雨降りの電車で考えた大根の話。
雨が降っている。朝からずっと、雨が降っている。
雨降りの地下鉄に乗りこむと、モワっと瞬間、独特の匂いに包まれる。平熱のサウナみたいに高い湿度。やたら生々しく吐き出される老若男女の呼気。人の数だけ持ち込まれたびしょびしょの傘。ぬるい人肌で温められる衣服の微妙な生臭さ。地下鉄だというのにぼんやり薄暗い車内に充満する、人びとの不快感。
次の駅に到着すると、一瞬だけさわやかな風が入る。密閉された車内に新鮮な空気が入り込む。ところがそれも扉が閉まって発車すれば、もとの空気に戻ってし