カフェ4分33秒 #毎週ショートショートnote
とある古びたカフェ。ここは私の安息の地だった。
あの男が来るまでは。
ドアのベルが鳴る。
「やぁまた会えた」
先日ここで遭遇して以来、私に度々話しかけてきて最初は苦笑いしていたけど、そろそろうんざり。
私が席を立とうとしたその時、男が言った。
「マスター、4分33秒を」
やられた。
ここには不思議なメニューがある。
店名にちなんだ「4分33秒」を注文すると、マスターの時がピタリと止まるのだ。時間を味わうためのメニューなのだが、私は会計をすることができず、足止めをくらってしまった。
「初めて見た時から運命だと思ったんだ。君の望みは何でも聞く。だから僕と...」
男がつらつらと話し始める。
「お待たせしました。4分33秒です」
マスターが動き出したと同時に、私は言った。
「望み、なんでもいいんですよね?」
「あぁもちろん!」
「マスター、お会計を。それから私が出てから彼に4分33秒、彼の支払いで」
「かしこまりました」
私は店を出るとできるだけ遠くへ行けるように走り出した。
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