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"障がい者"としての意見か?"普通の人"としての意見か?―障がい者として働く・暮らすこと―5

今までのバックナンバーはこちらになります。
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1.私、障がい者になりました!
2.障害者雇用が始まりま……した?
3.障害者にカテゴライズされるということ
4.被害者ズラされると困る?
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就労支援相談員というのは、役所の障害福祉課など、障がい者窓口になっている部署が設置している福祉相談員です。
(ただし、社福関係の資格を持っているとは限りません)
就活の助言や履歴書や病状説明書の添削、就職してからのアドバイス、職場からの相談にものってくれます。

ハローワークでも、雇用定着相談というのがあり、こちらは、就職してからの雇用者・被雇用者の就業相談・アドバイスを受けることができます。


ただ、どちらの窓口も、障害者手帳が申込みの際必要になりますし、
役所の就労支援相談員は、職場訪問の有無は相談できるので、障害を隠して一般雇用された際でも利用できますが、
ハローワークは、職場との話し合いが前提ですから、障害者雇用にしか利用できません。

自分は大卒で、マスコミ、そのあとは公共のコンサートや演劇の舞台運営に就労してきました。一般雇用として、です。

30になる歳に、鬱病を発症。31になる歳に退職していますから、一般雇用としてのキャリアが7,8年程度あり、転職の経験もある訳ですが、
障害者雇用は初めてですから、いろいろな不安が就活からあったので、
役所の就労支援相談員さんに早くから付いてもらい、相談にのってもらっていました。


すっかりAさんに敵視されるようになってしまい、
ついでに同じ非常勤のBさんも、Aさんに迎合し、自分に"だけ" 酷く攻撃的な態度を取るようになりました。

私の業務上の質問は全部 "苦情" として、上司に処理され、
月イチで行うはずの障害者雇用面談は、就業のフォローアップではなく、
上司からの "就業苦情" "就業注意" の場となってしまいました。

就労支援相談員さんにも立ち会ってもらっていましたが、
障害を理由とする話し合いではないために、ほぼ口をつぐんでいらっしゃいました。


自分の意見は "障害者だから言っている" と捉えられるのに、
雇用面談の場では、
上司から何度も「立場を弁えろ」というような主旨の発言が出て、
支援相談員さんもついには
「障害者手帳を持ってる意味を考えて」
と言うようになりました。


"立場" とはなんでしょうか?

官職というのであれば、自分も上司も同じです。
非常勤というのであれば、自分もAさん・Bさんと同じです。

「障害者手帳を持ってる意味を考えて」というのはつまり、
"障がい者という立場" で、あくまで職場にいなさい。
ということです。


では、"障がい者という立場" とは、どんな立場なのでしょう?

質問も提案も全て苦情になる立場でしょうか?
仕事を手伝おうとすると、はね除けられる立場でしょうか?
両手が塞がっている人にドアを開けてあげようとしたら、睨まれるような立場でしょうか?


"障がい者" だから、何も言えない・仕事が与えられない・人から辛く当たられて当然…………

それは差別と何も変わらないのではないでしょうか?

仮に、のどの調子が悪くて、病院に通い薬を服用するようになったとして、
今までと同じように業務相談や提案をしたら"苦情"になるでしょうか?

仮に、腕を骨折したとして、仕事を手伝おうとしたら「触らないで」と叫ばれて睨まれるでしょうか?


違いますよね?

就活の時もそうでしたが、
"障がい者" には、前のキャリア関係なければ、就業後のキャリア形成もありません。

前提が "障がい者" か "一般人" か、というだけで、これだけの差がある。
"障がい者" というだけで、"一般人" が持っている当たり前の権利がない。


自分は絶望しました。
障害者雇用を選択したことを後悔しましたし、
今までのキャリアを活かすことも許されないことが悔しかったです。

(就労キャリアで言えば、Aさんはほぼキャリアがなく、報連相、業務報告すらできないような人でした。
業務連絡がないのは、そのためだったと、あとから分かりました)


雇用から2ヶ月経ち、8月に入ると、すっかり自分は弱りきって、精神安定剤も睡眠薬も倍の量に増えていました。
職場でも、頓服薬を飲む機会が増え、ピルケースを持ち歩くようになりました。


ある日、お手洗いに行ったついでに頭痛薬を飲もうと、
ハンカチとピルケースを持って、事務所を出ました。


パタパタパタ……

自分の数メーター後ろで足音がします。

……実は自分、足音で人が聞き分けられるんです。

それは、Aさんの足音でした。

(6に続く)

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