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【拡散希望】スクールワイドPBSについて

 今回は少し真面目な話をします。皆さんは「PBS」という言葉はご存じでしょうか。ネットで検索すると「リン酸緩衝生理食塩水」や「アメリカの公共放送サービス」がヒットしますが、今回話すものは違います。
「Positive Behaivior Support」というものです。日本語で言えば
「ポジティブ行動支援」と呼ばれるものです。

 私ひらぶーは公立中学校の常勤講師をしており、プロフィールにもある通り特別支援学級の担任をしています。この特別支援学級が何なのかを説明すると長くなるので省略しますが、特別支援教育ひいては現代の子どもたちを指導していく上で非常に大事な考え方です。今回はこのPBSを学校全体で取り組む「スクールワイドPBS」についてご紹介します。学校の先生向けですが、それ以外の方も何かのヒントにして頂ければ幸いです。



1.PBSとは

PBS=ポジティブ行動支援というのはわかりました。でも抽象的でわからんという方がほとんどだと思います。さて、日本でPBSについて研修活動や広報活動をしている日本ポジティブ行動支援ネットワーク研修会という組織があります。大丈夫です。怪しい組織ではありません(笑)

この組織のHPから抜粋すると、
「ポジティブ行動支援(PBS)とは、当事者のポジティブな行動(本人のQOL向上や本人が価値あると考える成果に直結する行動)をポジティブに(罰的ではない肯定的、教育的、予防的な方法で)支援するための枠組みのことです。」とあります。
 これって「褒めて伸ばす」ってことじゃね?と思ったかもしれません。方向性はあっていますが、もう少し説明します。

さらに、同協会は
「また、ポジティブ行動支援は個人の行動のみを標的とするのではなく、その周囲の人々、あるいは周囲の人々を取り巻く様々な状況も分析とアプローチの対象と捉え、持続的な成果を生み出すための仕組みづくりを目指します。」と言っています。
 これは個人だけではなく、周囲の人や環境もサポートしていくということですね。

そして、学術的根拠として
「ポジティブ行動支援においては、行動の理由を明らかにして、その理由に基づいた支援計画を立てることが目指されますが、その過程におけるアセスメントや適用される様々な技法は応用行動分析学(Applied Behavior Analysis:ABA)に基づくものです。」としています。
 ただの思いつきではなく、心理学の分野の一つである応用行動分析学を利用したものと言えます。


2.PBSを使った具体的な実践例

 なんとなくは分かったわ。でも、どういう感じで使うんか分からんな。という段階でしょうか。ここでは、実践例を2つ紹介します。

 まず、1つ目です。学校現場でよくある指導場面として「授業中の私語」が挙げられます。今回は、授業に支障が出るレベル繰り返し行う中学2年生を想定します。皆さんであれば、どのように対処しますか?

 ほとんどの方は「この子はやる気がないんだ」と考え、叱責を繰り返すことをしてしまいがちではないでしょうか。効果がないとわかっていますが、どうしても叱責をしてしまいがちです。さて、どのようにPBSを用いるのでしょうか。

 まずは、「なぜ私語を繰り返すか?」と考えてアプローチしていきます。先ほども述べたように、PBSは「行動の理由を明らかにする」ことから始まります。

 すると、思わぬ事実が出てくることがあります。例えば「授業の内容が分からない」「目立ちたい」「かまってもらいたい」など挙げられます。そして行動の理由に基づいた支援を進めていきます。
 授業の内容が分からないなら学びなおしをすればいいでしょう。
 目立ちたいのであれば、授業でその子が活躍できる場を設定することもできます。授業中にその子の発言を拾うみたいなことをしてもいいですね。
 かまってもらいたいのは、何か悩みや相談したいことがあるかもしれません。家庭や友達のことなどで困っているかもしれません。

 こんな感じです。支援の計画や手法は詳しく勉強されるといいでしょう。

 話は逸れますが、「後ろの席の人が自分に話しかけてきたので振り向いたら自分だけ注意された。」みたいな経験ありませんか?授業が止まってしまうので、先生たちも、注意に時間を割いていられないんだと思います。

 さて、2つ目は私ひらぶーの実践事例です。中学校1年生の支援学級生徒はいつも朝の登校の時間ギリギリでやってきます。ギリギリでも間に合ってはいるので別にいいんですが、念のため理由を聞くと「朝起こされるのがいつもギリギリだ」という事でした。親に起こしてもらっているみたいですね。

 ここで私は「朝の起床を自分で出来るようにする」「時間の管理を出来るようにする」の2つのライフスキルを身につけさせるために、その子と一緒に朝の計画を立てました。そこでは、登校する時間から逆算して朝起きる時間を設定するという我々では当たり前にできることですが、きちんと朝起きてからの行動計画を視覚化しておいたところ、すぐに効果は出て、その子は朝ゆとりをもって登校することができるようになりました。

 この2つの例でお分かりのように、PBSとは
1.問題行動の理由に焦点をあてる
2.本人の内面や性格を否定しない

ことを前提とします。「褒めて伸ばす」とは少し異なるのはこのためです。


3.スクールワイドPBSが必要な理由

 PBSについて何となく分かってきましたか?すぐに理解はできなくても問題ないので、時間があるときにじっくり読んでみてくださいね。
 さて、最後にスクールワイドPBSについてご紹介します。スクールワイドPBSとは「PBSを学校全体で取り組み、組織的な対応で生徒を支援していきましょう」みたいな感じです。学校現場でPBSが必要な理由は何でしょうか。

 それは、教育環境の変容が挙げられます。今は子供を取り巻く家庭環境や経済状況が、多様化、複雑化している時代です。貧困と学力の関係が明らかになっている現代だからこそ様々な事情を持った生徒が学校にやってきます。頭ごなしに子どもを叱責する時代は終わりです。本人の事情や家庭の事情に寄り添った考えを持たなければならない時代です。

 また、今は体罰が問題視されていることもあります。PBSの考えをもてば、問題行動に対して暴力で解決するような考えに至りません。まず最初に行動の理由を考えることから始まるので、意識の変容にもなります。

 頭ごなしに叱る先生にはならないと決めている私にとって、このPBSの考えや理念にはすごく共感できます。皆さんもこのPBSを実践していただき、すぐには無理でも、少しずつPBSの考えが広まっていけばいいなと願っています。



 さて、今回はやや長丁場となりました。お付き合いいただきありがとうございました。今回のnoteを仕上げている途中で何度も
「PBSとBTSって語呂が似ているよな」と感じて作業が中断しかけました(笑)
 BTSは今の子供、特に中高生の女子に人気ですね。子どもたちと関わっているとすごく実感します。名前だけでも覚えて、会話に加わってみようかなと思って調べてみると、年齢がやや私より上くらいでした。比べるのもおこがましいんですが、圧倒的ビジュアルを前に「本当に同年代か?」と感じてしまいます。私も精進します(?)ほなまた。


再度、PBSを広めている日本ポジティブ行動支援ネットワークのサイトを張り付けておきます。興味がある方はぜひご覧になってください。

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