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我が世界を広げてくれた名盤たち

 最近の僕のイメージといえば「サンリオ好き」というところが第一に来ているかも知れない。それはとても嬉しいことなのだが、サンリオよりも遥か以前から僕にとっての人生の友であったのが「音楽」の存在である。

 実は僕の人生と音楽の関係は本業でもないのに常に近いところにあった。小学校低学年時からトランペットを習い、中学では吹奏楽部、芸人になってからは一時期ハードロックのコピーバンドでヴォーカルも務め、ヴォーカルレッスンも受けていた。またアコースティックギターも少々嗜み、最近はエレキも練習中である(ちなみに幼少期トランペットを習っていたというところからもしかしてお金持ちのおぼっちゃま?などと見られる時があるのだが、むしろ経済的には明らかに平均以下の家庭であった。まあ親が少々見栄っ張りなところがあったもので)。

 本格的にポピュラーミュージックに目覚めたのは小学校6年生の時で、本当に音楽が好きになっていったのはこれ以降である。この時から今に至る20年以上の間に本当に数えきれないほどの名盤に出会ってきた。

 ということで今回は僕がこれまでに出会ってきた名盤の中でも個人的に重要な出会いであったと思われるものを紹介させていただこうと思う。純粋に質そのものというよりは新しい世界への扉を開いてくれたもの、といった方が正しい。勿論どれも名盤であることに変わりはないが。

 そういえば少し話がずれるが、世間的にはプロのミュージシャンは当然普段から色々な音楽を聴いているものと思われていそうだが、昨今ミュージシャンの方々と直接お話させていただくことも多い中で、純粋に音楽を聴いている量でいったらミュージシャン本人よりもファンの方が多いような印象をよく抱く。ただこれは表現者側にしかわからないことかも知れないが、絶対にその方がいい。理由はまた長くなるので書かないが、そうあるべきだと思う。


 話を戻して僕の人生の中での重要な名盤シリーズ、わかりやすく時系列で紹介していこう。


FIELD OF VIEW/突然(1995)
 30代以上の人なら知っているのではないだろうか。90年代に小室ファミリーと並び日本音楽界を席巻したビーイング系アーティストの一つである。
 この曲はポカリスエットのCMソングとして大ヒットした曲で、僕が人生で初めて買ったCDでもある。と言ってもきっかけは好きで買ったというよりも、小学校6年生当時、周りのクラスメイトが皆この曲を持っていて、ただでさえ根暗で友達の少なかった僕は何とか流行に遅れまいと半ば無理して買ったというのが正直なところだ。
 しかしいい曲であるのは間違いなく、きっかけはともかくとして実際に聴き込んでこの曲を好きになれたからこそポピュラーミュージックの世界に足を踏み入れようと思えたのだから、僕にとっては忘れることのできない重要な出会いであった。


B'z/LOVE PHANTOM(1995)
 『突然』にハマって、当時ヒットしていたスピッツやL⇔Rなんかを聴いていた中出会ったのがB'z。
 いかにもJ-POPスタイルな曲を聴いていた中での『LOVE PHANTOM』の独特の構成とミステリアスな世界観。異様に長いイントロや早口パートなど全てが新鮮で衝撃的だった。
 そして僕はここから急激にB'zを好きになり、この数か月後にアルバム『LOOSE』でより大きな衝撃を受けることになるのだが、とりあえずここではまず出会ったきっかけでもある『LOVE PHANTOM』を取り上げさせていただいた。
 しかしこの時から20年以上経ち、未だに彼らが日本音楽界のトップに君臨し続けている存在であることから、我ながら見る目があったのかなーなどと少々誇りに思えるところでもある。


Cocco/ラプンツェル(2000)
 J-POPを好きになって色々聴いていく中で、オリコンランキングで見かけるようになったCoccoという存在。
 初めてしっかりCDを買って聴いたのはシングルの『樹海の糸』だったか『雲路の果て』だったか。よく覚えていないのでここでは両曲とも収録されているアルバム『ラプンツェル』を。
 痛みを垂れ流しながら魂の底の底までさらけ出すような歌というものを初めて目の当たりにした。しかしその“痛み”はこの人の音楽的才能にも特別な力を与えたのか、作曲も作詞も歌も全くの未経験だったにも関わらず全ての面において圧倒的な才能を開花させ、2001年に活動休止するまでの数年間に出したアルバムは全てが強烈なインパクトと個性に包まれた芸術作品である(実際は「芸術」という表現すら生ぬるいが)。
 活動再開以降は昔に比べて健康的で気持ち的にも充実しているようなポップな音楽を展開している。何だか良かったなーと思う。


VAN HALEN/F@U#C%K(原題:For Unlawful Carnal Knowledge/1991)
 人生で初めて買った洋楽CDがこれ。
 明確に何歳の頃だったかは覚えていないが、おそらく中学2、3年くらいだったと思う。
 B'zが大好きになり、B'zが出ている様々な音楽雑誌でのインタビューを読んでいると、2人の口から度々出てくる洋楽バンドの名前の一つとしてヴァン・ヘイレンがあった。B'zが影響を受けているバンドとはどんなバンドなのだろうという興味からCDショップでこのアルバムを試聴したところ、ものすごく合点がいった。
 ヘヴィなサウンドにたっけえ声。思いっきりB'zの音楽性の延長にあり、ハードロックという音楽の実態が明確に見えた出会いであった。洋楽への入り口としてB'zからの流れがあった分、非常にすんなりと入り込めたのも良かったと思う。
 これをきっかけに同系統のエアロスミスやボン・ジョヴィなどといった洋楽ハードロックを漁っていくようになる。


HELLOWEEN/MASTER OF THE RINGS(1994)
 ハードロックを漁っていくとやはりセットとして扱われることの多いヘヴィメタルは避けて通れない。
 しかし初めて聴いたメタルのCDはこれでなく、同じくハロウィンの『The Dark Ride』であった。ただ『The Dark Ride』はCDショップで試聴した時に短いインスト曲からの2曲目『All Over The Nations』が良かったので買ったが、全体としては正直あまり入り込める内容ではなかった(今考えるとキャッチーなのは『All Over The Nations』くらいでメタル初心者が聴くようなアルバムではない)。
 しかしメタル入門バンドとしてはやはりハロウィンが最適だという情報は知っていたので改めてリベンジしたい。だがいきなりアルバムは怖い。ということで中古で安く売っていたシングルの『POWER』を試しに購入したところ、これが大当たり。これだけキャッチーな曲もあるのならと思い改めてアルバム『MASTER OF THE RINGS』を購入。
 全編聴きやすい上に、名曲揃いの最高のメタルアルバムであった。もうメタルは怖くない。ということで以降様々なメタルバンドにも手を出すきっかけになったアルバムである。


GOTTHARD/HUMAN ZOO(2003)
 ハードロック/ヘヴィメタルのCDを漁っていく中で出会ったバンド。
 きっかけは本当に何の前情報もなしにただ何となくCDショップでこのアルバムを試聴したら、即購入を決めるほどに最高だったということ。
 一度聴いただけで好きになれるキャッチーさ、上手いヴォーカル、いいメロディ、正統派のハードロックサウンド。B'zをルーツに持つ僕が気に入らないわけはなかった。
 全てのアルバムを持っているアーティストというのは正直少ないが、ゴットハードはその一つである。今まで色々なアーティストを聴いてきた中でもゴットハードは最高のバンドだ。楽曲も良ければライヴも凄い。事故で亡くなった初代ヴォーカルのスティーヴ・リーという人が僕の中でのロックの神である。もしもこの人が70年代に登場していたら少なくともロバート・プラントやポール・ロジャースと比較される存在にはなっていただろうな~とかよく妄想する。
 今年出た最新アルバム『#13』も凄い!


ヘイリー/Pure(2003)
 ニュージーランド出身、クラシカル・クロスオーバー(クラシックとポップスの中間のようなジャンル。ライトクラシックとも。)の歌手である。昔『白い巨塔』の主題歌『アメイジング・グレイス』を歌っていた人と言えばピンと来るだろうか。
 きっかけは日本のテレビに出ていた時、その歌声を聴いてあまりの美しさに衝撃を受けたのが初め。
 「天使の歌声」と称される歌い手をたまに見かけるが、その形容が最も当てはまるのがヘイリーだと思う。この人の声はそれ一つでどんな曲でも名曲に変えてしまう。もはや楽器やアレンジすらも必要ないと思えてしまうほどに。多分この人が歌えば『あたりまえ体操』ですらもまともな名曲として聴かせてしまうだろう。
 ここしばらく音源が出ていないのが寂しいところ。インスタで何か楽しそうだからいいけど。


Kate Bush/天使と小悪魔(原題:The Kick Inside/1978)
 有名な『嵐が丘』(『恋のから騒ぎ』のOP曲と言えばピンと来るかな)を収録したケイト・ブッシュのデビューアルバム。
 70年代というのはまだ自分が生まれていないということもあり、感性も異なる時代ゆえ音楽もあまり馴染めないものが多いのではないかと思っていたが、このアルバムを聴いてそんな固定観念はすっ飛んだ。
 現代の音楽と比べても全く古臭さを感じさせないし、何よりそんなイメージなど捻じ伏せるほどにとにかく楽曲が良かった。
 この充実にしてこの独特の声と歌いまわしなど、現代の日本のあの人やあの人も影響を受けているのではないかと思えるパイオニア感がある。
 アルバムを買ったきっかけは、上で書いたヘイリーとメタルバンドのANGRAが『嵐が丘』をカバーしており、どちらのバージョンも素晴らしい出来だったので本家を聴いてみようと思ったこと。本当に聴いてよかった。


The Rolling Stones/メイン・ストリートのならず者(原題:Exile on Main St./1972)
 ストーンズとの出会いはあえてこの記事でアルバム3枚に絞れと言われても入れていたと思う。
 『嵐が丘』もそうだったが、好きなアーティストのルーツを辿ることが僕の音楽の旅の醍醐味でもあるので、多くのロックバンドがそのルーツとして名前を挙げるビートルズ、ストーンズに行きつくのはもはや道理を超えて摂理である。
 ではなぜこのアルバムを最初に選んだのかと言うと、帯に「最高傑作」と書いてあったから。当時は普通にそのまま鵜呑みにしていたが、実際クラシックロックの帯に書いてある「最高傑作」は発売から長い歴史を経ての一般的な評判を基にして書いている言葉なので割と信用していい。
 そして事実1曲目『Rocks Off』の冒頭から僕は完全にぶっ飛ばされた。「天才」という言葉が安く思えるほどの圧倒的な「本物」を感じた。上手いとか下手とかは置いといてとにかくこれが「ロックンロール」なのだ。
 ここからまたさらにクラシックロックを広く漁るようになるのだが、未だにストーンズ以上の存在には出会えていない。


Muddy Waters/I'm Ready(1978)
 ルーツを辿るのが醍醐味と言うなら、結局最終的にはブルースに行きつくのはもはや道理を超えて摂理である。
 そしてブルース入門ならまずはベタにマディ・ウォーターズから。このアルバムはジョニー・ウィンターなどの白人ロッカーなども交えてのセルフカバー的要素の濃いアルバムだが、70年代の音に慣れた時期の僕からすれば非常に入り込みやすい内容であった(マディのキャリア的にはだいぶ後期のアルバムである)。そして当然ブルースという音楽自体はもっと古いものであるので、これを入門として時代を遡り色々なブルースを聴いていくことになり、個人的最高のギタリスト、T・ボーン・ウォーカーに出会うことになるのである。


高橋竹山/津軽三味線 決定版(1996)
 きっかけは芸人仲間のマザーテラサワ氏から、僕が好きそうなのでということで竹山のDVDをお借りしたことから。
 元々純邦楽には興味もあり、特に弦楽器に関してはギターをこれほど好きになれるなら他の弦楽器でも一流奏者のものなら同じような気持ち良さを感じれるのではないかと思っていたので、ちょうどいいきっかけであった。
 実際竹山は凄かった。盲目の表現者ながらたった一本の三味線から弾き出される一音一音が研ぎ澄まされた言葉のように心に響いてくるのである。もしギタリストで言うなら竹山はジミヘンやロバート・ジョンソンにも匹敵するクラスにいると思う。そしてその達人っぷりが単純に男としてもかっこよかった。
 三味線だけでなく筝などといった純邦楽に僕が手を出すきっかけになった人である。
 ちなみに上の1996年というのはCDでの発売年であって、実際の録音はもっと古いものです。



 とりあえずこんな感じだろうか。もっと短くまとめるつもりだったのにだいぶ長くなってしまった。

 ちなみに上にも書いたが、ここで挙げているのは新しい音楽や表現を知るきっかけとして重要な出会いであったものであって、単純に墓まで持っていきたいほどの名盤という基準で選ぶと正直ここでは挙げきれないほどの数になる。
 それに関してはまたそのうち気が向いたら書くとして、とにかく上で挙げた素晴らしい音楽達がジャンルこそ違えど表現者としての今の僕を形成する重要な要素になってくれているということは確かである。

 この音楽の旅はおそらく一生続くと思うので、またどこかでこういった大きな出会いがあることを期待して、これからも僕は中古CDショップにお宝発掘の旅に出るのである。


 ちなみに僕が持ってるCDの素敵ジャケットを紹介する連載なんかもやってるので良かったら見てね。


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