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抜けない雑草が、定年の延長を申請した自分と重なった


先日、会社の定年延長制度に申請を出した。
承認されたら、1年毎に更新していけば65歳までは働き続けられる。
とりあえずは経済的にも心理的にも、土台の確保ができたという気持ちと、なんとなくザワザワする気持ちが入り混じっているのが今の心境である。

久しぶりに実家に帰り、畑の雑草を抜いた。
雨の翌日で、土が湿っていて雑草を引き抜くのにさほど苦労はしなかったが、なかには、なかなか引き抜けない雑草があった。

その雑草は、土の上に放射状に、地面を這うように、長さ15センチくらいの先がギザギザした葉っぱを広げている。
そのギザギザの葉っぱの茎を、土からはがしてまとめてつかみ、根元から引き抜こうとするが、持ち上げて地面から根っこの姿が見えたくらいのところでブチっと千切れる。

土の下には、細い根っこが無数に四方八方に広がっている。
根っこの周囲にスコップを入れ、てこの原理で持ち上げても根は意外と深くまで伸びており、その先はまだ土にしっかりとからまっている。
引き抜きながら、一つの組織に長く所属し、変化を恐れている、延長制度を申請した今の私みたいだな、と思った。

定年の延長で、シニア社員が居残るため若手が活躍するポジションが少なくなっているという話を耳にする。だから延長するのは後輩たちに申し訳ないような、後ろめたい気がしている。
でも、こちらだって、先の人生は長いのだ。

定年の延長申請で、勝手にモヤモヤしていたが、先日ちょっとした後輩たちの集まりで話をする機会があった。
私の仕事は接客が主であるが、同じ仕事をしている後輩たちは、お客様にどう声をかけていいのか分からない、という。

私の売りは、長い経験しか無いのだが、少しでもヒントになればと思い、経験談とシンプルにお客様にあいさつプラス一言を付け加えてみたらどうか、ということを伝えた。
「おはようございます。今日は真冬の温度ですね」といった感じだ。

まずはこちらから声を掛けなければ何も始まらない。そんな内容の話をしたら、一人の後輩が、「救われた」と感想を伝えてきてくれた。
その後輩は、「声を掛けなきゃ」「会話をしなきゃ」と考えるがあまり、あいさつはするものの、その後何を話していいのかが分からなかったそうだ。話を聞いてガチガチにかたまっていたものが溶けた、と言っていた。

この感想で、私のモヤモヤは晴れた。

先輩の経験を自分に取り入れようとする人がいる。
となれば、やはり良い影響を与えられる人でありたい、と思う。
シニア社員には、会社に深く根を張り長い時間をかけて積み上げてきた経験があり、これをもとにした役割がある、ということを体感した出来事だった。

良い評価を得ることではなく、企画を数多くあげることでもなく、シンプルに「知りたい」という若手に伝えていくことなのだろう。

60歳の先は長い。
お金の心配もしなきゃいけない。
収入が下がるのは目に見えているなか、物価は上がっている。
これからでも資産運用は検討しなきゃいけない。

やることは多いのだ、新しい横文字言葉は毎年でてくるし、ついていかなければいけないことが次々にやってくる。
一方でアタマと身体は衰えていく。

それでも、あれこれ考えすぎず悩みすぎず、シンプルに「知りたい」「やりたい」ことから、私もやっていこうと思った。

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