川崎芳勲/Yoshihiro Kawasaki

1990年生まれ/フォトグラファー/ライター/コンサルタント/講演 年の約半分は海外で…

川崎芳勲/Yoshihiro Kawasaki

1990年生まれ/フォトグラファー/ライター/コンサルタント/講演 年の約半分は海外での撮影旅。 写真大好き、でも小説書くのは三度の飯より好き。 ゆるーく小説更新します。ゆるーく見てください。

最近の記事

【小説】ハシッコから釣り糸垂らして。-第二話にして最終話-

 中学校に入学してから、理科部という何のひねりもない名前のついた研究サークルのようなものに入った。週に二日、理科の実験室を使って、好きな研究をしてもいいという趣旨があるようでない部活動だった。部員はキミとボクだけだった。だからこそ部活の活動内容は次第にスケールの大きいものにシフトしていった。  ボクたちは放課後の時間を週五日というペースで研究室にいた。地球に端っこがあることを証明するための仮説を立てて計算をし、ノートにまとめていった。学区の外に出て、自転車で走り続けるという今

    • 【小説】ハシッコから釣り糸垂らして。

      地球はその昔、平らだった。ボクらにとっては今も真っ平らだ。   ――――――  魚の形をした雲が自由に泳いでいた。いいなぁ、君はそのまま泳いでどこにいくのかな。滝から別世界へ旅立ってしまうの?  頼むよ、ボクも連れていってよ。約束ね…。  川沿いの土手に寝っ転がり、ボクとキミの頭上を泳いでいた魚はみるみるうちに積乱雲に合流して、数十分後にはボクらをめった打ちに濡らした。「話が違うよな。」と顔を見合わせながら家路を急いだ。そして翌日には、見えない雨でずぶ濡れになるのだった。

      • 【小説】置手紙は捨てられない。~ふりだしの七日目、終章~

        第一話【小説】置手紙は捨てられない。 第二話【小説】置手紙は捨てられない。~どうってことない一日目~ 第三話【小説】置手紙は捨てられない。~前のめりな旅は二日目~ 第四話【小説】置手紙は捨てられない。~想像の裂け目に落ちた三日目~ 第五話【小説】置手紙は捨てられない。~這い上がれ四日目~ 第六話【小説】置手紙は捨てられない。~蜃気楼に歪む五日目~ 第七話【小説】置手紙は捨てられない。~狂気の沙汰と六日目~  仰木は六日目を熟考することなく、七日目へと目を動かしていった。この

        • 【小説】置手紙は捨てられない。~狂気の沙汰と六日目~

          第一話【小説】置手紙は捨てられない。 第二話【小説】置手紙は捨てられない。~どうってことない一日目~ 第三話【小説】置手紙は捨てられない。~前のめりな旅は二日目~ 第四話【小説】置手紙は捨てられない。~想像の裂け目に落ちた三日目~ 第五話【小説】置手紙は捨てられない。~這い上がれ四日目~ 第六話【小説】置手紙は捨てられない。~蜃気楼に歪む五日目~ (仰木の屈折~蜃気楼に歪む五日目~について)  五日目は仰木の頭の中にひどくこびりついた。それは、世間一般のレッテルに抗い、複数

        【小説】ハシッコから釣り糸垂らして。-第二話にして最終話-

          【小説】置手紙は捨てられない。~蜃気楼に歪む五日目~

          第一話【小説】置手紙は捨てられない。 第二話【小説】置手紙は捨てられない。~どうってことない一日目~ 第三話【小説】置手紙は捨てられない。~前のめりな旅は二日目~ 第四話【小説】置手紙は捨てられない。~想像の裂け目に落ちた三日目~ 第五話【小説】置手紙は捨てられない。~這い上がれ四日目~ (仰木の嫉妬~這い上がれ四日目~について)  四日目まで読んだところで、仰木の心境は大きく変化していっていた。二日目を読んだことでただの紙切れではないことを知り、初めは監視されているような

          【小説】置手紙は捨てられない。~蜃気楼に歪む五日目~

          【小説】置手紙は捨てられない。~這い上がれ四日目~

          第一話【小説】置手紙は捨てられない。 第二話【小説】置手紙は捨てられない。~どうってことない一日目~ 第三話【小説】置手紙は捨てられない。~前のめりな旅は二日目~ 第四話【小説】置手紙は捨てられない。~想像の裂け目に落ちた三日目~ (仰木の葛藤~想像の裂け目に落ちた三日目~について)  三日目を読み返したあと、急に気分が悪くなり数日間仰木は寝込んだのだった。何かの暗示だろうか。いや、ただの偶然だろう。それでいいのだ。いや、よくはない。  偶然手にした紙切れなのだ。もとの場所

          【小説】置手紙は捨てられない。~這い上がれ四日目~

          【小説】置手紙は捨てられない。~想像の裂け目に落ちた三日目~

          第一話【小説】置手紙は捨てられない。 第二話【小説】置手紙は捨てられない。~どうってことない一日目~ 第三話【小説】置手紙は捨てられない。~前のめりな旅は二日目~ (仰木の動揺~前のめりな旅は二日目~について)  駅のホームで初めて読んだときの衝撃は忘れられなかった。雑誌を読むように一日目を流し読みし、二日目に差し掛かったところで仰木は驚愕したのだった。  二日目に突如現れたこの男を私は知っている。身に覚えが大いにあるのだった。私がよく行っていた波止場にも顔見知りの男性がい

          【小説】置手紙は捨てられない。~想像の裂け目に落ちた三日目~

          【小説】置手紙は捨てられない。~前のめりな旅は二日目~

          第一話【小説】置手紙は捨てられない。 第二話【小説】置手紙は捨てられない。~どうってことない一日目~ (仰木の考察~どうってことない一日目~について)  そうなのだ。一日目は本当にどうってことないのだ。内容もどこかの誰かのどうってことない一日のワンシーンという感じで当たり障りはない。性別はおそらく男性だろう、年齢までは断定できないが、きっと私と同じぐらいだろう。自分にも行きつけの飲み屋があり、日本酒好きなところは似ているようだ。酒造で働こうとまで思ったことはないが、素朴で真

          【小説】置手紙は捨てられない。~前のめりな旅は二日目~

          【小説】置手紙は捨てられない。~どうってことない一日目~

          初回の【小説】置手紙は捨てられない。は、←こちらをクリック  何度も例の紙切れを読み返しているうちに簡単に糸口が掴めるだろうと思っていた自分が甘かった。染みのついた壁にもたれながら、ただただ空を見つめる時間が増えた。切れかかった電球のせいで仰木の六畳一間の仕事部屋は妙に暗く、タバコを吹かしながら考える様が鏡に映り、思わず微笑した。おれはベテランの刑事ごっこでもしているのか、とあほらしくなるも、捨てることなど到底できなかった。  各文の繋がりが全く見えないことから、頭がおかし

          【小説】置手紙は捨てられない。~どうってことない一日目~

          【小説】置手紙は捨てられない。

           仕事帰りに近所の公園のベンチに座り、仰木はタバコを吹かしていた。ふーっと長い息を吐き、天を仰ぐその姿は浮浪者そのものだが、仰木はそんなことを気になどしていなかった。何かに長けたように見えるからという理由で、髪も髭も伸び散らかしていため、月に幾度か職務質問を受けるのが決まりだった。警察を見つけるとニヤニヤしてしまう癖がその一因でもあった。  仰木は何もすることがなく、近所をぶらついているわけではない。彼の言葉を借りれば、「夕暮れどきの空を大切にしている。」のだそうだ。次第に赤

          【小説】置手紙は捨てられない。