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オヤジ

昔よくオヤジに説教をされた。

嘘をつくなとか、悪いことをしたら素直に謝れとか、そんな当たり前のことをくどくどと。

若い時はうるせぇとしか思わなかった。

説教の途中でオヤジに反論しようとして噛み付いたこともあったし、説教の途中で家を出たこともあった。

オヤジなんかに何がわかるんだと思っていた。

しょうもないサラリーマンで、つまらねぇ人生を送っているオヤジに言われたくないと。

そんな俺は若い時冒険をしてみた。

音楽で飯を食っていくんだとギター片手に家を飛び出して、東京に上京した。

インディーズでCDを出すことはできたが、その後は鳴かず飛ばずで、アルバイトで食いつないでいた。

女が出来て、ガキまで出来て、慌てふためいた俺は必至に金になる仕事を探した。

日雇いで毎日働いて、体を壊すこともあったし、仕事が中々見つからなくて、一日職安にいたこともあった。

そんな中で、たまたま音楽をやっていた知り合いのつてで、働き口が見つかった。

決して楽な仕事ではなかったが、必死に働いた。それほど仕事を見つけるのが大変だと知ったし、嫁のため、ガキのためを思えば必死に働かざるを得なかった。

今では、その職場で何とか務め続けられていて、子供もこの前小学生になった。

仕事を続ける上で大事だったのは、オヤジの言っていた当たり前のことだった。

オヤジのことを思うと、オヤジがどれだけ苦労してきて、俺を育ててくれていたのがどれほど凄いことかがわかる。

若い時当たり前だと思っていた生活が、いかに大変なことなのか、それを手にしてやっとわかった。

暫くオヤジとは話もしてこなかったが、今なら話ができる気がする。

当たり前の生活を送らせてくれた、しょうもないサラリーマンの、凄いオヤジと。

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