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「銅の鏡」「歴史の鏡」「人の鏡」(貞観政要)

「太宗、かつて侍臣に謂ひて曰く、
それ銅を以て鏡と為せば、以て衣冠を正すし。
古を以て鏡と為せば、以て興替を知る可し。
人を以て鏡と為せば、以て得失を明らかにす可し。
朕常に此の三鏡を保ち、以て己が過ちを防ぐ。」
(巻第二 任賢第三 第三章)

 貞観政要の中でも、個人的にお気に入りの言葉Best3の一つです。素晴らしい比喩表現だな、と思いますし、簡潔に「銅」「歴史」「人」と覚えておけば様々なシーンでパッと思い出して自らを省み、行動に反映できるというのが、この言葉が好きな理由です。

「銅の鏡」 いい表情をしているか?

 チームを率いるリーダーが活き活きしていると、自然とメンバーも活気を帯びて来ます!楽しそうに仕事をしていると、ついて行こうという気がしますよね。ただし、作り笑顔はバレます。自分が楽しい、やりがいがある、と思えるようにチームの仕事の方向を持っていくことが肝要だ、という教えです。


「歴史の鏡」 歴史から学べることはないか?

 今直面している困難は、世界史上初でしょうか?個別具体的なインスタンス事象として捉えると、確かにそうかもしれません。

 しかし、一歩引いてて観てみると、すでに先人が経験した事象の現代焼き直し版であることがほとんどなのだ、という考え方です。

 まだまだ歴史の勉強が不足するため自分が知らないだけで、対処方法はあるのだとすれば心強いですね。


「人の鏡」 諫言してくれる人が側にいるか?

 「貞観政要」では、自分に諫言してくれる臣下を大事にせよ、という言葉が繰り返し出てきます。それだけ重要視していたということです。

 貞観政要に記されている君子「太宗」には、房玄齢、杜如晦、魏徴という3人の側近がいて、常に太宗の過ちを諌めていました。

 特に魏徴は、その才能を見込まれて「諫議大夫(かんぎたいふ)」という、まさに皇帝を諌めるという役職を得ています。そして、魏徴が亡くなったときに、冒頭の三鏡の話を引き合いに出して、鏡を一つ失った、と深い悲しみを表現したということです。

 なんと胆力のある君主でしょう。

 自分に耳の痛いこと、つついて欲しくない部分は誰にでもあることです。その部分を指摘されても、ありがたく拝聴し、自らが失政をしないために活かす。その背景には、大義を持ち、何が正しい方向なのかを理解し、その大義を羅針盤とし、自分の過ちを是正できる柔軟さがあるのだろうと思います。


諫議大夫よ

 最近人事異動で、私にとっての諫議大夫が離れていきました。年齢も中堅どころで、非常に優秀な人物です。

 そんな逸材なので他部署でも活躍してくれることを願っています。是非次の上司も人の鏡を持ち、諫言を聞いて欲しいものです。

 さて、私の部署にも、次の諫議大夫を育てないといけません。候補はいて、燃え盛る使命感のもと、目下成長中です。

 上司であろうが何だろうが正しいと思ったこととズレると躊躇なく議論してくれます。まだ若いこの暴れ馬にも羅針盤を持ってもらい、正しい方向を目指せるようになってほしいものです。とても育てがいがある部下です。


(参考)

「座右の書 貞観政要」中国古典に学ぶ「世界最高のリーダー論」(出口治明著 角川新書)


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