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犬ドラマ

実家で家族揃って格付けを見ようと思ったら地震特番
いつまでたってもラッコの毛のように毛量が多い気象庁の人が話し続けているので、父はCSに変えてしまった

何のドラマか知らないが、頬全体に手入れされたセクシーなヒゲが生えた外人の男の人が生きたまま棺桶に入れられ、埋められている
棺桶の中には携帯電話があり、それで外部と連絡をとっているが、埋められている場所が特定できず、揉めている
埋められているのは刑事のようで、全ての会話はイタリア語だ

その刑事は生き埋めにされながら犬のことを気にしていた
仲間の刑事たちは埋められた刑事を探していたが埒が開かない
そんな時、警察犬らしきシェパードが何か閃き走り出す
そのシェパードがなぜ閃いたかについては説明はない
シェパードの走る姿は時々スローになったり、アップになったりして、カットバックで捜査が難航している様子が挿入される
最終的にシェパードは羊が群れている牧草地帯に辿り着くが、シェパードを連れて捜査していた刑事の姿はない
シェパードだけが、その牧草地で何かを見つける

棺桶の中の刑事は、このまま酸欠で死ぬくらいなら気高く死のうと口に拳銃を咥える
そんな時、棺桶の中から微かに犬が吠える声を聞き、棺桶の中で着ていたティシャツを破り、破った布を拳に巻き、それで棺桶を殴り始めた
すると拳は棺桶を突き破り、刑事は地上へ出ることができた

だったら最初からそうすればいいじゃん!
そう思ったが、ドラマはそんなことにはお構いなく続いていく

警察署に戻った刑事は生還したことを拍手でもって迎えられる
そんな時、警察の制服を着た3人組が警察署に入ってきて、黒木メイサのような鋭い目をしてスパッツに革ジャンというセクシーな女性署長に押収品が入っている倉庫への入室許可のサインをもらう

生還した刑事はトイレで新しいティシャツに着替えていた時、刑事を助けたシェパードが上を向いて吠える
生還した刑事は、それを上の階に悪い奴がいると判断するが、そこに説明はない
どうやらこのドラマでその犬は、絶対的に正しいことをすることになっているらしい
だが、どうしてその犬が上の階に悪い奴がいることがわかるのか、と言う説明はない

押収品を集めた部屋を映しているモニターには、セクシー署長に入室のサインをもらった3人組が押収されたヘロインを外に運び出してた

サインしたセクシー署長はなぜか悪い奴がヘロインを運び出していると知り、自ら拳銃を持って、ヘロインが運び込まれている車に近づき、見張り役を制圧する
正直、それは所長の仕事ではないはずだが物語は続く

所長とコンビを組んで他の悪い奴を制圧した禿げた刑事は、「犯人を制圧していた時の所長はとてもホットだった」とそのあと口説きにかかるが、「今はそんな場合じゃないだろう」とセクシー署長に嗜められる
どんな時にも女を口説くのを忘れない、というイタリア人の気概を表現したエピソードということか

生還した刑事はモニターを見れば悪い奴がどこにいるのか分かるのに、角を曲がるたびに拳銃を構え直して悪い奴を探す
結局、生還した刑事と悪い奴はお互い拳銃を相手に向けたまま対峙するが、そこに犬がやってきて、悪い奴は「俺はお前ではなく犬を撃つ」と言う

生還した刑事は、それだけは困る、と戦法を変える
変えると言っても、犬に向かって、応援を呼べ、と言うだけだ
だが犬は生還した刑事の言葉が正確に理解できるようで、その場離れ応援を呼びに行き、悪い奴の優位はあっさりと消える

結局、その悪い奴は犬が呼んできた応援部隊によって制圧され事件は解決
途中から薄々気づいていたが、これは犬のドラマだったのだ

しかし、ドラマと呼ぶにはその犬は無双すぎる
犬が人の言葉を正確に理解した時点でそれはファンタジーだが、そのドラマは刑事ドラマだった
日本なら、バカにするな、と企画会議で一喝されて終わるような話だが、イタリアではドラマにされ、それが日本のcsで放送されている

驚いたのは、そのドラマを放送していたチャンネルは犬ドラマ専門チャンネルだったことだ 
csは加入者が契約料を払うことで成立するビジネスだから、日本には、犬が活躍すれば整合性は一切問わない、という犬ドラマファンが、そのチャンネルを運営できる程度には存在するということか?

知りたいのは、イタリアには日本より犬好きが多いからこのようなドラマが成立するのか、金がないからこんなドラマになったのか、ということだ
どちらにせよ日本でこのようなドラマが作られることはないということが、このドラマの価値を生み出しているように感じる

世界は日本人が感じるより、もっと大らかなのかもしれない


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