・システム開発とは初期コストより保守運用コストのほうが圧倒的に大きい
・利用者のコスト観点でみればSaaSの圧勝
・SI唯一のメリットである「自分の要件通りのシステムを開発・利用できる」ことがDX化時代においては企業をレガシー化してしまう要因
・システムを作れるSaaS企業が自社領域以外は他社SaaSを利用している事実

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SaaSは利用する側からの視点でいうと、「膨大なコストをかけて開発されたシステムをサービス利用料を支払うことで安く使うことができるかつ、その後のシステムメンテナンスにも費用がかからない。」という合理的な仕組みです。

弊社の「ecforce」もそうですし、他の有名な「SmartHR」や「freee」といったSaaSも例外なく開発費として数十億かかっていると思います。

それを月額0円〜数万円で使えるわけですので、コストメリットでいうとSIとは比になりません。

ただ既に開発されているサービスを利用するため、自分の思い通りの仕様にすることはできません。
※提供されている機能の範囲では、もちろんできます。


一方で、SIは利用する側からの視点でいうと、「膨大な初期とメンテナンスコストをかけてシステムをオーダーメイドするため自分の要件通りのシステムを開発・利用することができる」という仕組みです。


しかし、現代においてこの「自分の要件通りのシステムを開発・利用すること」が必ずしも良いことではなく、むしろ企業をレガシーにしてしまうという問題だと捉えられていると思います。


昨今の「DX化」と言われるやつですね。

昨今「DX化」というキーワードが広がっており、SaaSをどれだけ導入しているかなんて項目もあり、運用のためにシステムを開発するのではなく、SaaSに運用を合わせるというのがDX化の1つの指標にもなっている。


これはSaaS側のポジショントークでもなんでもなく、非常に合理的なお話だと僕は考えています。

「SaaSの導入=DX化」というのは、単にオンライン化されているからというのは表面的な事実だと考えており、企業としてSaaS導入の最大のメリットは時代に合わせてあらゆる機能を最先端を自動的に維持できることだと僕は考えています。

ITの歴史を見るとそれは明らかじゃないかなと思います。


「IT」というワードが世の中で認識され、大手企業からどんどんIT投資を行い、無数の独自システムがスクラッチで開発されていきました。

しかし、システムというのは一度開発されて終わりではなく、システムは企業が活動を止めるまで、永遠にメンテナンスしていかなければなりません。

そして、システムというのは基本的に人が人力でやっていたことを要件に簡略化、自動化してくれるものですので、要件が変わればシステムもそれにあわせて都度メンテナンスしなければなりません。

メンテナンスを怠ったり、時間がかかったりすると、要件を簡略化・自動化できず、人力で処理しなければならなくなります。それを繰り返すと、変化できないレガシーな企業になってしまいます。


スクラッチ開発されたシステムでは、時代の流れによって要件が変化するタイミングが訪れるたびに仕様変更として膨大なシステム投資をすることになります。

IT投資というのは「初期開発コスト」よりも「保守・運用コスト」のほうが圧倒的に費用がかかります。

これは、SaaSがビジネスとして評価されている理由でもあります。


SUPER STUDIOはSaaSを提供している企業ですが、バックオフィスの管理ツールはすべて他社のSaaSを導入しています。

弊社だけでなく、他のほとんどのSaaS企業さんも自社の領域以外は、他社のSaaSを導入しているはずです。

自分たちで作ろうと思えば作れてしまう会社たちが、他社のSaaSを契約していることがその証明です。

正直なところ、事業の根幹を担わない領域において、SIによるスクラッチ開発は基本的には割に合わないということです。


SaaSよりもSIを選んだほうが良いパターンとは

<結論>
・SaaSが参入しない領域はSIしか選択肢がない
・特定の条件を満たすビジネスにおいてはSI又は自社開発がオススメ
 ①要件の独自性が強く、要件そのものがビジネスの根幹である
 ②時流や広告によって一時的に売上が成長するモデルではなく、十年先も継続的に成長していけ、売上のトップラインが高いビジネスである。
 ③SIにかかる初期コスト/メンテナンスコストといった膨大なシステム投資をしても十分な利益率を見込めるビジネスである。

ここまでのぶっちゃけトークでは

SIのメリットである「自分の要件通りのシステムを開発・利用すること」自体が企業のレガシー化を促進するため推奨されなくなっている

ということなので、これだけ聞くとSaaSの圧勝だと思うのですが、個人的にはそういうわけではないと考えています。

要は適材適所だと思います。


①SaaSが参入しない領域は一定存在する

このケースは、SIを選ぶというより選択肢がないという話なのです。

上記のビジネスモデルでも書いたとおりなのですが、SaaSは初期に莫大な開発費用をかけてサービスをつくり、使ってくれる企業の契約高を積み上げ、利用料金で儲ける仕組みなので、SaaSは使ってくれる企業が少ない領域では成立しないビジネスモデルです。(TAMがないってことですね。)

例えば、銀行システムや行政のシステムをSaaS化するメリットがないし、政治的な意味も含めて不可能じゃないかと個人的には思います。


②特定の条件を満たすビジネス

特定の条件とは以下のようなものかと思います。

・要件の独自性が強く、要件そのものがビジネスの根幹である
・時流や広告によって一時的に売上が成長するモデルではなく、十年先も継続的に成長していけ、売上のトップラインが高いビジネスである。
・SIにかかる初期コスト/メンテナンスコストといった膨大なシステム投資をしても十分な利益率を見込めるビジネスである。

こういう条件のビジネスであれば、SIを利用するメリットは十分にあると思います。


ECシステムはSaaSを選ぶべきか、SIを選ぶべきか

<結論>
・バックオフィス系はSaaS一択
・ECにおいてSaaSとSIの検討の余地あり
・特定の条件を満たすEC以外はSaaSのほうがオススメ

SaaSとSIは適材適所だと言ってきましたが、僕は会社を経営していて本音を言ってしまうとバックオフィス系の領域については選択の余地なく、SaaS一択だと思います。

理由はシンプルで100社いれば100社同じような課題で悩むように、あるべき姿のパターンが限定的で、システムで解決しやすい領域ですし、法改正などシステムをアップデートするトリガーも定期的に必要となるためです。

バックオフィスの運用に独自性がある場合、それ自体が悪なケースが多いと思いますし、また、その独自性によって事業の将来を決めることはほとんどないと思います。


この議論になると、ECのSaaSを提供するSUPER STUDIOのnoteなので、「ECってどうなの?」って話は避けられないと思っています。笑


ポジショントーク抜きに本音を語ると、ECはSaaSが良いか、SIが良いかは絶妙に難しいです。

ここではECの中でも物販領域に限った話をしますが、バックオフィス系のSaaSと異なり、ECのシステム選定はブランド事業の将来に大きなインパクトを与える可能性が高いからです。

また、ECは要件の独自性そのものがビジネスの特徴であり、差別化要素になることもあります。

ただ、SaaSが良いか、SIが良いかの判断基準は上記に記載した観点と基本的には同じかなとは思います。

・要件の独自性が強く、要件そのものがビジネスの根幹である
・時流や広告によって一時的に売上が成長するモデルではなく、十年先も継続的に成長していけ、売上のトップラインが高いビジネスである。
・SIにかかる初期コスト/メンテナンスコストといった膨大なシステム投資をしても十分な利益率を見込めるビジネスである。

D2Cなどのブランド事業の運営などの経験を通して、この条件をブランド事業に置き換えると


「市場の大きい業界で、日本国民の大半が聞いたことのあるような認知度を取っており(取ることができ)、広告を出稿しなくてもある程度の安定的な売上が見込め、ブランドの成立に独自性の強いシステム要件が必要なブランド。」


上記のような条件を満たすブランドは自社開発することをおすすめしますし、そうでなければECにおいても基本的にはSaaSを利用することおすすめしたいと思っています。


スクラッチ開発(自社開発orSI)を選ぶときの注意点

<結論>
・自社開発orSIを入れてスクラッチ開発する場合は、どんな企業でも信頼できるCTOを絶対に採用すべき

それでも売上規模が100億を超えてきたときに、予算もあるし今後を考えるとスクラッチでシステムを開発していきたいと考えるブランドさんは少なからずいらっしゃいます。

EC SaaSを提供するSUPER STUDIOとしてはSaaSを続けて利用していただき、共に成長したいという思いはありますが、ブランドの将来は当然、運営会社が選択することですので、尊重したいとも考えています。

そのため、スクラッチ開発を意思決定される場合は、是非1点だけおすすめしておきたいことがあります。


社内を熟知した絶対に信頼できるCTOを採用

社内にエンジニアを内製するにしろ、外部に発注するにしろどちらであっても必ず社内を熟知した絶対に優秀で信頼できるCTOを採用することをおすすめします。

「優秀で信頼できる」とは、何があっても最後までやりきる責任感とやりきれる技術力、ビジネスへの理解、チームマネジメントなどの能力のある人です。

僕はマーケティング、セールスから採用、人事、ファイナンス、そしてエンジニアリングまで幅広くキャリアを得ているからこそ比較できるのですが、エンジニアリングが一番気をつけないといけないと思っています。

エンジニアリングというのは、一人で問題解決できる量に限界があるため、炎上したあとの対処が最もやっかいです。

一度着手して炎上したあとにCTOが退職したケースはもう手を付けられないほどの地獄が待っています。笑

システム開発が主軸であるSaaS企業でさえも、拡大フェーズに開発責任者が退職して路頭に迷うなんてケースも多々聞きますので、ここは本当に注意していただきたいポイントです。


また、高額の予算で開発を外注したからといって思い通りのシステムになるわけではないということも注意です。

数億の開発費を開発会社に支払って、ボツになり、訴訟問題などに発展している事案は無数にあります。


どれだけ優秀な開発会社でも、システムは要件がなければ構築することはできませんし、社内の実態を熟知した上で、システム開発のための要件定義ができる人材が社内にいなければ基本的には成立しません。

発注先にプロフェッショナルがいても、発注元に要件を熟知したプロフェッショナルがいなければ、だいたいの開発プロジェクトは炎上します。


そのため、内製でも外注でも、必ずCTOをたてて運営してくことをおすすめします。


ECにおいてSaaS×SIというハイブリッドな選択

<結論>
・SaaSとSIを掛け合わせるハイブリッドの実装方式がオススメ

ここまで、SaaSかSIかの2択で話を進めてきましたが、上記の通り規模が大きくなれば独自性が出てくることは一定避けられないこともあることはメーカーを運営しているため、僕たちも理解があります。

だからこそ「ecforce」は機能をアプリケーション化することで高い汎用性を実現することで年商100億を超えても利用していただけるサービスとなっていますが限界はあると考えています。

僕はSIとSaaSを経験し、どちらにもメリット・デメリットがあること体験していますので、双方の良いとこ取りをして共存していくことが何より大切なんじゃないかと考えています。

現に「ecforce」も大手企業様からそういったご相談いただくケースが非常に増えてまいりました。


そこで「ecforce」としてはSaaSをベースに利用してもらいつつも、ecforceのAPIを活用し、独自性の高い部分についてはSIにて中間システム側で実装するハイブリッドな方式の提供を開始しようと考えています。

この方式を活用することで非常に独自性の高いビジネスでも対応することが実際に実現できています。

現在、この取組を拡大するために技術力の高いSI企業様と提携し、このハイブリッドモデルの展開を進めております。

それに伴い、弊社と提携できるEC経験のあるSI企業様を絶賛募集中ですので、お問い合わせいただけると非常に助かります。

よろしくお願いいたします。


働く視点で見るSaaSとSI

<結論>
・「システム開発」に閉じた世界でキャリアをしっかり積みたいならSI
・「システム開発×ビジネス」と幅広い視野を持ってキャリアを積みたいならSaaS
・ジュニアレイヤーは若干SIのほうが給料高め、トッププレイヤーはSaaSが高め。
・SIで経験を積んでSaaSにスイッチするのはオススメ

最後に働く側の視点からSaaSとSIでSE/エンジニアをやるならどちらが良いか?というところについてです。

SEやエンジニアは需要と供給の関係から、人材の市場価格は上昇傾向にあります。これはSaaSやSIに限らず、業界で働く人から見るとポジティブです。


どちらで働いたほうが良いかという点においては、何を得たいか、どういう環境が良いかによって異なりますが、ぶっちゃけたお話をするnoteなので、「給料」と「スキル」について書ければと思います。

お金について

<結論>
ジュニアレイヤーはSIのほうが若干給料が高くなりがち。
トッププレイヤーはSaaSのほうが構造的に給料は高くなりがち。

SI業界というのは大手企業によって席巻されています。給料テーブルも大枠、大手企業をトップに中規模SIerへと階段方式になっています。

大手企業は年功序列であり、ジュニアレイヤーでも実力に関係なく、比較的良い給料が出ますので、アベレージで見ると高い傾向になるというお話です。

事実、僕は最大手SIerとしてジュニア時代を過ごしましたが、比較的年収は高かったと思います。


ただ、トッププレイヤーについてはSaaSのほうが優遇される傾向があり、これは冒頭に述べたビジネスモデルに強く関係しています。

結論、SIとSaaSは利益率が全然違います。

SIは人月ビジネスですので、構造的な観点から見ると会社がクライアントから請求できる人月単価を最大化し、人材に支払う給料を最小化することが会社にとって最大の利益が出る構図になっています。

そのため、請求できる人月単価が上がったとしても、支払う給料の推移が会社の利益率に大きく関係している以上、簡単に引き上げることは困難ですし、メンバーの給与上限もクライアントに提供している人月単価が限界となっています。


一方でSaaSの利益は契約高の積み上げによるストックビジネスであり、売上と人件費の依存関係はあってないようなものです。そのため、プロダクト成長が順調であれば人材への投資は積極的に行う意味があります。

特にSaaSはビジネスモデル的にも市場から非常に評価されており、大型の資金調達を実施し、成長率にコミットしている成長企業が多く存在するため、そういった企業では成長率を追うために人材への投資を積極的に行っている実態があります。

また、会社によっては優秀人材にストックオプションの付与なんかもあったりしますので、純粋に給料(お金)という観点ではトッププレイヤーにおいてはSaaSのほうが何かと優遇されているのが現実かなと思います。


仕事について

<結論>
システム開発に閉じたキャリアを積みたいならSI。(深さ重視)
システム開発を1手段として捉え、プロダクトの成長に関わるキャリアを積みたいならSaaS。(広さ重視)

システム開発という観点だけで見れば、開発工程のあるべきをしっかりと学べるのがSIかなと思います。

SIのミッションは要件を満たしている品質の高いシステムを納期通り納品することにあります。

業務内容としても基本的にはシステム開発に閉じたことをやることになります。要件定義、基本設計、詳細設計、プログラミング、試験、保守運用とさまざまな工程のプロジェクトに参画する機会があると思いますし、1つのプロジェクトで10年以上働く人もいなくはないですが、基本的にプロジェクトには終わりがありますので、プロジェクトが終われば、他のプロジェクトで他の人達と一緒に働いていくことになります。

僕自身もファーストキャリアはSI企業で金融関連の大型システムの保守・運用フェーズから参画させていただいた経験は今でも非常に役立っています。



SIに比べてSaaSのミッションはプロダクトを成長させていくことにあります。

自社プロダクトを成長させていく上で重要なプロセスの1つとして開発が存在しますので、考え方としてはプロダクトをいかに成長させるかが重要な指標になります。

一度、開発スケジュールを決めたとしても、プロダクトの成長にビジネスインパクトの大きな要件が入ってくれば簡単に優先度の入れ替わりが起きます。

システム開発を主軸としつつも、システム開発に視野を閉じずにプロダクトの成長に関係するマーケティングや業界のビジネス構造など幅広いことに興味を持てる方はSaaSのほうが向いているかと思います。


弊社も含めてSIからSaaSに転職される方の転職理由は一定偏りがあります。

お客様のためにシステム開発を行ったけど、納品したらプロジェクトが終了するので、その後お客様がそのシステムを使ってどうなったのかがわからない。

お客様のためにもっと工数をかけてしっかりしたものを作りたいけど、工数が限られているため、その範囲でできることを提案せざる得ないというジレンマがある。

これは自分自身の体験談ですが、「真にお客様のために」という価値観を大切にする場合、SIはビジネス構造上の矛盾が大きな壁になります。


人月ビジネスである以上、利益の最大化という観点だけをドライに見ると発注する側は「安く品質の高いシステムを納品してほしい」のに対して、発注される側は「工数を抑えて要件を満たしたシステムを納品したい」という関係性にあるので、どうしても精神論だけでは成立しない矛盾があります。

一方でSaaSの場合、提供する側は「プロダクトの品質を最大化したい」ですし、提供される側も「良いサービスを使いたい」という関係性にあるので、構造的には利害関係は一致しています。ただ、どうしてもN1で見ると、お客様の要望をすべて叶えられるわけではないので、個々で見るとお客様の要望を叶えられないシーンもあります。

ここはどちらが自分の価値観的にあっているか次第かなとは思います。



SIで活躍している人材がSaaSで活躍するが、その逆は成立しないかも?

僕はSIからSaaSを経験している身なので、自己体験の話ではないのですが、SaaSからSIへのキャリアチェンジは成立しないんじゃないかと個人的には思っています。

上記の通り、SIで活躍しているSEはシステム開発のあるべき姿を十分に経験してきているため、SaaSのような超アジャイル型になっても、どうすれば品質を担保できるかを効率的に取捨選択していくことができます。

また、プロダクト成長におけるシステム開発は1つの手段ですので、規模が大きくになるにつれ、システム開発に関わるスキルだけでも十分に評価されます。

現にSUPER STUDIOでもSI出身者の方々は即戦力としてすぐに立ち上がっています。


一方で、SaaSで活躍してきた人がSIにいったときには、要件定義書や設計書などのドキュメンテーションをきっちりやって、一度お客様と決めたことを途中で変えることに大きなハードルがあるような運用になるため、超アジャイルで仕事慣れしているSaaSキャリアにとってはカルチャー的にもスキル的にも非常に難しいです。

カルチャー面は吸収できたとしても、スキル面はどうやっても不足すると思います。


そのため、冒頭に書いたとおり、キャリアの軸を「システム開発」に振り切るのであればSIのほうが向いていますし、「システム開発×ビジネス」に振り切るのであればSaaSのほうが向いています。


ということで、個人的には働く側のオススメキャリアはSIで経験を積んだ上でSaaSにスイッチするのが、かなり合理的なキャリアプランなのではないかなと思いました。(もちろん、自分が楽しいかどうかが何より大切だとは思いますが。)

なので、この記事を読んでみて興味を持ったSEの方々、SUPER STUDIOへの応募を是非ともお待ちしております。笑



というところで、いろいろ経験してきた上でSIとSaaSに関するぶっちゃけトークでした。

どうしても、良し悪しはあるので中々話しづらい内容だったのですが、どちらのキャリアも非常に人材価値を高めることのできる可能性を秘めたキャリアだと思いますので、選択して損はないかと思います。


少しでもお読みいただいた方の参考になれば幸いです。


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