酸素が薄い

ここはどうにも酸素が薄い
文字通りそうかは別として
ここはどうにも酸素が薄い
わたしはずっと息苦しくて

家近辺で行き場を失くすときとか
外出のあと家に戻る道すがらとか
体が欲していない食事のときとか
夜になって眠ろうとするときとか

渦に呑み込まれるように
引きずり込まれるように
不穏な世界にひとりきり
見えないものを見ている

過呼吸になりかけるのも
涙が止まらなくなるのも
全身をひきつらせるのも
何回繰り返しても防げていないし
何回繰り返しても慣れはしないし
そろそろ学習したいと思うけれど
そうもいかないらしいのが難点だ

そこから離れてみてどうなるか
試してみないと分からないよね
そう穏やかな言い方をしたけど
彼よりももっと強く思っている
わたしはここを離れるべきだと

ここはどうにも酸素が薄い
危うく呼吸を忘れるほどに
きっちりと隙間なく閉じた
箱の中に閉じこもっている