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リーダーズチャレンジの記録~パックラフトで行く多摩川74kmラフティングの巻~

 5月中旬、リーダーのまめた&わかでとあるチャレンジに出かけてきました。その名も「多摩川74km縦断ラフティング
 多摩川全体の中間地点、青梅市にある御嶽を出発点とし、多摩川の河口である羽田空港までのおよそ74kmを“パックラフト”といわれる1人乗り用のボートに乗り、1泊2日かけて川下りをするチャレンジになります。

パックラフトとは、空気を入れて膨らませるタイプのゴムボートです。空気を抜いて畳めばパッキングできてしまうことが由来となっています。詳しくは写真をクリック!(参考ページにとびます)

 筆者はテントを担いだ縦走登山が好きなため、山に関するチャレンジは度々してきたものの、今回のようなウォーターアクティビティチャレンジは初めて。挑んだことのない冒険・チャレンジに胸を躍らせ会場入り。我々をガイド・インストラクションしてくれるのは、笑顔がチャームポイントのみたけレースラフティングクラブの柴田さん(愛称:ダイゴさん)です!この日は他にも地元ガイドの方々等が集結し、5名のチャレンジャーで挑むことになりました。

素晴らしいパックラフト日和!まずはスリル満点の上流部を漕ぐぞー!

 朝8:00頃、いざ出航!5月中旬の川の水はなかなか冷たいものの、当日は30℃近くまで気温が上がっており、水しぶきがかかるのがちょうどいいくらい。御嶽から最初の10km程度は急流・激流を含む難関ポイントの連続になります。パックラフトは通常のリバーカヤックと比べ、比較的安定しているとはいえ、岩に衝突したり、川の流れにつかまったり、少しでも流れに逆らうようなことがあれば、簡単に転覆します(笑) しかしそのスリルとは裏腹に周りの景色は常に絶景!奥多摩の大自然に癒されながら先に進みます。

都心から電車で1時間半ほどにある大自然。
多摩川上流部の激流に苦戦しながらも、自然から癒しをもらいます。

 次第に森の木々よりも建物がたくさん見えてくるようになり、川の様子も徐々に変化していきます。青梅市内までのスリルと美しい景観から打って変わって、その変化は我々チャレンジャーの行く手を阻むものになります…。

行く手を阻むもの①:鵜避けの糸
 多摩川水域はウグイやアユなどの魚たちが多く生息しています。それを標的とするのが“川鵜(カワウ)”。そんな川鵜は近年増加傾向にあり、自治体・組合が駆除などの対策をしています。その対策の1つとして、「鵜避けの糸張り」があるわけです。糸が張っているところは漕いで渡っていけませんので、当然ですがボートを担いで川原を歩きます。これがかなりしんどい…。

写真だとわかりにくいですが、川に無数の糸が張ってあります。ここは一旦、船を降りて、船を担いで川辺を歩きます。記憶が正しければ5~6kmの区間にわたり、このような糸が張っていたような気がします。

行く手を阻むもの②:浅瀬
 市街地に入ってくると次第に川幅が広がり、視界も開けてきます。見放しが良く気持ちいいところです。がしかし問題が1つ。川幅が広がるということは、水域が広がる為、水深が浅くなります。結果、ボートも座礁してしまうわけです…。当然のことながら、漕いではいけないので、船を引きながら歩きます…。

浅瀬では船が止まってしまうので、鵜避けの糸と同様、船を担いで歩きます。
船を一旦降りたり、担いだり、また乗ったり、これがかなりしんどい…。

行く手を阻むもの③:堰(せき)
 堰とは水道用水や農業・工業用水などの水を取水したり、河川の流水を制御したりするために、河川を横断して設けられる施設です。水門のようになっていたり、高低差があったりするため、そこを直接下ることはできません。しかし、そんな堰にも通過できる箇所があります。それが「魚道」と言われる場所です。魚道とは、今回の堰のように魚の遡行を妨げてしまうような施設に、魚の通り道として設けられる工作物です。多摩川の魚道はそのほとんどが階段式であるため、パックラフトでも通過することができます。(河川の中の人工物付近では、リサーキュレーション(循環流)など複雑な水の流れが存在します。通行にはある程度のパドル操作と経験が必要です。通行の際にはガイドやインストラクター指導の下、実施するようにしてください。)

(左)多摩川にかかる堰。(右)魚道を通行中。
魚道の通行は非常に難しい上、危険が伴います。必ずガイドやインストラクターに指導してもらいましょう。

 そんな行く手を阻むものにより、大幅なロスタイム!度々出てくる浅瀬を歩きながら先を急ぎます。そしてようやく、我々のホーム“日野市”が見えてきました!既にボートの乗り降りとパドリングで腕や腹筋・背筋はパンパン。「はぁ~日野市だぁ~」と安堵したところ、すかさず「まだ半分行ってないけどね。」とダイゴさん。現実に引き戻されました…(泣)

日野市内を走る中央線!特急あずさがお出迎え。
ここがまだ中間地点という恐ろしさ…。

 とはいえ、へこたれている暇はありません!この日は日野市のお隣“国立市”を目的地・宿泊地としてなんとか1日目のゴールに到着。宿泊はもちろん野宿。お供のパックラフトをベットにして一夜を明かしました。

明日に備えて準備中。パックラフトのベットも捨てたもんじゃない(笑)

 2日目、天候は前日から打って変わって曇天。この日は午後から雨が降る予報になっていました。昨日のロスタイムを挽回するため早めの出発です。ここから先は川の流れに身を任せているだけでは日が沈んでしまうため、ひたすら漕ぎまくらなければいけない1日となりそう。曇天ではあるものの、風が味方をしてくれ、追い風の中を下っていきます。午後からは風向きが変わってしまうため、この午前中が勝負とのことで、パドリングにも気合が入ります!

国立から再出発!すでにバキバキの身体に鞭打って頑張ります!

 ここまで来ると大きな橋が増え、電車や新幹線が頭上を通過していきます。景色も高層ビルや大きな工場が現れ、都会の様相に変わってきました。景色の変化が少なくなり、淡々とした川を下っていくため、1日目の疲労も相まって時々意識が飛びそうになります(笑) 
 ※ここから先は写真がほぼありません…お察しください!(笑)

 そこに追い打ちをかけるように、田園調布付近に差し掛かったところで、雨が降り出しました。天気予報を見ると次第に強くなっていく予報に…。しかも風が追い風から少しずつ向かい風に変化してきました…。
 そして残り7km地点で雨脚が最大に!なんと1時間に20mm近くの大雨になりました…。滝のような雨が降り注ぐ中、懸命に前に進みます。

 そして残り3km地点、次第に飛び立つ飛行機が大きく見えてきました。羽田空港に近づいている証拠です。雨も次第に弱くなり、いつの間にか風が再び追い風に変わっていました。風を味方につけてラストスパートをかけます。

羽田空港はすぐそこ!頭上に飛び立つ飛行機たちに圧倒されながらラストスパート!!

 水面にはクラゲが顔を出し、海が近づいていることを実感。広大な羽田空港は、見えているのに漕げど漕げど近づかない!残り僅かな気力で漕ぎまくり…
そしていよいよゴール!!!久々に感じた猛烈な疲労感と共に、やり切った達成感でいっぱいになりました。

いや~超超超がんばった!!
身体バキバキだけど、それを忘れるくらいの達成感!!

 我々自然学校のディレクターは常々子どもたちにチャレンジすることの大切さをキャンプや自然体験活動を中で伝えています。しかし、大人になった今、自分自身がチャレンジすることを忘れてしまいがちのような気がします…。
 人間はいろんな困難に立ち向かい、挑戦を重ねて大人になっていきます。子どもたちはたくさんの挑戦を繰り返しているその途中にあります。何なら大人だってその過程にいるはずです。
 大人からすると「え、そんなこともできないの…」と思うこともあるかもしれませんが、それはまだ”挑戦不足”だからなのかもしれませんね。
 大人からみれば簡単にできるようなことも、子どもからするとその1つ1つが”挑戦”であることを念頭に、子どもたちと関わっていけたらと思いました。今回のチャレンジを通して「チャレンジ・挑戦」について改めて見つめ直すことができる良い機会となりました。
 
 そして、この旅を経て感じたことがもう一つ。それは“川の水の汚れ”です。スタート直後、あんなにも綺麗だった水が、市街地に入ると次第に泡立ちようになり、臭いもきつくなってきます。ひどいところは川原にゴミが捨てられています。2日間“多摩川”という川につき合った結果、人間の生活による自然の汚染を肌で感じることができました。人間が便利に暮らすためには致し方無いところはありますが、少しでも川がキレイに保てるよう水を大切に使っていきたいと感じました。

記事:若泉わか(ひの自然学校サステナブル レスポンシビリティマネージャー)

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