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女の恋は上書き保存、男の恋は名前を付けて保存 29

 「お客様のように身長がおありの方ですと、このヘアスタイルは凄く映えますね、ほんとモデルさんみたいです」
 すべてが終わって、最後に姿見で、髪をグレーに染めた彼女が、髪型だけではなく理佐の全身のバランスをチェックする。
今日はパンプスを履いてきたので、もともと170センチ近くある身長が、それ以上になっている、いくら何でも大学生の娘が二人もいる女性を捕まえてモデルというのは少しわざとらしく感じた。支払いをすまして、狭い階段を下りる、外に出るともうすでに少し暗くなってきていた、9月も下旬になると、暗くなるのも早くなる。
 

 由香はどう思うだろうか? 髪を切られていく間、理佐は娘がこの新しい髪型をどう評価するのか楽しみだった。
明治通りに出ると、相変わらず凄い人ごみだった、場所柄若い人が多い、いつもなら坂を上がって表参道の駅から帰るのだが、今日は原宿から帰ってみようと思い、警察署の前の歩道橋を渡る。
こちら側の歩道も人であふれている、フライヤーを配っている子、友達と待ち合わせしている子、キヤッチみたいな男の子達、友人たちと嬌声を上げながら歩いている女の子たち。理佐くらいの世代にとっては、ここも異空間だ。
 

人を避けながら駅の方へ向かう途中、歩道の端に小さな三角の立て看板が立っていた、その横に小柄な女の子が立って、フライヤーを行きかう人たちに配っていた。
 その看板には、大きく手書きで「ミチオ タケヤ」の文字が見える、極彩色の蛍光ペンで大きく書かれたその文字に、理佐は鋭く反応する。
 フライヤーを配っている女の子に、展示会かなんか近くでやっているのと尋ねると、はい と言って理佐へ持っているフライヤーを渡しながら、このビルの裏の建物の一階でで、やってますと、嬉しそうに答える。
「この路地の奥のビルです。」と指さすと、「前に看板があるのですぐにわかります」
指さした方へ、行ってみると表通りの喧騒がまるで嘘のように静か路地がつついている、もうすぐ行くと東郷神社かなと思っていると右手に、さっき見た看板と同じようなものが立っていた。


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今夜も、最後までお読みいただきありがとうございました。

まだまだ、続きます・・・・・

少しネタバレ:この物語に登場する、母娘は私の知人がモデルです。


メリークリスマス!


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