D2C×SaaSのSUPER STUDIOがCFO不在の中、18億円の資金調達を実行した理由
おはようございます。
SUPER STUDIOの花岡です。
この度プレスリリースを出させていただいた通り、SUPER STUDIOが第三者割当増資により18億円の資金調達を行い、新たなフェーズへと突入しました。
これからもECプラットフォーム「ecforce」の提供を通して、あらゆるビジネスのECシフトを支援していきます。
今回のリリースはありがたいことにベンチャー界隈、業界の方々から大きな反響をいただいておりまして、特にSUPER STUDIOに詳しい関係者の方々からは「ここまで大型調達してこなかったSUPER STUDIOがなんでこのタイミングで調達?!なにがあったの?」と何度も聞かれます。笑
今日の記事では、自己資本運営にこだわってきたSUPER STUDIOがなぜ資金調達を実施したのか、資金調達をする上での違和感や葛藤、苦悩など、リアルな裏側のお話しができればと思います。
興味のある方は最後までお読みいただけると嬉しいです。
順調な成長の中で感じてきた違和感
SUPER STUDIOの生い立ちでも語りましたが、元々、創業者4名は「何をやるかではなく誰とやるか」という価値観で会社を経営してきたこともあり、会社として成長して気の合う仲間と一緒に高みを目指せればいいと思っていました。(以下、参考までに前記事。)
事実としてSUPER STUDIOはクライアント様と共に成長してきた会社ですので、この「何をやるかではなく誰とやるか」の「誰」には共に働くメンバーはもちろん、実はパートナー企業を含むクライアント様も込めた意味となっています。
つまり、共に働くメンバー、クライアント様と共に成長し、高みを目指していければ良いと、ただただ考えていました。
しかし、短期間でSaaS企業としてもARRも一定額を超え、ともに働くメンバーも150人を超え、関わるクライアント様の数もどんどん増えてきたときに、メンバーやクライアント様からSUPER STUDIOに求める期待の声が日に日に大きくなっていくのをリアルに体感していました。
そんな時間を歩むことで「共に成長していけたらいいなぁ」という想いは「期待にしっかり応えて最高の環境を提供できる最高のパートナーとして共に業界をアップデートしていきたい」という一種の意志に近い使命感のようなものに自然と変わっていきました。
ただ"想い"から"使命感"に変わったことは明確でしたが、今までも全力を尽くしてきた僕たちにとって、その変化に対して具体的に何を変えなければいけないのかが不明確でモヤモヤしていました。
この「SUPER STUDIOに求められるものが変わってきた」という感覚は、僕だけが感じていたことではなく、実は創業者それぞれが感じていたみたいで、互いに自然とこの件について話し合うようになりました。
※SUPER STUDIOの創業者はそれぞれが全うしているロールが違うので、見えている景色も結構違うはずなのですが、こういう「今、この話をしなければいけないんじゃないか」というタイミングだけは創業当時から結構一致する不思議さがあります。笑
この件について最初に話し合ったのは2020年の11月頃だったと記憶しています。そこから、創業者はそれぞれ自分のスタイルで会社がどう変わるべきかということに向き合い、何度も話し合いを繰り返し、結果的に資金調達をするという結論になりました。
違和感の正体
当時の僕たちの経営に対する考えはシンプルで、売上を成長させながら、それに伴った利益をしっかり出すことが大切。
M&AもIPOもすべては成長するための手段であり、必要ならすればいいし、必要なければしなくていい。会社はその本質を見極めて適切な戦略をとっていくべきだと考えていますし、これは今でも変わっていません。
ただ、この1年で創業者それぞれが、いろいろな先輩経営者の方と会話し、その内容を創業者間での何度も話し合うことで経営者として磨かれていきました。
僕の中ではキッカケとなったのがM&A BANK代表でSUPER STUDIO社外役員の冨岡さんと、法律事務所ZeLo・株式会社LegalForceの創業者・代表の小笠原さんとの出会いでした。
冨岡さんには出会った頃からずっと以下のようなことを言われていましたが、当時は正直「ちょっと何言ってるかわからないです」という気持ちで聞いていました。笑
冨岡「D2C×SaaSという事業内容、業績、役員陣のチームワーク、SUPER STUDIOはSaaS企業としてすごい可能性を秘めている。自己資本でこれだけの結果を出している会社がなぜもっと高みを目指し、成長率を追求していかないんですか、もったいないです。」
花岡「(ん?、、、全力で頑張ってるんだけどなー。)」
冨岡「ただ、もちろん何を目指すのかは役員の意志でもあるので、それが林さんや花岡さんの目指す姿ならそれを支援します。」
花岡「ありがとうございます。」
冨岡「ただ、別の戦い方をしている人と触れてみるのも良いかと思います。」
そう言われ、冨岡さんが連れてきてくれたのが弊社と同じSaaS企業であるLegalForceを創業・運営されている小笠原さんでした。
小笠原さんはその人柄から話しを盛るタイプの人でないことはすぐに認識できましたが、そんな小笠原さんが目指している大きなビジョンを聞いたときに、僕は強烈な違和感を覚えました。
社内では誰とも会食をしないことで有名な僕ですが、自分からお願いして会話する機会をいただきました。
その時、小笠原さんに言われた一言がとても印象的で、この一言で、僕が会社が成長する中で感じていた違和感の正体に気づくことができました。
経営者は登る山を明確に決める必要がある。
要するに、登る山を決めずに全力で山を登っていたとして、よくわからない山の山頂にたどり着くことはできても、エベレストの山頂には絶対にたどり着けないということです。それは準備すべきことがまるで違うからです。
僕たちも含めどんな企業もみんな必死に頑張っているのですが、ゴールをどこにおくかで戦い方が全く変わるということです。そして、そこに正解/不正解はありません。
ここまで大型資金調達を実施せずにやってきたSUPER STUDIOはSaaS企業としての高い成長率を実現しながらも、営業利益を重要KGIとし黒字経営を意識してきたため、成長率・業績共に悪くはありませんでした。
正直なところ、資金調達をしなくても普通に成長できる自信はありました。
ただ、SUPER STUDIOは順調に成長していたが故に、明確に登る山を決めきれていませんでした。
SUPER STUDIOがメンバーやクライアント様と共に登りたいのは、よくわからない山ではなく、エベレストです。
登る山を決めたなら、準備すべきことも変わる。
つまり、会社が目指すゴールを決めたなら、戦略も変える必要がある。
成長の中で感じてきた違和感の正体は「会社が目指したいゴールに対する、戦略の不一致」であると確信しました。
僕たちがエクイティ戦略を実施する理由は2つです。
共に働くメンバーと、さらに大規模で世の中にインパクトのある仕事体験を通して、楽しみ、苦しみ、成長することでメンバーの人生をさらに豊かにしていける環境を提供する
・大は小を兼ねるが、小は大を兼ねない。
・自分たちの仕事に今まで以上に誇りを持ち、歴史に残る仕事をしよう。
どこまでも成長するクライアント様の最高のパートナーとして居続けるために、さらなる成長を実現し、業界のスタンダードになる
・DX化が進む現代において、バックオフィス系のツールとは異なりECシステムは企業の命運を分けると言っても過言ではない。
・どんな企業でも安心して選べる、選んでよかったと思える、そんなサービスになります。
それらが僕たちは根底にある「何をやるかではなく誰とやるか」という価値観を追求した結果、たどり着いた答えでした。
それが創業者間でバシッと一致し、腹落ちしたのは2020年12月で、そこからは猛烈なスピードで資金調達の実行が進んでいきました。
資金調達の活動での深い学びと反省
ここまで大型資金調達を実施してこなかったSUPER STUDIOですので、そもそも大型資金調達の計画がなく、いわゆるCFOが不在な状態でのスタートでした。
ただ、高みを目指す本質的な経営を実施してきた僕たちでしたので、会社の業績もしっかり出ていますし、さらに伸ばすための戦略も既に緻密に作り込まれている状態でした。
そのため、資金調達のプレゼンテーションでは僕たちが今までやってきたこと、これからやることを定量化/言語化し、事実をしっかりVC/CVCの方々に伝えることだったので、そこに関しては然程、難しくはありませんでした。
※タスク的な意味ではすごく大変でしたが...笑
※急な社外/社内インタビューに対応してくださったクライアント様、メンバーのみなさま、本当にありがとうございました。
今回の資金調達では多くのVC/CVCの方々と関わらせていただきましたが、出資の有無に問わず、すべてのVC/CVCの方々に本当に感謝しています。
僭越ながら、この場を借りて御礼申し上げます。
本当にありがとうございました。
業界に関する知識が乏しかった僕たちですので、全く意図せず失礼な印象を与えてしまい、ご迷惑をおかけしたこともあったかと思います。
今回の資金調達を通して業界のことも深く学びましたし、各VC/CVCによって気にする観点が異なり、様々な角度から鋭い指摘を受けることで僕たちの戦略もさらに磨かれ、洗練させていくことができたと考えています。
その中でも多くのVC/CVCの方々から言われたSUPER STUDIOの課題が印象的でした。
SUPER STUDIOは、経営的には素晴らしいことなのだが今まで効率の良いことをやりすぎてきている。
真に成長率を追っていくという戦い方に会社役員だけじゃなく社員も含めた組織全体が変われるかが焦点だと思います。
これは、本当におっしゃる通りで定量的にみてもSaaSの営業効率性(Sales Efficiency)が一般的なSaaS企業と比較しても明らかに異常な数字になっていました。
資金調達活動を通して、VC/CVCの方々から頂いたその他のフィードバックについても真摯に受け止め、現場戦略に落とし込み、メンバーと共に常に変わり続けなければならないと改めて思うことができました。
エクイティ戦略によるメンバーへの負荷
今回の会社全体の戦略切り替え方針が役員間でFIXしたのが2020年12月。そこから猛烈なスピードで資金調達を実施し、着金が2021年6月上旬と約半年で走りきりました。
流石に資金調達の見通しが経つまではメンバーたちに共有できない状況ではあったので、この戦略方針転換を社内メンバーに正式に伝えることができたのは2021年3月頃だったと思います。
メンバーのみんなからすると、「エクイティ戦略になります」と言われても、今までの戦略からやるべきことは何か大きく変わるというわけではなかったと思います。
ただ、2点、明確な違いがありました。
1. 取れる手段は倍、スピードも倍
エクイティ戦略を取り入れる前と後の明確な違いはスピードです。
今までSUPER STUDIOは上記で述べた通り、黒字経営を意識してきましたので、コスト観点での効率性を何より重視してきました。
これからはコストパフォーマンスが悪くてもスピードを出せることならあらゆることに挑戦していくマインドが求められます。
SUPER STUDIOのマネージャー/メンバーは今までコストパフォーマンスを意識させられていましたので、取れる手段が限定的ではありましたが、今後は、取れる手段が倍増する代わりに、スピードが求められるようになりました。
具体的には「リソースが足りないから間に合いません」とか「ナレッジがないから実現不可能です。」といったことで今まではスケジュール調整してきたと思うのですが、「リソースは調達していいので実現してください」というものになるイメージです。
2. KPIの性質変化
エクイティ戦略を取り入れる前は、重要な指標が営業利益にありましたが、これからはMRRの成長率になります。
今までは中長期的な成長が大切でありながらも、足元を固めるために短期にも目を向けなければならなかったのですが、これからは中長期を見据えたアクションに集中できるようになります。
この変化によって組織/メンバーに与えられるKPIの性質も変わります。つまり、今まで評価されていたことが、評価されづらくなることも意味していますし、その逆もしかりです。
これら「取れる手段は倍、スピードも倍」と「KPIの性質変化」という変化は、理屈ではわかっていても、思考の切り替えが追いつかないものですし、マネージャー/メンバーにも、多大な負荷がかかっていたと思います。
ただ、この変化についてメンバーは徐々に適用してくることで、結果的に各部署のKPI達成、D2Cプロダクトのリリース、ECプラットフォーム「ecforce」についても反響をいただいている大型UIアップデートを含めたさまざまな新機能のリリースを実現することができました。
これはメンバー一人ひとり努力が実現した結果だと本当に思っていますし、シンプルにこういうリスペクトできる仲間と働けることを嬉しく思っています。
これからもより良いソリューションを提供し、業界をアップデートしていくために力を貸してもらえると嬉しいですし、これからも共に成長していきたいと強く感じました。
まとめ
いつもより長くなってしまいましたが、以上がSUPER STUDIOが資金調達の裏側のお話でした。
まとめると
「何をやるかより、誰とやるか」という価値観で人を重視する僕たちが人(メンバーやお客様)と関わる上でどうありたいのかを追求した結果、ゴールを決める必要があることに気づき、そこにいくためには資金調達という1つの選択肢が浮上し、それが人(メンバーやお客様)にとって最適な選択だと感じたので、選択した。
そういう話です。
非常に濃い経験をさせていただいて、他にもこれから資金調達をしようと思っている方に対する有益かつおもしろいエピソードなどもたくさんあったのですが、それらを普通に書いてしまったらこの10倍ぐらいの文量になってしまいますので、またどこかでお話しできればと思います。
最後に、そんなSUPER STUDIOはARR100億を目指せるメンバーを募集しています。ご応募お待ちしております!
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以上、お読みいただきありがとうございました。
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