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異世界転生作品がなぜここまで流行したのか?宗教的な観点から考察

こんにちは。
コミック・アニメ・ライトノベルで定番のジャンルとなった異世界転生。
海外でも"isekai"として人気です。
なぜこうまで人気を獲得しジャンルとして確立したのでしょうか。
人を惹きつける魅力の理由を探っていきましょう。


現実世界からの逃避


"転生"という部分に注目していきましょう。
物語の主人公の多くが現代社会で生活をしている男女です。共通しているのが何かしら不満や不公平を感じて憂鬱とした毎日を過ごしています。
そして不慮の事故や英雄的行動によって突然の死を迎えてしまいます。
ところが死後の世界にたどり着くのではなく全く異なる文化圏に"転生"し記憶を保持したまま第二の生を謳歌していくことになります。
作品により異なりますが多くの場合、彼らは特殊な能力を与えられるか生前の知識や職の技能を用いることで突出した才能を発揮します。
沢山の人々に感謝され尊敬され、敵対するものは圧倒的な力でねじ伏せてしまうのです。誰もが子供の頃夢想した世界のようですね。

現代社会からの離脱がひとつの大きなポイントになっており、読者が羨む要素となっています。これは日本の読者に限らず世界的にも陰鬱な生活からの脱却を渇望しているからこそ魅力的に感じるのではないのでしょうか。転生作品ではありませんが、中国の若者に人気のジャンルで"実は自分が御曹司だった" "王の隠し子"といった秘めた出生によるサクセスストーリーが人気です。
現実では辛い日々を過ごしているからこそ"転生"は人を惹きつけてやまないのかもしれませんね。

宗教的観点からみる異世界転生

死後に想いを馳せるのは古来より人が信仰するもの
宗教との関連性が高いとおもわれます。
人が生ある内に善行を積めば天国。悪行を積めば地獄へ。
キリスト教やイスラム教といった宗教では生前の信仰と行動が死後の旅先を定めるものとされています。
仏教やヒンドゥー教では"輪廻転生"が信じられています。同じく生前の行いが輪廻を決めるとされています。日本では仏教が身近な宗教ですから"転生"という概念が受け入れやすい発想なのではないでしょうか。
例えばアメリカ合衆国では国民全体の7割がキリスト教徒だとされています。とすれば中々"転生"という概念は生まれづらいのかもしれません。

仏教の中でも特に"異世界転生"と関連性が高いと思われるのが
浄土信仰と思われます。

浄土信仰とは、仏教の宗派のひとつ浄土宗や浄土真宗で知られる信仰です。
日本史の勉強で知っている方も多いのではないでしょうか。
信仰をすれば"極楽浄土"に輪廻転生することができると信じられており、あらゆる苦しみと悲しみから解き放たれるとされています。
現生が地獄ならば来世にこそ救いがあるのだと人々は縋ったわけですね。
その救いこそが異世界での成功、あるいはスローライフを送りたいという願望につながっているのではないでしょうか。

また浄土信仰の中に"他力本願"という概念があります。
自分自身の努力ではなく阿弥陀仏の慈悲により救済を得られるというものです。異世界転生では女神さまから"スキル"を授かる場面もよく見ますよね。
「あなたは不遇な人生を歩んできましたね。この能力を授けましょう。」
もしかしたら女神様は浄土信仰における阿弥陀仏の役割を担っているのかもしれません。

ちなみになぜ異世界転生作品で"男神"でなく"女神"なのでしょうか。
考えられる理由としては商業的な部分で女性の方が見栄えがよくキャラクターの魅力を描きやすいからというのもあるでしょう。
異世界転生の主人公が男性であることも多いので神様を女性にすることで男性読者の心をつかみやすいのと同時に女性というのは慈愛の象徴でもあります。母親を連想させる優しさという側面が男性よりも支持を集めやすいという考えなのかもしれませんね。
逆に女性向けの作品では男神が登場する機会も増えるためメインターゲットの客層に対しての供給、性的な魅力を与える為に神の性別を設定しているというのも理由の一つといえそうです。


いかがでしたでしょうか。
今回は人気の異世界作品を宗教的な観点から考察しましたが、いつの時代も人は来世というものに希望を見出したいものです。
未知であるからこそ知識欲も湧き出るというもの。みなさんも眠れない夜があったらどんな異世界に転生したいか考えてみましょう。
もしも異世界に転生できるとしたら、死というものはそこまで悪くないのではないかと思えるかもしれませんね。

今回はここまで。
見ていただきありがとうございました。


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