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目標というものは無くても良いのかもしれない。ただ、昨日より今日の方が良い自分であろうとする。これを繰り返していけば。

私は目標を立てることが好きだ。仕事では会社の目標達成のために部の目標、部の目標のための課の目標があり、それをブレイクダウンして各自が目標を設定する。仕事以外でも、休日の目標を立てたり(予定とも言えるが)、お正月には「今年はTOEICで900点を取る」などと目標を立てる。

もっともこちらは達成できないことがほとんどであるが、目標を立てて、それに向かう自分がスキだった。

「仕事はたのしいかね」という本を読み、目標は要らないかもしれない、と思うようになった。


これまでの人生を振り返ると、ずっと目標に向かっていた。短大を出て入った証券会社では、目標の数字達成のために営業に行く先を上司と検討したり、同期と効率よく数字を上げる方法を考えたりした。

接客の仕事に変わってからは、顧客満足度調査で良い結果を出すため、前回の調査結果を見直し、強化するポイントを先輩後輩と情報共有して、頑張って目標値を超えるよう努力をした。
そして目標に到達してもしなくても、締めの時期が来ると振り返り、また次の目標を設定する。

10年ほど前にアロマオイルに興味を持ち、その年の目標は「アロマセラピストの資格を取ること」にした。試験のため講座に通い2級の資格を取った。
昨年はキャリアコンサルタントの資格を取った。3ヶ月ほど講座に通い、覚えることが多く記憶力も低下していて勉強は大変だったが、キャリアプランに関連する理論は面白いと思うものが多かった。


いつも目標に向かい走り続けてきて、「充実しているか」と問われると、走っている間は気持ちが満たされていたように思う。そしてゴールを切った後、同じ質問をされても、素直にうなずけない。「う〜ん、どうかな」と答える。

特に資格については、目的がないまま「資格をとること」を目標にしてしまったので、資格をとったはいいが、今のところどこにも活かされていないためときどき「何のために勉強したんだろう」とため息が出ることもある。

登場人物のマックスという老人は、成功した起業家で、主人公に「仕事はたのしいかね?」と問いかける。そして「目標をたてることで安心している、つまり目標に依存している」と、35歳の仕事に行き詰まりを感じている主人公に諭している。
主人公はあらゆる自己啓発ツールを試したが、仕事がうまく行かず給料も上がらず、未来を悲観しているビジネスマン。彼はマックスとのやりとりを通じて、「変わること」のために色々と試していく。そして発見したアイデアを行動に結びつけていく。


目標を立てることで安心する。その通りだと思う。目標があると楽だし、軌道の修正ができる。半年経てば中間点検があり、達成のため何が不足しているのかがわかり、迷わなくて済む。
目標地点に到達したら達成感がある。個人の目標を達成することは、会社で評価されインセンティブを得ることもあるだろう。自己効力感も高まる。

でも目標は、達成した時は嬉しいが、その直後、次の目標を考えるか、もしくは与えられる。常に走り続けていることになる。


主人公にレクチャーしているマックスは、目標を設定することを否定している。
マックスは「毎日ただひたすら、よりよくなろうとすること」「試すことを続けること」と言う。
コイン投げの達人も、コインを投げる数を重ねて、失敗を少なくしているのだ、と。

確かに、試さないと何も起きないし、現状を変えることはできない。試さないと、来年も同じことに対して文句を言っているかもしれない。
そして、今、先が見えないなかで、目標そのものが立てられないこともあると思う。例えば、いつ経済状態がもとに戻るのか、見通しが難しいので売上目標は立てにくいだろう。

ならば目標は置いておき、先に動いてみよう。試さなければ、自分が動かなければ何も変わらない。
マックスはそんなことを言っているのではないか。

たとえば、お腹が出てきたので腹筋を30回頑張ってやってみた。明日も30回やってみよう。
この繰り返しがお腹を凹ませる(ことになるはず)。
先に、「お腹を凹ませるため毎日腹筋30回!」と目標を立てるより、まずやって試すこと。そして試すことを繰り返す。そのあとに結果がついてくる、といった具合に解釈している。

人生100年時代と言われている。会社にいる時間は残り少ない。でも人生は残り30年くらいはある。この先どうしようか、と思ったら、ただ昨日と違うことをしてみる、そんなこともありではないだろうか。マックスはそう言っているような気がする。
「これまで通ったことのない道を通る」 とか、「少し勇気を出して興味あるセミナーに出てみる」 とか。そこで気づきや学びがあれば、昨日より良い自分になっているはずである。

もちろん目標を立てることは重要で必要だし、仕事以外の時間の過ごし方でも、この先目標は立てていくと思う。 
でも目標を前にしてため息をついたなら、目標は立てずに、昨日と違う自分になれるよう「試すこと」を日々繰り返してみよう。
ちょっとした変化が起き、その変化をきっかけに、何かが変わるかもしれない。

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